越谷レイクタウン駅、JR武蔵野線の「予想以上の実力」 意外に多いイオンレイクタウンへの鉄道利用

5/8 4:32 配信

東洋経済オンライン

 日本一広いショッピングモールである埼玉県越谷市のイオンレイクタウンが2024年3月、さらなる増床を行った。

 イオンレイクタウンには「kaze」「mori」「アウトレット」の3つのゾーンがある。今回拡張されたのはアウトレット棟で、駐車場だった部分を店舗にし、新たに38店舗を開業。残るkaze棟およびmori棟でも70店舗を刷新したという。

■駅近のショッピングモール

 日本ショッピングセンター協会が公表している『SC白書2023』にある、全国のショッピングセンターの店舗面積を比べると、イオンレイクタウンは16万㎡で、2位の千葉県千葉市・イオンモール幕張新都心の12.8万㎡、3位の名古屋市・JRセントラルタワーズ/JRゲートタワーの12.7万㎡を大きく引き離している。

 しかもこのイオンレイクタウンの数字にはアウトレット棟は含まれておらず、今回の増床分を含めると実に19万㎡で、東京ドーム約4個分に達する。

 ところでトップ3の顔ぶれを見ると、いずれも大都市圏に位置しており、鉄道駅から徒歩圏内であることが共通している。郊外の広大な土地に店舗を構え、来場者のほとんどがマイカーで向かうという、少し前までのショッピングモールのイメージとは対照的だ。

【写真】JR武蔵野線の「越谷レイクタウン駅」の周辺には何があるのか(7枚)

 商業施設と駅の関係は三者三様で、3位のJRセントラルタワーズ/JRゲートタワーは、1937年から現在の位置にある名古屋駅の桜通口(東口)再開発により生まれたいわゆる駅ビルで、百貨店やホテルのほか、JR東海の本社もここに置かれる。

 イオンモール幕張新都心は逆に商業施設が先で、2013年にオープンした。しかし周辺の交通渋滞が問題になりはじめたことから、イオンモールと千葉県、千葉市が協議会を作り、JR東日本京葉線に新駅の設置を要請。2023年春、イオンモールが設置費用の半額を出して幕張豊砂駅が開業した。

■駅もイオンも同時に開業

 今回スポットを当てるイオンレイクタウンは、越谷レイクタウンと名付けられたニュータウンの中の商業施設として、敷地内を走るJR東日本武蔵野線の新駅とともに整備が進められた。駅もイオンも、ニュータウンのまちびらきと同じ2008年に開業している。

 つまり越谷レイクタウン駅は、イオンのための駅というわけではなく、周辺に広がるニュータウンのための駅という位置づけである。

 レイクタウンという名称は、昔からこの地域が浸水に悩まされたことに対処すべく、調整池を設けたことに由来する。

 大相模(おおさがみ)調整池という、神奈川県にありそうな名前は、越谷市でもっとも古い寺である大聖寺の不動明王像が、相模国の槻の木(つきのき=ケヤキの古名)を使い彫刻したものであることにゆかりがある。近くの地名は相模町であり、大相模小学校・中学校もある。

 イオンレイクタウンのリニューアルは、昨年から来年にかけて3年間行われる予定で、今後は埼玉県との間で締結した基本協定に基づき、大相模調節池の水辺について、地域と連携して魅力向上などの検討を進めていくという。

 越谷レイクタウン駅は相対式ホーム2面2線を持つ高架駅で、地上に改札口があり、北口と南口がある。バス乗り場もある北口は、駅を出るとすぐ右側にイオンの入り口がある。ここから専用通路が道路をまたぎ、kaze棟2階につながっている。

 アウトレット棟は通りを挟んでkaze棟の北側にあり、アウトレット棟の東にmori棟が位置する。駅からmori棟の端までは直線距離でも約1kmあるから、隅々まで歩き回ると歩行距離は数kmに達してしまう。そのため駅北口とイオンモールmori棟を結ぶ無料シャトルバスが出ているほどだ。

 対照的に南口は、小さなロータリーがあるだけで、バスは乗り入れていない。ただしこちらも越谷レイクタウンのエリアの一部であり、周辺には住宅が立ち並んでいる。越谷レイクタウン駅が、通勤通学のための駅でもあることを教えられる。

■武蔵野線の利用割合は? 

 ではイオンレイクタウンを訪れる人の中で、武蔵野線を使ってくる人はどのぐらいいるのだろうか。イオンモール広報グループに聞くと、「平日は15%、休日は17%」という答えが返ってきた。

 ショッピングモールというと、従来は市街地から離れた場所に設置されることが多く、来場者の交通手段はもっぱらマイカーだった。それに対応して広大な無料駐車場が用意されていることも特徴だった。

 イオンレイクタウンの駐車料金は、最初の5時間無料、以降30分につき100円で、映画などを楽しむ人以外は無料で済むはずだ。それを考えれば平日でも15%という数字は、筆者の予想以上だった。

 休日のほうが数字が大きくなるのは、レジャー目的で遠方から来る人、施設周辺での渋滞を懸念する人が多いからではないかと推測している。

 増床した部分は元駐車場だったが、ニュースリリースでは駐車場数は減っていない。今回は「比較的利用が少なかった駐車場に増床棟を建設し、減少分は臨時駐車場を確保することで、渋滞対策をしている」(イオンモール広報グループ)とのことだ。

 加えて「アウトレット棟の増床部分とkaze棟を結ぶ『アウトレットブリッジ』を新設することで、交差点を横断する歩行者数を抑え、歩行者保護と渋滞緩和の対策を行っている」という説明もあった。

■鉄道との連携が目立つ

 越谷レイクタウン駅は、イオンのためだけに作られた駅ではない。しかし近年のイオンモールでは、前出の幕張新都心に加えて、京都桂川や和歌山など、鉄道との連携が目立っていることも事実だ。

 この点についても尋ねると「イオンモール施設への効果だけでなく、地域経済の活性化に資する取り組みと考え交通インフラを構築している」とのことで、「イオンモールのために駅を作るという考えはなく、官民問わず地域の事業者と協業して、地域の魅力を高めることが主旨」という回答が返ってきた。

 商業施設として売り上げを伸ばすことはもちろん大切だが、イオンモールでは地域経済の活性化が同社施設の活性化につながるという考えで、鉄道との連携が目的ではなく、そのための手段の1つであるという考えが伝わってきた。

 近年ショッピングモールの建設をめぐっては、周辺の交通渋滞が問題になることから、地元住民などから不満が出されることがある。こうした動きを踏まえて、地域活性化の中での施設の繁栄という方向を目指していることもあるだろう。

 先月、有識者グループ「人口戦略会議」が公表した地方自治体の持続可能性分析レポートでは、「消滅可能性都市」に加えて「ブラックホール型自治体」という言葉を使い、過度な人口集中の弊害に言及していた。

■今後も増える? 「最寄り駅」の設置

 もちろん一極集中は避けなければならないが、現状をもとに考えれば、人里離れた土地に大きな店舗を構えて、広範囲からマイカーで来てもらうというビジネスモデルは難しくなってきているとも言える。

 とはいえ都市部への出店は、交通渋滞が社会問題化するという懸念もある。よって今後も、ショッピングモールの近くに駅を用意して、移動の分散を促すという事例が増えていくのではないかと見ている。

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最終更新:5/8(水) 7:56

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