痛い、ムカムカする、食欲がない…名医が解説する心当たりがあったら疑いたい「胃の病気」とは
世の中に溢れる予防医療や健康法、何をどう選ぶのが正解なのでしょうか?
認知症やがんになりたくない。血圧も腸内環境も心配。病院にいくほどではない不調ともつき合いつつ、動ける身体はキープしたいという方へ。17人の医師が専門領域の最新知見を解説、医師自身の健康習慣を紹介している『名医に聞く健康法』を一部抜粋し、今日から始められるちょっとした健康の知恵をお届けします。
■胃は衰えにくい臓器
胃潰瘍や胃がんなどの病気があれば話は別ですが、胃は本来、とても丈夫な臓器です。
加齢による影響もそれほどなく、仮に20歳と90歳の健康な人の胃を取り出して、どっちがどっちと問われても、医師の私でも判断しづらいほどで、健康であれば、いくつになってもしっかり働いてくれる臓器が胃なのです。
ところが、加齢とともに胃の調子を崩す人が増えます。実は、そこに自律神経が大きく関わっているのです。
胃は手や足と違って自分の意思で動かしているわけではありません。食べ物が入ってきたら、適切なタイミングで膨らんで胃液を分泌し、蠕動(ぜんどう)運動によって食べ物を攪拌(かくはん)して腸へと送っていきます。そうした機能をすべてコントロールしているのが自律神経なのです。
とても、重要な役割を果たしている自律神経ですが、やはり寄る年波には逆らえず、加齢によって乱れやすくなるため、胃が十分に膨らみづらくなったり胃液の分泌が滞ったりして、不調を起こすのです。
■慢性的な不調はストレス由来かも
さらに、ストレスも自律神経に悪影響を及ぼします。
悩みごとがあると胃が痛んだり、食欲不振に陥ったりという経験は誰しもあるでしょう。不安やストレスは自律神経を乱れさせる大きな要因になり、胃の働きを悪化させます。したがって、あれこれ考えながら食事をするのはとても悪い習慣ということになるのです。
考えごとがあっても食事どきは忘れて、料理を味わいながら楽しく食事することを意識しましょう。
ストレスが自律神経に与える影響が大きくなると、慢性的に胃の不調をもたらすことにもつながります。
胃の具合が悪いといって来院し、検査をしてもこれといった病気が見つからない、というケースは少なくありません。病気ではないのに胃の不調が続くようなら、機能性ディスペプシアの可能性があります。
食事を始めてすぐにお腹いっぱいになってしまう早期膨満感や、食後の胃もたれ、胃痛、みぞおちが焼けるような感じなどの症状が半年以上続き、週に2〜3度の頻度で起こる場合、機能性ディスペプシアと診断します。
胃の不調が頻繁に起こると、「食べる」ことに恐怖心が芽生えたり、気分の落ち込みをともなうこともあります。機能性ディスペプシアという病名はあまり聞き慣れないかもしれませんが、近年患者数が増えています。
症状を引き起こす原因として、「胃の働きが悪くて、十二指腸に送られないこと」「胃酸過多」「胃の知覚過敏」「ストレス」などが挙げられますが、どれか1つだけの原因で機能性ディスペプシアになるわけではなく、さまざまな原因が複合的に影響していると考えられます。
治療は主に内服薬で不調を改善します。内服薬として最初に使われるのは、①胃酸が出るのを抑える薬(プロトンポンプ阻害薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬)、②胃の動きを良くする薬(アコチアミド)、③漢方薬(六君子湯)の3種類です。
胃酸に対し敏感に反応することで痛みが出る場合には、プロトンポンプ阻害薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬により、胃酸が出るのを抑えることによって、症状を改善することができます。
また、胃の動きが悪くなって食べ物が胃に長時間残り、胃もたれが出たり、十分な量の食事がとれなくなったりする場合には、アコチアミドにより胃の動きをよくすることで症状を改善します。
漢方薬である六君子湯は胃の動きをよくするだけではなく、精神的な不安も改善する作用があります。
胃の調子を崩さないためには、ストレスを溜め込まないこともポイントです。暴飲暴食を控えるのはもちろん、自律神経のバランスを保つ生活習慣を心がけましょう。
■胃の働きを整える6つの習慣
食事・運動・睡眠のリズムを整える
自律神経のバランスを保つには、食事・運動・睡眠のリズムを整えることが大切。毎朝決まった時間に起きて、朝食をしっかり摂ること。また、散歩など30分程度の軽い運動を毎日、取り入れるようにしましょう。
