「2024年に行くべき」世界の名所3位「山口市」、不動産価格に影響は《楽待新聞》

3/18 19:00 配信

不動産投資の楽待

アメリカの有力誌『ニューヨーク・タイムズ』は今年1月、「2024年に行くべき52カ所」を発表した。

1位には今年4月に皆既日食が観測できる北米、2位には今夏オリンピックが開催されるフランスのパリがランクインした。

これらに続いて3位に選ばれたのが、日本の山口市だ。

2023年には岩手県盛岡市が2位に選ばれたが、その際には国内外から観光客の人気が急上昇。その影響もあってか、マンション価格にも上昇が見られた。

山口市でも、同様の状況が起こるのではないかとの期待が高まっている。

■昨年は盛岡市の人気が急上昇

『ニューヨーク・タイムズ』紙は毎年1月、その年に「行くべき52カ所」のランキングを発表している。「2023年に行くべき52カ所」では、イギリスのロンドンに次いで、岩手県盛岡市が2位に選ばれた。

紙面では盛岡城跡公園や中津川の自然美、大正時代に建てられた和洋折衷の建築美などが紹介された。

ランキングの影響力たるや大変なもので、盛岡観光コンベンション協会によると、同年4月28日~5月7日までの大型連休中、盛岡駅の観光案内所には前年の4倍にあたる約3000人の観光客が訪れたという。

宿泊客が殺到したことで、市内の多くのホテル・旅館が満室状態になった。あるIT会社の統計では、2023年の大型連休中の盛岡駅周辺の人出はコロナ禍前に近いところまで回復したというから驚きだ。

東北新幹線に乗車すれば、東京駅から盛岡駅までの所要時間は最短で約2時間。交通アクセスの良さから、居住地や不動産投資用物件の購入候補地として関心を持つ人たちも増えた。

コロナ禍以降はリモートワークが普及し、働く場所を以前よりも選ばなくなったことも、そのようなトレンドを後押しした。

■盛岡市のマンション価格は前年比約2割上昇

移住とまではいかなくても、豊かな自然や文化が残る盛岡市を二拠点居住先として意識する人たちもいる。さらに、地域の活性化が進む盛岡市を有力な投資先として考えて、マンションを取得する人も増加した。

このような要因から、盛岡市の中古マンション価格は大幅にアップしたのだ。

マンション情報の「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、定期的に全国都道府県や市区町村別の中古マンション価格を調査。同社は、坪単価をベースに70平米の価格に換算した「中古マンション価格」を発表している。

価格ランキング上位20件について、1年前、3年前、5年前、10年前と比較した価格の「騰落率」(上昇率)ランキングを作成している。

2023年10月に発表された「1年前との市区町村別騰落率ランキング」では、盛岡市は全国1位だった。

図表1にあるように、首都圏や近畿圏、中部圏、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)などが上位に挙がる中、それらの都市を抑えて盛岡市が21.13%と最も高い上昇率を記録したのだ。

騰落率が20%を超えたのは、盛岡市だけだった。

「2023年に行くべき52カ所」に選ばれたことと直接的に結びついているかは断定できないが、「2024年に行くべき52カ所」に挙げられた山口市でも、同様の効果を期待するのは自然な反応だろう。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

■「西の京」山口市の魅力とは?

では、今年「行くべき」ところに選ばれた山口市の魅力とは何だろうか。

首都圏や近畿圏といった大都市から離れていることもあって、「2024年に行くべき52カ所」の3位に選ばれたことにピンと来ない人もいるかもしれない。

しかし『ニューヨーク・タイムズ』紙は、そこが山口市の魅力の1つだとしている。

東京からは新幹線や航空機を利用しても、山口市までは5時間程度かかる。盛岡市に比べると東京からの移動に要する時間は倍以上だ。

しかし、それゆえに観光客が殺到しづらく、「観光公害が少ない」と評価されている。観光公害とは、観光客や観光客を受け入れるための開発などが、地域や住民にもたらす弊害を例えた表現だ。オーバーツーリズムと呼ばれることもある。

山口市には歴史ある建造物や文化が残り、「西の京」と呼ばれる。大都市化が起こらず、コンパクトな都市として評価されてきた。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事では、国宝である瑠璃光寺五重塔をはじめ、伝統的な陶芸工房や地元で長く愛されてきた飲食店などが取り上げられた。

市の中心部には、約800年の歴史を持つ湯田温泉が残り、周辺にはホテルや旅館が軒を連ねる。コンパクトな都市としてさまざまな魅力が凝縮されているとの評価を得た。

また、毎年7月に開催され、約600年の歴史を持つ「山口祇園祭」も紹介された。本場京都の祇園祭にも匹敵する行事であり、夏休みの観光シーズンには多数の観光客の増加が見込まれている。

