7&iHD、イトーヨーカ堂含むスーパー事業のIPOへ検討開始

4/10 14:58 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): セブン&アイ・ホールディングス(7&iHD)は10日、子会社のイトーヨーカ堂を中心とするスーパー事業の新規株式公開(IPO)実現に向けた検討を開始すると発表した。一方で今後の成長の柱と位置付ける北米など海外のコンビニエンスストア事業への投資に注力することでグループ資本効率の改善に取り組むとしている。

発表資料によると、スーパーストア事業(SST)では抜本的変革の先にある持続的成長のための有力な選択肢の一つとして、現実的に最速のタイミングでのIPO実現に向けた検討を開始。7&iHDによる同事業の一部持ち分の継続保持やコンビニ事業との間の食品開発領域における協働体制の維持が前提になるという。

同社はまた、コンビニ事業での積極的な戦略投資についても公表。成長余地が大きい北米市場での成長加速と収益性・資本効率の改善やグローバルでの事業の一体運営を実現するため、リーダーシップやマネジメントの体制の統合に取り組んでいくとした。

7&iHDは昨年アクティビスト(物言う株主)の米バリューアクト・キャピタル・マネジメントから、イトーヨーカ堂の売却を求められるなど、スーパー事業に対する外圧が強まっていた。そうした中、独立社外取締役のみで構成される戦略委員会を設立。戦略委から提出された提言を受け、取締役会が企業価値や株主価値の最大化に向けた具体的な行動計画についての検討を進めていた。

井阪隆一社長は決算会見で、少子高齢化が進む国内市場ではエリアや商品の集中と選択をしないと地盤沈下が進んで成長できなくなるとの危機感があり、「今回大変厳しい抜本的改革に踏み切った」とコメント。再成長するために、どうすればいいのかを考える必要があると述べた。

7&iHDによる株式上場などの方針については9日以降に共同通信や日本経済新聞などが報道していた。10日の東京市場で同社の株価は4営業日続伸で取引を開始し、その後は一時前日比1.9%安の2138円まで値を下げた。

日経が午後に7&iHDがスーパー事業の株式の一部売却で検討に入ることを取締役会で決議し、早いタイミングでのIPOの検討に入る方針と報じると株価は再び上昇に転じ、一時2.1%高まで上昇する場面もあるなど乱高下した。株式の一部売却検討の報道について井阪社長は会見で、「事実はない」と否定した。

イトーヨーカ堂は7&iHDの創業者である伊藤雅俊氏(故人)の叔父が1920年に開業した「羊華堂洋品店」を前身とする祖業だが、アクティビストからの圧力の中で7&iHDは店舗数の縮小やアパレルからの撤退などの対応を進めてきた。

7&iHDはここ数年で百貨店子会社のそごう・西武も米投資ファンドへ売却した一方、米子会社を通じて米コンビニ併設設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」を210億ドル(発表時のレートで約2兆2000億円)で買収するなど海外事業の強化を進めていた。

岩井コスモ証券の菅原拓アナリストは電話取材で、「国内外のコンビニ注力の体制が整うため、いい方向に向かうのではないか」とコメント。ただ会社は従前、食を中心としたスーパー事業とコンビニ事業の国内シナジーについて言及しており、その戦略のまま進むのか、変わるのかについて注目しているとした。

7&iHDは10日、今期(2025年2月期)の営業利益について前の期比2%増の5450億円を見込むと発表した。規模の大きい海外コンビニ事業の伸びがけん引するかたちだ。SSTも大幅な増益を見込むが、事業規模がコンビニよりはるかに小さい上に利益率は1.3%程度にとどまり、業績に与える影響は限定的だ。

株主還元方針については、従来公表している総還元性向50%以上とする目標に加えて持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を導入するなどの方針を示した。今期の年間配当予想は40円で、株式分割の影響を踏まえると前期比で2円40銭の増配となる計算だ。

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最終更新:4/10(水) 19:20

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