夜もできるだけ同じ時間帯にベッドに入るようにして、夜ふかしは避けて。こうした規則正しい生活を心がけることで、胃の調子は改善します。
胃酸を刺激しない食べ方を
食べすぎたり、脂肪分を多くとったりすると、しっかり消化しようとして、胃酸が多く分泌され、胃もたれや胸やけの原因となります。それを抑えるには、脂っこいものは控えめにして、腹八分目を心がける。
また、横になると胃酸が逆流しやすいので、食後すぐに寝ころぶのはやめましょう。
胃を圧迫しない
腹部が締めつけられると胃酸の逆流を招きやすくなります。前かがみになるデスクワークを長時間続けるのは避けましょう。姿勢を変えたりストレッチしたりして、時々体を動かして。ウエストをきつく締めるタイトな洋服も腹部を圧迫してしまいます。
刺激物を控える
からいものや酸っぱいものは、胃酸の分泌を刺激しすぎるので、胃の調子が悪いときは控えましょう。LG21乳酸菌は、胃もたれや胃痛といった胃の不調を改善するといわれています。LG21乳酸菌入りのヨーグルト摂取を習慣にするのもよいでしょう。
市販薬で軽減
胃の不調を感じたときに頼りになるのが、手軽に入手できる市販薬です。食べすぎなどによる食後の胃もたれには、消化を助けるタイプの薬。また、胸やけや胃のむかつきなどがある場合には、胃酸過多の可能性があるので胃酸の分泌を抑えるタイプの薬ということになります。
ただし、服用しても改善が見られなかったり、不調が長引く場合には、病気が隠れている可能性があるので、医師の診断を仰ぐようにしましょう。
ピロリ菌検査を受ける
健康な胃の粘膜はふかふかの絨毯のような状態ですが、ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜は薄くすり切れて炎症を起こし、胃潰瘍や胃がんを引き起こします。
50歳以上の約半数が感染しているといわれます。検査で早めに見つけて除菌をすれば、発症リスクを下げられます。検査には健康保険は適用されませんが、除菌治療は適用されます。一度、受けておくと安心です。
■私の健康法「主観的健康観を高めたい」
楽しさを重視
胃の調子が悪いと感じたときには、刺激の強いものは食べないように配慮していますが、ふだん調子がいいときは、毎日のよう晩酌を楽しんでいますし、食事も基本的には食べたいものを食べています。
できるだけ誰かといっしょに会話しながら、楽しい時間にするように心がけています。
世の中に健康情報があふれているからでしょうか、あれを食べちゃだめ、これもいけないと気にするあまり、それがストレスとなって体を蝕(むしば)んでいる、つまり、健康が損なわれている人がとても多いと感じています。
「主観的健康観」という言葉があり、これは快適に日常生活を送れている(=健康である)と自分自身が自覚しているかどうかを表します。
食事は毎日のことですから、おいしく味わって、楽しい時間にすることで、幸福感や主観的健康観が高まります。
「病は気」からの言葉の通り、今日はこれ食べたから、もしかして胃に悪いかも、病気になるかもなどといちいち不安にかられていると、食事そのものが楽しくなくなりますし、次第に健康も損なわれていってしまうでしょう。
趣味といえば、私の場合はゴルフです。月に4〜5回のラウンドを楽しみにしています。1回のラウンドで1万7000歩ぐらい歩きますから、ゴルフが体力向上・太りすぎの予防にもなっています。
■大事なのは、しっかりチェックしておくこと
定期検診を怠らない
ただ、2年に1度は胃カメラ検査をして、胃かいようや胃がんなどの病気がないかチェックしています。病気がなければ、いくつになってもしっかり働いてくれます。胃は本来、丈夫な臓器ですから。
消化器内科医であっても年に1度や2度、胃の調子がすぐれないときがあります。そんなときは胃にやさしい食事を意識すると1〜2日もすれば回復します。
大事なのは、病気がないかをしっかりチェックしておくこと。そうすれば、多少の不調があっても、もしかしたらがんかも? などと心配せずに済みます。
胃がんの原因はほぼ100%ピロリ菌が原因であることがはっきりしています。ピロリ菌検査を受けたことがなければ必ず受けて、ピロリ菌がいたら除菌することをおすすめします。私も除去済みです。
胃カメラ検査は苦しいというイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、今は麻酔を使用した鎮静化内視鏡検査が普及しており、苦痛は大幅に軽減されるようになっています。
東洋経済オンライン
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最終更新:3/22(土) 9:02