岸和田「蜻蛉池公園」隣に大型商業施設が開業、まちづくりにどう寄与する《楽待新聞》

5/11 19:00 配信

不動産投資の楽待

だんじり祭や泉州水なすで有名な大阪の岸和田市で、2024年5月より新たな複合施設がオープンした。グルメ・ファッション・ホテル・温浴施設などが集結した大型複合施設「WHATAWON(ワタワン)」だ。

全ての人が朝から晩まで丸1日楽しめる「滞在型エンターテインメントモール」を掲げており、通常の商業施設とは一風変わったスポットとして注目を集めている。

南大阪に新たに誕生した複合施設の概要について、市が目指すまちづくりの在り方とともに解説する。

■蜻蛉池公園ってどんなところ?

施設情報を紹介する前に、立地について紹介しよう。

WHATAWONの真向かいにある蜻蛉池(とんぼいけ)公園は、阪和自動車道の岸和田和泉インターチェンジから車で約10分の場所に位置する。

公共交通機関を利用した場合のアクセスは、JR阪和線の下松駅か泉北高速鉄道の和泉中央駅からバスで15分程度だ。

面積53ヘクタール(甲子園球場約13.8個分)におよぶ府営公園で、敷地内には芝生広場・池、バーベキューエリア、球技場などのスポーツ施設、季節の花々園、子ども用の遊具が集まった子供の国、音楽演奏もできる水辺のステージ、カフェといった多様な施設が設けられている。

イベントも盛んに行われており、2024年3月の1カ月間だけでも7つのイベント情報が発表されていた。イベントの一例は桜のライトアップや親子環境教室など。子ども向けのものが目立つが、年代を問わず興味を惹きそうなものもある。

蜻蛉池という名称は、岸和田市内に数多く存在する農業用のため池に由来したものだ。これらの池はかつて「ダンボ池」や「ドンボ池」と呼ばれていたが、江戸時代に語呂合わせで「トンボ池」に改名された。

実際に、周辺の池では「オニヤンマ」や「アカトンボ」といった多くの種類のとんぼが生息していることから、「蜻蛉池公園」という名前がつけられたという。

その歴史を見ると、1986年に施設整備が始まり、1991年に一部エリアが開設されて以降、段階的に施設が拡張されてきたことがわかる。年間来園者数は2017年に91万人を記録、現在では100万人の来園者数を誇る。

千葉県袖ケ浦市にあるテーマパーク・東京ドイツ村の2017年度における年間入場者数が100万人だったことを考えると、蜻蛉池公園の来園者数は全国的に見てもかなり多いほうではないだろうか。

■蜻蛉池公園を中心とした周辺のまちづくりが進む?

岸和田市は計画期間を2023~2034年度とする「“新・岸和田”づくり~都市計画マスタープラン~」を策定している。

このマスタープランを見ると、岸和田市の南側は大阪府最高峰の大和葛城山を擁する山地になっているため、人口は北側に偏っていることがわかる。

このため、道路や公園の整備なども北側のほうが進んでおり、南側は計画のみで未着手となっている箇所も多いのが実態だ。

岸和田市はこの現状を課題視しており、南側の道路や公園などについて、官民連携による効率的な整備・管理手法を検討する方針としている。

蜻蛉池公園のすぐ北側では都市計画道路の「泉州山手線」が計画されており、大阪府は岸和田市の西に位置する貝塚市側の区間を2020年度に事業化した。時期は未定だが、いずれ蜻蛉池公園の北側にも道路が整備されるだろう。

また、岸和田市の都市計画マスタープランには、泉州山手線沿いに鉄道新線を整備するという項目がある。具体的な動きはまだ出ていないが、将来的には公園のすぐ側に駅ができる可能性もあるだろう。

泉州山手線の整備を見越した動きとして、岸和田市は都市計画マスタープランの中で、蜻蛉池公園のすぐ北側のエリアを「自然・産業共存地区」および「広域交流拠点」に指定している。

加えて公園の南側を「地域拠点」として整備する方針も示されており、蜻蛉池公園を中心としたまちづくりが構想されていることがうかがえる。

さらに泉州山手線の延伸に応じて、広域交流拠点の形成を促進するとともに、農業の振興や歴史文化を活かした農村集落の改善、神於山や春木川の自然環境の保全・回復、活用に取り組むことも目標として定められている。

一方で市民の意識調査に関する項目を見ると、公園などの存在や街並み・景観に関しては高く評価している人が多い反面、市街地の活気や交通の利便性・安全性などについては、それほど評価が高くないことがわかる。

今後、都市計画マスタープランにあるとおり公園を中心としたまちづくりが進むことで、市民の満足度が向上することに期待したいところだ。

■WHATAWONが岸和田市のまちづくりを広げるか

こうした中で、アパレルメーカー「アンティカ」(大阪府和泉市)がオープンさせたのが大型複合施設「WHATAWON(ワタワン)」だ。

新施設のコンセプトは「等身大の非日常」が体験できる滞在型エンターテインメントモールというもの。

出店地は蜻蛉池公園の東側に隣接するエリアであり、公園の来園者も多く訪れることが予想される。

入居テナントは、アパレルショップや食料品店などだ。敷地内にはフードホールやイベントスペースなどもある。テナントを見ると、20代から30代向けの店舗が多いという印象を受ける。

他方、蜻蛉池公園の来園者年齢層を見ると30代~40代が約半数であり、利用目的も「遊具で遊ぶ」「花や緑を楽しむ」などが多くを占めていることから、子育て世代の利用も予測される。

複合施設の来客予定数は年間154万人とされているが、公園の来園者にマッチした施設づくりができるかどうかもカギを握りそうだ。

しかしながら、少し東へ進んだ先にある「コストコホールセール和泉倉庫店」と「ららぽーと和泉」を除くと、公園の周辺にはそれほど大きな商業施設などは見当たらない。しかも岸和田市の南側では、公共交通網の整備もこれからという状況だ。

都市計画マスタープランにあるとおり、道路や鉄道などの交通インフラが整ってくると、WHATAWONがより多くの人を集める施設になることも考えられる。

WHATAWONは、岸和田市が描く公園を中心としたまちづくりを広げるきっかけになるか、オープン後の動向に着目したい。

朝霧瑛太/楽待新聞編集部

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最終更新:5/11(土) 19:00

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