ユーロ円はまず昨年高値175.43円、中期で180円を目指す展開へ! 欧州通貨が強く、ユーロ/米ドルは1年後1.25ドル目指すとの話も。米ドル/円も底堅くクロス円が続伸
⚫️欧州通貨の強さが対米ドルで際立つ今年前半
皆さん、こんにちは。
今年(2025年)もあっという間に半分が過ぎましたね。そこで、今年前半の主要通貨の対米ドル推移を見てみましょう。
上は、今年前半の主要通貨の対米ドル騰落率です。
米ドルは主要通貨に対して軒並み下落しており、その中で圧倒的な強さを見せたのが、このコラムでも以前から注目しているスイスフランです。ユーロ、英ポンドもそれに続いています。
一方、対米ドルで上昇が緩やかだったのは、豪ドル、ニュージーランドドル、そして日本円でした。
つまり、米ドルの弱さが際立つ中で、特に強さを維持したのは欧州通貨だったと言えます。
最強通貨であるスイスフランは、金(ゴールド)の代替通貨としての人気も高く、その強さは際立っています。本稿執筆時点で、スイスフラン円は史上最高値を更新し、一時181.92円まで急騰しました。
SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])のシュレーゲル総裁が日本経済新聞のインタビューで「マイナス金利導入のハードルが高まった」と発言したことも、マイナス金利導入への懸念を後退させ、スイスフランの続伸を後押ししたようです。
⚫️米ドル円が底堅いため、クロス円が続伸
スイスフランが対米ドルよりも、対円で強いのは、米ドル/円が底堅く推移しているためです。
主要通貨が対米ドルで軒並み値を上げている中、米ドル/円も4月22日(火)に一時139.89円と140円を割り込む急落を見せました。
その後、一時148円台まで急騰したものの、142円を割り込むこともなく、142~148円の狭いレンジで乱高下しています。
他の主要通貨が対米ドルで軒並み値を上げているにもかかわらず、米ドル/円だけが下げ渋っているため、ユーロ/円、英ポンド/円、スイスフラン/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は当然のように続伸しています。
この米ドル/円の底堅さは、国内からの「デジタル赤字」や、新NISAによる家計からの円売りが収束しないことが、米ドルを下支えしているためと考えられます。
結果として、欧州通貨であるスイスフラン/円は年初来高値を更新し続ける相場が続いています。
⚫️ユーロ/米ドルはドイツのゲームチェンジで1.1200ドルを超え、1.1829ドルまで急騰。1年後に1.2500ドル目指すとのレポートも
次に、「King of currency(通貨の王者)」とも呼ばれるユーロ/米ドルについても見てみましょう。
ユーロ/米ドルに関しては、3月6日(木)のコラムでドイツの「ゲームチェンジ」により1.1200ドルを目指すとしましたが、そのターゲットはあっさり超え、本稿執筆時点では一時1.1829ドルまで急騰しています。
このユーロの強さは、もちろん米ドル安の影響もありますが、ドイツが数十年ぶりの財政拡大へと大転換し、欧州の再軍備化が新たなテーマになったことが大きなきっかけです。
加えて、アセットマネジメントの友人によれば、欧州のアセットがアンダーウェイトになっていたことへの調整も大きく影響しているとのことです。
昨年末は、ドイツ自動車業界の低迷や政権の混乱などから、多くの投資家は欧州のアセットを敬遠していました。
ユーロ/米ドルについても、パリティ(1ユーロ=1米ドル)を目指して続落するとの見方が大勢でした。その思惑どおり、パリティに向かって続落したため、マーケット参加者のコンセンサスは間違っていなかったわけです。
しかし、米副大統領JDヴァンス氏の予想外の欧州批判をきっかけに、ドイツを筆頭とした欧州勢がアメリカ抜きの再軍備を目指すこととなり、状況は一変しました。
これを、このコラムでは「ゲームチェンジ」と称しましたが、その後のユーロ/米ドルは大きな調整もなく上昇しています。
ゴールドマン・サックスは、1年後のユーロ/米ドルは1.2500ドルを目指すと顧客向けレポートで伝えているようです。
⚫️ユーロ円はまず昨年高値175.43円、中期で180円を目指す展開へ
一方、前述のように米ドル/円が下げ渋っている状況では当然、ユーロ/円は上昇します。一時169.86円まで上昇しました。
同じ欧州通貨のスイスフラン円が史上最高値を更新する中、ユーロ円もまずは昨年(2024年)高値である175.43円を目指す展開となり、中期的には180円を目指す展開になるのではないかと想定しています。
スイスフラン/円に追随して、続伸するユーロ/円にも注目です。
ザイFX!
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最終更新:7/5(土) 14:07