米商業用不動産の深まる苦境、群がる空売り筋-遠のく利下げが痛手

3/22 1:53 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 空売り筋が商業用不動産を標的にする動きが再び強まっている。米地銀の脆弱(ぜいじゃく)性やオフィス物件の継続的な価格下落、金利の高止まりが背景にある。

20日にはデータセンターを保有する米不動産投資信託(REIT)エクイニクスの株価が1月以来の安値に沈んだ。同社は会計を操作し、「人工知能(AI)夢物語」を語っていると主張する空売り投資家ヒンデンブルグ・リサーチの標的になったためだ。S&Pグローバルは今月、エクイニクスは世界で最も空売りされている銘柄だと指摘していた。

米REITの株下落、見通しは「AI夢物語」と空売り投資家が標的に

ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)やドイチェ・ファンドブリーフバンク(PBB)といった金融機関が不動産ローンに対する多額の引当金を発表したことで、投資家の間では警戒が高まっている。20日に発表されたMSCIリアル・アセッツの報告書によると、米国では2月までの1年間でオフィス不動産の価値が15.2%急落した。

ポルポ・キャピタル・マネジメントの創業者、ダニエル・マクナマラ氏は「金利がゼロに戻ることはなく、オフィスセクターは永遠に変わってしまったという事実を、投資家がようやく認識し始めた」と指摘する。同社は同セクターを空売りしている。

S&Pグローバルによると、NYCB株の13%近くが空売りされており、昨年11月の3%から増加している。NYCBはニューヨーク市で家賃規制の適用対象である集合住宅の主要な貸し手で、こうした物件は目下、価値が急落していることが背景にある。

マディ・ウォーターズの創業者である著名空売り投資家のカーソン・ブロック氏はブルームバーグテレビジョンで、米投資会社ブラックストーンのREIT「ブラックストーン・モーゲージ・トラスト」について、「一段と弱気」になっていると指摘。集合住宅不動産の厳しい環境を理由に挙げた。より規模の小さい貸し手に影響が連鎖する恐れがあるという。同社は昨年12月、同REITをショートにしていることを明らかにしている。

ブラックストーンREITに「一段と弱気」-空売り投資家ブロック氏

SPDR・S&P地方銀行上場投資信託(ETF)の株式のほぼ4分の3が空売りされており、先週初めから10ポイント余り増えている。

空売りが膨らむ背景には、米金融当局が利下げを急がない姿勢がある。利下げは不動産セクターに恵みの雨となり得る。

ここにきて商業用不動産の問題が広がりかねないとの懸念は高まっている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)が資産運用担当者を対象に行った調査によると、米国の商業用不動産がシステミックな信用イベントの引き金となる可能性が最も高いとの回答が40%余りに上った。1月は25%に満たなかった。

現時点では、商業用不動産の中でもオフィスの苦境が最も鮮明となっている。MSCIリアル・アセッツによれば、2024年に満期を迎える商業用不動産ローンの20%以上がオフィスビルを担保としており、所有者は他の資産よりもローン延長の資格を得るのが難しい可能性があるという。

前出のマクナマラ氏は「今年1月の段階で、市場は今年6-7回の米利下げを織り込み、リセッション(景気後退)が在宅勤務の流れを反転させるだろうとの期待を抱いていた」と指摘。「残念ながら、そのいずれも空想だった」と述べた。

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原題:Short Sellers Line Up to Bet on US Commercial Property Pain (1)(抜粋)

--取材協力:Sonali Basak.

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最終更新:3/22(金) 1:53

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