(ブルームバーグ): 糖尿病や肥満症の治療薬として人気の高い「オゼンピック」の薬価をデンマークの製薬会社ノボ・ノルディスクは米国で1カ月当たり1000ドル(約15万円)近くに設定しているが、利益込みで月5ドル足らずで製造できるとの調査結果が発表された。売り上げ好調なオゼンピックの価格を巡る疑念が再燃している。
米エール大学とロンドンのキングスカレッジ病院、非営利団体の国境なき医師団の研究者らは、1カ月分を利幅込みで89セントから4.73ドルで製造可能だと米国医師会のジャーナル「JAMAネットワーク・オープン」で報告した。これに対し、週1回注射するオゼンピックの米国での定価は1カ月分で968.52ドル。
ノボはオゼンピックとその関連薬である肥満症治療薬「ウゴービ」の製造コストの提示を控えた。同社は人気の薬を一般の人々が入手できるようにするため、多額の投資を行っていると説明。電子メールでの回答によると、同社は約60億ドルの設備投資と、米キャタレントからの生産設備の買収に110億ドルを支出している。
米国の高額な薬価について公聴会を開いてきたサンダース上院議員は調査結果が発表された後に声明で、「この法外に高い価格は、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険)と米国民、米国の医療システム全体を破綻させる恐れがある」と指摘。ノボに対し、オゼンピックの定価を他国並みの月155ドル以下に引き下げるよう求めた。
オゼンピックの製造における最大のコストについては、意外にもセマグルチドと呼ばれる有効成分ではなく、それを注射するためのペンであることが調査で判明。執筆者らは、注射器メーカーの元従業員やコンサルタントへのインタビューに基づき、1カ月分は2.83ドル以下で製造できると結論づけた。オゼンピックのペン1本の使用期限は1カ月で、週1回のペースで使われる。
一方、オゼンピックに含まれる有効成分は1カ月分で約29セント、典型的な1週間分で7.2セントで製造できることが分かった。セマグルチドの製造コストは安くはなく、1キログラム当たり7万ドルを超えるが、毎週の投与に使われるのは微量に過ぎない。
原題:Novo’s $1,000 Diabetes Drug Can Be Made for Under $5 a Month (2)(抜粋)
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最終更新:3/28(木) 10:27
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