日々の仕事や生活を送る中で、予期せぬ病気やケガにより、これまで通りの暮らしが難しくなる可能性があります。筆者は、ファイナンシャルプランナー(FP)としてお客様の家計相談を行いますが、「万が一の事態に直面したとき、生活費や家族をどう支えていけばよいのか」というお声も耳にします。こうした状況に備え、現役世代の暮らしを経済的に支える公的制度が「障害年金」です。
この記事では、日本年金機構が公表している最新の統計データなどをもとに、2026年度(令和8年度)の支給額や対象となる傷病、申請時の注意点について詳しく解説します。
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【障害年金】障害基礎年金1級105.9万円・2級84.7万円「障害手当金」最低保障はいくら?
障害年金は、主に自営業者などが加入する「障害基礎年金」と、会社員や公務員が対象の「障害厚生年金」の2種類に分けられます。受け取れる年金額は、障がいの程度(1級~3級)、年齢、そして初診日に加入していた年金制度によって異なります。2026年度における年間の支給額は、以下の通りです。
障害等級1級の年金額
・障害基礎年金(1階部分):105万9125円(※昭和31年4月1日以前生まれの方は105万6125円)
・障害厚生年金(2階部分):報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
障害等級2級の年金額
・障害基礎年金(1階部分):84万7300円(※昭和31年4月1日以前生まれの方は84万4900円)
・障害厚生年金(2階部分):報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
障害等級3級の年金額
・障害基礎年金(1階部分):支給なし
・障害厚生年金(2階部分):報酬比例の年金額(※最低保障額63万5500円、昭和31年4月1日以前生まれの方は63万3700円)
障害厚生年金の1級または2級に該当する場合、1階部分である「障害基礎年金」も同時に受け取ることが可能です。しかし、障害基礎年金には3級の制度が存在しないため、初診日に国民年金にのみ加入していた自営業やフリーランスの方などは、障害等級が3級相当となっても障害年金は支給されません。初診日に厚生年金に加入していた会社員や公務員の方であれば、障害厚生年金(3級)が支給される場合があります。
●障害手当金とはどんな制度?
さらに、障害厚生年金3級よりも軽度の障がいが残った方のために、「障害手当金(一時金)」という制度もあります。これは毎月支給される年金とは異なり、一度だけまとまった金額が支給されるものです。障害手当金の額は報酬比例の年金額の2倍で、最低でも127万1000円(昭和31年4月1日以前生まれの方は126万7400円)が保障されています。
【障害年金】約13万件の新規受給者、約6割を占める「精神・知的障がい」で最多
障害年金の支給は、特定の病名だけで決まるわけではありません。その病気やケガによって、日常生活や仕事にどの程度の支障が生じているかが総合的に判断されます。そのため、障害者手帳の有無にかかわらず申請でき、身体的な障がいだけでなく、精神疾患や外見からはわかりにくい内部疾患など、幅広い病気が対象となります。
・精神・知的障がい:うつ病、統合失調症、発達障害、認知障害など
・外部障がい:手足の機能障害、視覚・聴覚の障害など
・内部障がい:がん、心疾患、腎疾患、呼吸器疾患、糖尿病、血液疾患など
●新規受給者の内訳:精神・知的障がいが高い割合
日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」に基づき、どのような障がいで支給決定されたケースが多いのか、診断書の種類別に支給件数を見ていきましょう。
支給が決定された件数のうち、最も高い割合を占めたのは「精神・知的障がい」でした。
・新規裁定(新たに受給を開始した方)約13万件のうち、67.0%にあたる約8万7000件
・再認定(受給更新の方)約30万6000件のうち、79.1%にあたる約24万件
精神・知的障がいの分野では、新規・更新ともに多くの支給決定がなされています。障害年金は、障がいがある方々の生活を経済面から支える重要な社会保障制度であり、今後も公正な判定と制度のさらなる充実が求められます。
【障害年金】初診日の証明など「よくある質問」を解説
ここからは、障害年金の申請や受給に関して、多くの方が抱える疑問点について解説します。
●Q1. 初診日を証明する書類がない場合はどうしたらいい?
障害年金の請求手続きでは初診日の証明は非常に重要です。しかし、病院が閉院していたり、カルテがすでに破棄されていたりして、証明書を取得できないこともあります。そのような場合でも、診察券やお薬手帳など、初診日を客観的に推測できる資料があれば、申し立てた日が認められる可能性があります。すぐに諦めず、まずはお近くの年金事務所に相談してみることをおすすめします。
●Q2. 障害認定日から時間が経っていても請求できますか?
障害認定日から数年が経過していても、請求すること自体は可能です。その際は、障害認定日当時の診断書と現在の診断書の2通を提出する必要があります。ただし、公的年金には5年の時効がある点に注意が必要です。給付を受け取るためにも、該当する可能性のある方は、早めに専門窓口へ相談するのが安心です。
●Q3. 受給中に症状が悪化した場合、等級の変更は可能?
現在、3級の障害厚生年金などを受給中の方が、病状の悪化によってより上位の等級に該当する状態になった場合、「額改定請求」を行うことで年金額を見直せます。この請求は、原則として65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。ただし、過去に一度でも障害基礎年金の受給権(2級以上)を得たことがある方は、65歳以降でも改定請求ができます。
まとめにかえて
今回は、日本年金機構などの公表データをもとに、2026年度の障害年金の支給額や受給に関するポイントを解説しました。この制度は、特定の身体がいに限らず、うつ病などの精神疾患や、がんといった内部障がいも広く対象としています。
ただし、受給手続きには初診日の証明や5年という時効など、いくつかの注意点があります。そのため、制度の仕組みを正しく理解し、迅速に行動することが重要です。万が一の際に生活の安定を確保するためにも、必要に応じて年金事務所などの専門窓口へ早めに相談することが、確実な手続きにつながるでしょう。
参考資料
・政府広報オンライン「障害年金の制度をご存じですか? がんや糖尿病など内部疾患のかたも対象です」
・厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
・日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」
・日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」
・日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
・日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
村岸 理美
最終更新:7/9(木) 18:05