■日本三名塔のひとつに数えられる五重塔

山口市内にある観光資源として最も人気があるのが「瑠璃光寺五重塔」だ。

瑠璃光寺は曹洞宗の寺院で、中世から戦国時代にかけて、中国地方を代表する大名だった大内氏によって創建された。国宝の五重塔が建てられたのは1442年で、600年近い歴史を持つ。

山口が「西の京」と呼ばれるのは、1300年代中頃に大内氏24代当主、大内弘世が京を模した街づくりを始めたことに由来する。

国内に現存する五重塔の中で、瑠璃光寺の五重塔は10番目に古く、日本三名塔のひとつに数えられている。瓦屋根ではなく、たおやかな曲線が美しい檜皮(ひわだ)葺きの屋根も特徴だ。

現在は大改修中のためシートに覆われており、直接目にすることはできない。しかし、山口市では『ニューヨーク・タイムズ』紙に取り上げられたのを好機ととらえ、シートを透明のパネルに取り替えて外部から改修中の様子を見学できるよう整備することを計画しているという。

余談だが、日本三名塔は、日本最古の五重塔として知られる奈良県法隆寺の五重塔、豊臣秀吉の醍醐の花見で知られる京都・醍醐寺の五重塔、そして山口県の瑠璃光寺の五重塔を指す。いずれも国宝に指定されている。

■県内各地に観光資源が点在

県庁所在地の山口市だけでなく、山口県にはさまざまな見どころがある。

たとえば、県南東部に位置し、広島県と接する岩国市には、日本三名橋のひとつに数えられる錦帯橋がある。全長約200メートルの木造橋で、5連アーチの美しさは圧巻だ。

県中南部に位置する防府市には、日本最初の天満宮とされる防府天満宮がある。加えて、最近は県東南部にある周南市の石油化学コンビナートの工場夜景が「映える」と若い世代に人気だ。

県の中央部には山口市のほか、カルスト台地の秋吉台・秋芳洞がある。一帯は国定公園、国の天然記念物に指定されている。

西部の下関市には「ふぐ」のセリで知られる唐戸市場、日清戦争後の講和条約締結会場となったふぐの老舗割烹旅館の「春帆楼」などの名店もある。

北部の日本海側には明治維新の立役者である長州藩の英傑を生んだ萩市があり、萩城の城下町や松下村塾といった名跡のほか、萩焼の工房などの見どころも多い。

県内を1日2日で回りきるのは難しいほど各地に観光資源が存在するため、宿泊を伴う観光需要は根強い。

■市長は喜びのコメントを発表

人気観光地が点在し、春休みや大型連休といった観光シーズンには国内外からの観光客が増えて、エリアの活性化が進むのではないかと地元は大きな期待を寄せている。

山口市は、『ニューヨーク・タイムズ』紙で選定された段階で、その旨をホームページで報告。伊藤和貴市長は「大変嬉しく思う」と喜びのコメントを発表。

そして「これからも、国内外から多くの方に本市にお越しいただけるよう、おもてなし環境の整備に努めてまいります」と観光客を受け入れることに前向きな姿勢を示した。

■山口のマンション価格は今後どれほど上昇する?

2023年の盛岡市と同様に、山口市でも内外からの観光客が増え、市へ移住を考えたり、二拠点生活の拠点としてマンションの購入を考えたりする人が増えるのではないだろうか。

また、エリアの活性化を見込んで、山口県や山口市でのマンション投資を検討し始める人も出てくるかもしれない。

山口県のマンション相場を見ると、図表2のようになっている。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

70平米換算の中古マンション価格は、2023年12月で1461万円と大都市部に比べると格段に低い。

2023年比でマンション価格の騰落率を見ても、上昇率は6.8%にとどまっており、10年前の2013年と比べても7.3%しか上がっていない。

東日本不動産流通機構で首都圏の中古マンションの成約価格の平均値を見ると、2013年には2589万円だったが、2023年には4575万円にまで上がっており、この10年間の上昇率は76.7%に達した。

調査主体の違いはあるものの、首都圏と山口県とではマンション価格の上昇率には大きな差がある。山口県での上昇率は首都圏の10分の1程度にとどまっており、価格の上昇余地は十分にあると考えられる。

山口県の中古マンションの平均価格は1461万円であり、大都市圏と比べるとリーズナブルな水準にある。

2024年は居住先として、二拠点居住の居住先として、また投資先として、山口県全体や山口市内でマンション人気は高まっていくのかもしれない。

山下和之/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待

関連ニュース

最終更新:3/18(月) 19:00

不動産投資の楽待

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング