1泊5000円の「元ラブホ」に泊まったら、特殊すぎて怖かった話《楽待新聞》
以前、記事にもしたのだが、しばらく西成にシェアハウスを借りていた。だが、鍵が開かなくなるというトラブルが発生したため、手放してしまった。
それで、久しぶりにネットでホテルを予約した。大阪のホテル全体がずいぶん値上がりしていたし、そもそもなかなか空いている部屋も少なかった。しばらく探した後、京橋に5泊で2万8000円と、そこそこ安いホテルを見つけた。
京橋は僕が主に活動する難波近辺へはややアクセスが悪いのだが、大阪城や大阪ビジネスパークへ行くにはとても便利だ。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへも電車で20分くらいで行くことができる。
何より京橋自体がかなり面白い街だ。商店街はにぎやかだし、味のある飲食店が多い。令和になっても良識のある人が眉をひそめるようなお店も残っている、僕好みの街だ。
そのホテルの予約を即決した。
■京橋の賑やかさからは離れた場所にあるホテル
当日、京橋駅からホテルまで徒歩10分以上あることを知る。ビジネスホテルって駅から3~5分くらいで到着することが多い。「ちょっと遠かったなー」と愚痴りながら歩いた。
駅から離れていくと、京橋の賑やかな雰囲気はなくなる。いつから放置されているのか分からない廃車が並んでいる建物の横を、少し不安になりながらトボトボと通り過ぎ、ようやく目的のホテルに到着した。
入口のドアを入ると、わーわーと子供が駆け回っていた。叫んでいる言葉は中国語だったので、「中国から来た観光客の子どもかな?」と思ったが違った。カウンターに座っている夫婦らしき男女の子供だったようだ。彼らがオーナーなのかは分からないが、どうやら中国資本に買われたホテルのようだった。
つつがなくチェックインして、自室に向かった。室内は思ったよりも広くて驚いた。広い室内にベッドが2台、テーブルが1台置かれていた。1人で泊まるには広すぎるくらいだった。ホテルで仕事をするので、きちんとしたテーブルが設置されているのはとてもありがたかった。
■部屋を上回る、広すぎるお風呂
しばらく仕事をした後、「一風呂浴びるか~」と浴室にお湯をために行った。浴室のドアを開けて思わず言葉を失った。部屋を上回るくらい浴室が広かったのだ。
白いタイルが敷かれたスペースは体の洗い場としては広すぎた。サウナなどにあるようなベッドが、謎に置いてあった。
広さにも驚いたのだが、一番驚いたのは浴室に大きな螺旋階段が設置されていることだった。「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた階段の上は暗く、ドアで閉ざされていた。
風呂にお湯をためて入ったのだが、広すぎて何とも落ち着かない。3月でまだ少し寒さが残っており、バスルームが全然温まらないので少し困惑した。
裸で風呂に浸かりながら、広すぎる空間と螺旋階段を眺めていると不安な気持ちになってきた。
風呂上がりにXで、「五千円くらいのビジネスホテルとったんだけど、風呂がめちゃくちゃ広くて、謎の螺旋階段ある。バックルーム的な怖さある笑」と写真2枚を載せてポストした。
バックルームとは、ネット発の都市伝説で、現実世界からノークリップ(すり抜け)して異次元に迷い込むというホラーだ。迷い込んだ場所が地獄のような場所だったり、異世界だったりするわけではなく、ひたすら続く普通の無人のオフィスというのが特徴だ。
そういう空間のことをリミナルスペースと言ったりする。本来は建築用語で、「境界の空間」を意味するそうだ。ロビーや廊下など、部屋から部屋へ移動するときなどに通る空間のことを指すらしいのだが、ネットミーム的に使われることもある。
そういう作品もたくさん出ている。大ヒットして映画化も決定した『8番出口』をはじめ、『Dreamcore』『Liminalcore』『POOLS』と枚挙にいとまがない。
そういうゲームのまさにワンシーンといった感じなのだ。
特に何の気なくポストしただけだったのだが、気づいていたらバズっていた。結果的には7000リツイート、9.5万いいね、1780.5万件の表示になった。
■元ラブホ? ソープランド?
リプ欄を見ると、なぜかやや揉めていた。
「この部屋は元ラブホテルだ!」と指摘する人がいて、「いやこの部屋は元ソープランドだ!」と反論のリプがついていた。つまり、僕が泊まっている部屋が、元ラブホテルか、元ソープランドかで言い合いになっていたのだ。
さすがに僕も、ウブな17歳ではないのでこの部屋がもともとはラブホテルなんだろうな、とは思っていた。Xはエロ表現には厳しいので、「ラブホテル」という言葉を使いたくなかったのだ。
広すぎる洗い場は、もともとはマットプレイができるように設計されたものだとも思った。つまりプレイ内容としてはソープランド的だった。ただ、ソープランドを改装してホテルにしたというのは聞いたことがなかった。逆に、ラブホテルをビジネスホテルに改装した、という話はよく聞く。
Googleマップで過去のストリートビューを見てみると、たしかにもともとラブホテルであったのがわかった。
■ラブホテルとビジネスホテルは何が違うのか
ラブホテルとビジネスホテルは似ているようだが、法的にはかなり違うものだ。
ラブホテルは「風営法」の対象(性風俗特殊営業)で、ビジネスホテルは「旅館業法」に基づく一般宿泊施設になる。ラブホテルは性交渉を前提とした営業形態とされ、鏡張り、ブラックライト照明、休憩料金など「性的な利用を促す構造・サービス」がある場合、風営法の厳しい規制を受ける。
別に、天井に鏡が貼ってあったり、ブラックライトで照らされたって、性的に促されねえよと思うが、そう決められているのだから仕方がない。他にも人と合わずにチェックインできたり、会計できたり、アダルトグッズの販売をできたりするのはラブホテルの特権とされる。
ラブホテルは新規開業が極めて難しく、条例や用途地域の制限により「既得権のある物件」のみ営業継続が許される例がほとんどだ。
最近では外観やサービスを「一般のホテル風」にリブランドしてビジネスホテルとして再登録するケースが増えている。
つまり「ソープランドのようなプレイができるラブホテル」が廃業。中国資本が買い、一般宿泊施設に改装した。フロントを設け、室内からはエロさを感じる要素を排除した。だけど、浴室自体は変えようがないのでそのまま放置した……ということだと思う。
大体の謎は解けたが、螺旋階段の先に何があるかは分からなかった。
さすがに1000万ビューを超えるほどバズると、かつてこのホテルに泊まったことがある人もチラホラと現れて情報を教えてくれた。
どうやら、螺旋階段を登った先には、露天風呂があったようだ。
露天風呂があったとて「性的な利用を促す構造・サービス」にはならないと思うのだが。まあ、運用していくとなるとお金がかかるだろうし、元ラブホのビジホの露天風呂に入りたい! という人はあまり多くはない気がするが。
■元ラブホの改装ビジホに泊まるのってどう?
個人的には「元ラブホのビジホ」に泊まるのは特に苦痛ではない。ベッドや風呂が広いことが多いし、値段も少し安い場所が多い。
「不特定多数の大勢が性行為をしてきた場所は気持ち悪くて寝れない」という意見を聞いたことがあるが、そんなこというなら普通のホテルも一緒だ。アパ不倫という言葉が流行った通り、みんなホテルで性行為をしている。
「施設が古かったり、得体が知れなかったり、かび臭かったり、気持ちが萎える」という意見も聞いた。これはあるかもしれない。ただ僕は変な場所に泊まることになると、「ラッキー!」と思う体質なので、そういう気持ちになったことはない。
そもそも意外とラブホテルに1人で泊まることもままある。「1人でも泊まれます」と推奨している店舗もある。
ラブホテルは予約できないところが多い代わりに、当日に行けば泊まれる可能性も高い。ラブホテルは、変な設備や内装をしている所が多いので、個人的には楽しみである。
とにかく家を借りてしばらく同じ場所に泊まってきたけど、ホテルを借りてみるのも面白いな、と思った次第でありました。
村田らむ/楽待新聞編集部
不動産投資の楽待
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最終更新:5/30(金) 11:00