日本一お金持ちな愛知県飛島村、手厚い住民サービスでも人口が増えない訳《楽待新聞》

3/23 11:00 配信

不動産投資の楽待

愛知県西部に位置し、名古屋市に隣接している「飛島村(とびしまむら)」。人口5000人に満たない小さな村だが、「日本一お金持ちの村」とも呼ばれている。

総務省が発表している「財政力指数」において、何年も連続で1位を記録しているのだ。

この記事では、飛島村とはどのような自治体なのか、村の概要や財政事情のほか、不動産をめぐる状況についても解説する。

■「日本一お金持ち」な飛島村

愛知県海部郡に属する飛島村。面積は約22.43平方キロメートル、人口5000人にも満たない(2022年4月時点)小さな村でありながら、日本で最もリッチな村として名を馳せている。

その背景には、総務省が発表している地方公共団体の主要財政指標の1つである「財政力指数」がある。

これは、基準財政収入額を基準財政需要額で割って得た数値の過去3年間の平均値。一言でいえば地方公共団体の財政力を示す指数で、これが高いほど、財源に余裕があると言える。

昨年末に発表された、2022年度の全市町村の財政力指数で、飛島村は2.02を記録し、全国1位であった(2位は1.62の青森県六ケ所村、3位は1.50の長野県軽井沢町)。

財政力指数が2を超えたのは、日本全国の市区町村で飛島村のみ。簡単に言えば、飛島村は支出の2倍以上の収入があるというイメージだ。

全国平均は0.49であることを踏まえても、飛島村がどれほど財源に余裕あるかがわかるだろう。

ちなみに、先述のトップ3は2020年度から変わっておらず、常態的にゆとりある財政であることが読み取れる。

ではなぜ、飛島村はこれほど豊かな財源を確保できているのか?

これは、村の南部が名古屋港の一角を占め、臨海工業地帯の形成を担っているところが大きい。名古屋港は東京・横浜・大阪・神戸と並んで五大港の1つとされ、貿易や物流の拠点となっている。

名古屋港エリアには、輸送関連会社をはじめ、木材や鉄鋼関連の事業所、発電所などのさまざまな業種が集まっている。飛島村には、これらの事業所からの固定資産税収入が多くあり、村の財政を支えているのだ。

■手厚い社会保障と住民サービス

財政に余裕がある飛島村。この豊かな税収は、存分に住民へと還元されていると言えよう。

高齢者のひとり暮らし世帯の緊急通報システム、高齢者や妊産婦へのタクシー料金の助成などがあるほか、お祝い金制度が手厚いことでも知られている。以下、一例を紹介する。

・結婚お祝い金
村の少子化対策や定住促進を目的として、結婚祝金の制度が設けられている。少なくとも一方が40歳以下であること、婚姻届提出後1年以内に夫婦で同一世帯として飛島村に住民登録を行うことなどを要件にしており、6カ月以上居住したのちに夫婦1組あたり5万円が支給される。

・高齢者へのお祝い金
現役世代や若い世代のみでなく、高齢者へのサポートも充実している。村内に暮らす高齢者には、節目ごとにお祝い金が支給される。

例えば、毎年9月に満80歳以上の高齢者に5000~1万円(年齢に応じて変動)の「敬老金」が支給されたり、満90歳になった誕生日に「長寿奉祝金」として20万円が支給されたりということがある。

・児童等養育奨励金支給事業
子どもが生まれた時、1歳になった時、小学校・中学校に入学した時にそれぞれ祝金・奨励金が設定されている。子ども1人当たり5万~10万円が支給される。

・中学2年生を対象とした海外研修
以前は小学校と中学校がそれぞれ存在していた飛島村だが、2010年から小中一貫教育を始めた。2020年には小学校と中学校を統合し、小中一貫校である飛島村立飛島学園で義務教育を行っている。

そこで「海外派遣事業」として、中学2年生を対象にアメリカのカリフォルニア州やオーストラリアのケアンズ市などへの海外研修を行っている。作文や面接で選ばれた参加者は、ホームステイや交流の中で異文化への理解や語学力を養うようだ。

■飛島村の住宅事情

住民サービスが充実しており、暮らしやすい環境が整えられている飛島村。物件を取得するのにも良いところなのだろうか?

国土交通省の地価公示において、飛島村には3箇所の基準地点がある。3地点の平均値を見てみると、2021年1月に4万4066円だったのが2023年1月には4万9866円へ上昇した。

一方で、村外からの移住者は少なく、人口の増加はあまり見られない。2020年の国勢調査における飛島村の人口は約4600人、昼間人口は約1万3000人となっている。

ここには、飛島村の地理的な事情があると推察される。飛島村は、臨海工業地帯を除く村域の大半が市街化調整区域になっているのだ。

さらに、市街化調整区域内では村の中心にあたる大字渚1丁目の一部には「渚地区計画」が策定されている。

この地区計画では低層戸建ての専用住宅地を中心とした良好な住環境の形成を図るという方針のもと、建ぺい率は最大で50%、容積率は最大で100%とされ、10メートルの高さ制限も設定されている。

敷地境界線からの建築物の壁面の位置にも基準があり、一部の例外を除いて道路や隣地との境界から1メートル以上離れた場所に建てる必要がある。

そのため、飛島村では賃貸マンションが建設されたり、住宅用の分譲地が発売されたり、開発がされるようなことはほとんどない。

臨海工業地帯のような職場が村内にあっても、村外から通勤する人が多いのは、開発が「できない」土地が大半を占めているからとも言えるだろう。



住宅用の土地や物件が少ないため、飛島村への移住は簡単ではない。転勤などにより飛島村で就業することになった場合も、近隣の自治体から通勤する人が多く、村外から転入するのは在住者との結婚などのケースが多いとされている。

なお、東京23区在住者(または通勤者)が就業や企業のために飛島村へ移住した場合は、移住支援金を受けられる可能性がある。国・愛知県・飛島村が共同で支援金を支給する制度で、要件を満たせば単身の移住で60万円の支援が受けられる。

飛島村への移住ハードルはやや高く、地下の上昇はある一方で人口の流入は見込めない。また、開発ができない地域も多いことから、一般に流通する不動産も少ない。

「日本一お金持ちの村」への投資は簡単なものではなさそうだ。

羽田さえ/楽待新聞編集部

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最終更新:3/23(土) 11:00

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