訪日旅行客数が前年同月比1.9倍、コロナ前の最高更新に王手。儲かるサービス産業に転換するチャンス

3/25 5:02 配信

マネー現代

「世界で最も魅力的な国」

(文 磯山 友幸) 桜のシーズンが本番を迎え、外国人観光客の姿が急増している。円安も追い風になって日本旅行は世界的なブームになっており、新型コロナウイルス蔓延前の訪日客数を更新するのは時間の問題だ。インバウンド需要をどう日本経済復活の原動力にしていくかが問われている。

 JNTO(日本政府観光局)が3月19日に発表した2024年2月の訪日該客数(推計)は、278万8000人と2023年2月の1.9倍に拡大した。2月としてはコロナ前の2019年2月の260万4322人を大きく上回り、過去最高を更新した。春節(旧正月)が今年は2月中旬だったことや、うるう年で日数が1日多かったことも追い風になった。

 春節の時期よりも訪日外国人が増えるのは本格的な桜の季節である4月。さらに夏休みのバカンスシーズンに入る7月が年間を通して最も多くなる。特に、桜が咲きほこる日本の美しい風景は近年人気が高く、京都や奈良といった著名観光地だけでなく、桜前線を追いかけるように北関東から東北へと外国人の人気スポットが広がっている。

 4月のピークは2019年4月の292万人。今年4月の訪日客がこれを上回るかがひとつの焦点だ。また、過去の月間の最多記録は2019年7月の299万1190人で、今年の夏にこの記録を塗り替える可能性は十分にある。それぐらい外国人には日本は人気だ。

 米国の大手旅行雑誌『コンデナスト・トラベラー』が昨年10月3日に発表した読者投票によるランキング「リーダーズ・チョイス・アワード」の「世界で最も魅力的な国」に、「日本」が第1位(前年は2位)に選ばれた。同誌は高所得者層を中心に読者を持っているとされ、質の高い旅行へのニーズが強いとされる。

 そうした読者に1位に選ばれるようになったのは、単に円安で「安い」ことだけが理由ではない。観光資源をふんだんに持つ日本への評価に加えて、旅行に慣れた人たちに期待感を持たせるだけのレベルの高いサービスや高品質の宿泊施設などを提供できるように、日本の事業者が変わりつつある証左でもある。

中国からの旅行客だけが不振だが

 ひとつ、2019年にインバウンド客が押し寄せた当時と大きく光景が変わっていることがある。中国からの旅行客がまだまだ少ないことだ。2月をみると、今年は45万9400人で、トップの韓国の81万8500人、2位の台湾の50万2200人の後塵を拝している。2019年2月は国別トップで、72万3617人だったから、まだピークの3分2の水準に過ぎない。

 2019年と比べると、米国からの訪日客が1.6倍、カナダや豪州が1.4倍、フランスやイタリアが1.3倍に増えている。当時と比べて街中に非アジア人の外国人が増えていると感じている人も多いだろう。ロシア・ウクライナ戦争や、中東での紛争の影響で、ヨーロッパ諸国への旅行が行きにくくなっていることも背景にありそうだ。

 また、フィリピンやマレーシア、インドネシア、ベトナムからの訪日該客数が大きく増えている。旅行だけでなく、人手不足に喘ぐ日本が外国人の働き手を求めていることが統計に表れていると見られる。もちろん、アジア諸国が経済発展する一方、円安によって日本旅行がより身近になったことが何と言っても大きい。

 中国からの旅行者の戻りが鈍い背景には、中国国内の景気悪化があるとみられる。2019年は7月と8月に1カ月で100万人超が中国からやってきていた。当時、全訪日客に占める中国からの訪日客の割合は39.7%に達していた。中国人観光客の爆買いで、百貨店などが潤っていた。

 2月はこの比率がまだ16.5%にとどまっており、中国一辺倒のインバウンドではないことを示している。また、一方で、中国からの旅行客がコロナ前の水準に戻れば、一気に単月での訪日外客数の最高記録を更新することになるだろう。

「安い日本」からの脱却を

 このインバウンド効果を日本経済の復活にどう結び付けていくか。2023年年間の訪日外客数は2506万人と、ピークだった2019年の3188万人の8割に満たない。にもかかわらず、外国人による消費額は推計の5兆2923億円と2019年を10%上回り、過去最高を記録した。外国人旅行者にもっと日本国内でお金を落としてもらう工夫がますます必要になる。

 特に欧米からの比較的所得の高い旅行慣れした層に満足してもらえるような高い品質のサービスをきちんとした高い価格で提供することが重要だ。観光地の高級ホテルなど、かつてに比べると大幅に料金が引き上げられており、「安い日本」から脱却する動きが広がりつつある。日本人から見ると「高い」と感じても、外国人から見て適正に見える価格設定に変えていくことが必要だ。円安になっている分、どんどん値上げをして、外国人消費で儲けることがポイントだ。

 観光地の土産物なども、日本の良い工芸品などを価格を引き上げて販売することができれば、これまで低いと指摘されてきた日本の生産性を引き上げることができる。儲けはできるだけ早期にサービス産業で働く従業員の給与アップにつなげていけば、経済と賃金の好循環が起きてくる。そのきっかけに外国人消費を生かすべきだろう。

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最終更新:3/25(月) 5:02

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