東村アキコ「年を重ねると盆暮れ正月、クリスマスなども1人では“間”がもたなくなる」、40代女性の切実

3/23 10:11 配信

東洋経済オンライン

 結婚相談所の経営者として婚活現場の第一線に立つ恋愛・婚活アドバイザーの植草美幸氏と、人気漫画家として男女の心理を描いてきた東村アキコ氏。東村氏の周囲では、20代、30代と独身を謳歌した男女が、40代を前に次々に「結婚したい」と言い始めているという。なぜそのような現象が起きているのか。2人が現代の結婚観、恋愛観をあぶりだす。

■パートナーはいないけど「結婚します」と宣言

 東村アキコ(以下、東村):私は職業柄、知り合いが多いんですが、東京に出てきて約20年、結婚式に呼ばれたことがものすごく少ないんです。私自身は28歳で結婚して出産。その後、離婚して子育てに追われていました。

 だから、30代は、仕事をバリバリやって趣味に時間とお金を使って楽しそうにしている独身の人たちを見て「さすが東京、さすが現代社会」と思っていました。ところが、30代後半くらいからその人たちが「結婚したい」と言い出した。

 年賀状には「今年は結婚します」と、パートナーがいないのに書いてくるんです。「宣言しないと結婚できないから」と。さらに「東村さんは顔が広いですよね。誰か紹介して」と言う。そういうことがあって植草先生のYouTubeやご本を拝見するようになり、「救世主はこの人しかいない!」と大ファンになりました。

 植草美幸(以下、植草):ありがとうございます。実際、30代後半で結婚相談所に駆け込んでくる人たちは、それまで結婚を考えてなかった、もしくは「いずれ結婚できる」と思い込んでいた人たちが多いですね。

 東村:若いころは仕事に打ち込んで、恋愛もそれなりにしたけど、結婚は後回し。それで40近くになって「お金もできたし結婚しよう」と思うけれども、なかなか難しい。

 植草:2回目だったらともかく、初婚は厳しいですね。

 東村:だからその人たちには酷だけど「若いときに仕事に打ち込んできたから今の地位があるのはわかるけれども、あのときにもうひとがんばり時間を作って恋人を作っていたら、その子と結婚できてたんだよ」と言っています。若い子に対しては「仕事だけじゃダメ。プライベートもがんばらないと」とアドバイスしています。

■30代になると恋愛がらみの声がかからなくなる

 植草:おっしゃる通りですね。仕事と恋愛、どちらかに偏るのではなく、両方バランスよくがんばってほしい。20代はまだ恋愛できても、30代になるとピタッと声がかからなくなりますから。

 東村:私の周りもそうですね。私も20代まではたまに浮き足立ったゾーンに足を踏み入れていたので、恋愛が生まれるような感覚はわかるけど、30代はそういうところに行かなくなりますね。

 植草:ノリが軽い人たち同士なら、バーなどで知り合うこともあるかもしれないけど、たいていの30代は理性が発達して声がかけづらい。「30の壁」です。そうなると自力で結婚相手を見つけるのは難しい。マッチングアプリは相手を見極める力やコミュニケーション力が必要なので、若いときからデートをする機会が少なく、男女の触れ合いに消極的な人にはハードルが高い。

 東村:今の若い男女は、男は男でつるむし、女も女同士で遊ぶことが好きですよね。女子会に男の子を連れてきたらシラケるでしょう。私の時代は、そもそも「女子会」という言葉がありませんでした。

 植草:今の若い人には欲と情熱、この2つが欠けているように思います。スマホがあればなんでも買える時代ですから、わざわざ外に出て自分で探しに行かないと何も手に入れられない時代とは違う。

 しかも、コロナ禍でレジャーが家メインに変わったじゃないですか。バブル時代は、仕事が終わったらバーに行ったりドライブしたりしていたけど、今はいち早く家に帰って、ウーバーイーツしてNetflixでドラマを見るほうが気楽ということになった。だから出会いがない。

■「盆暮れ正月」1人では間がもたなくなる

 東村:これからもどんどん家が中心の生活になっていくと思います。そうなるとパートナーや子どもがいないと間がもたないんですよね。緊急事態宣言のとき、私は息子と一緒にNetflixを見まくって楽しく過ごしましたが、ずっと1人だったらキツかったかも。

 コロナ禍に限らず、年を重ねると盆暮れ正月、クリスマスなども1人では“間”がもたなくなる。若いときはハワイだ韓国だと行きまくっていても、だんだん飽きてくるし、疲れるし、周りが結婚して子どもができて一緒に行ってくれなくなって、間がもたない。

 植草:そういうとき「私はなんで結婚していないんだろう、違う生き方もあったんじゃないか」と冷静に考えて、婚活を始めるわけです。

 東村:先日、文化人類学者の船曳建夫先生と対談しました。船曳先生によれば、結婚する人が減ったのは、衛生観念が上がって女が男に過剰な清潔感を求めるようになったことが一因としてあるそうです。だから「男も脱毛するといい」とおっしゃってました。植草先生も婚活のときに男性会員に脱毛を勧めていらっしゃいますよね。さすがです。

 植草:今の時代、20代、30代はメンズ脱毛がもう普通になっているんです。だからもう少し上の世代の男性たちももっと美意識を高めてくれれば、結婚したいと思う女性も増えるでしょう。女性はアイドルや韓ドラでバーチャルな男性を見て、男性はみんなツルツルしていると思っているから。

 東村:時代は変わりましたね。

 植草:昭和の時代は、女性はクリスマスケーキに例えられて、「24までが売り時、25を過ぎたら売れ残り」と言われていました。女性が男性を選ぶ時代ではなかった。ところが今は女性も経済力があるので、女性も男性を選ぶ時代。男性は相当がんばらないとダメですよね。特に、若い女性と結婚したい40代、50代の婚活男性は、ライバルは20代、30代の男性ですから、その世代を真似したほうがいい。

■価値観が逆戻りすることはない

 東村:価値観は一方向に進んでいくので、昔の価値観に戻ることは絶対にないそうです。40代、50代の男たちが「最近の若い男のメイクブームはおかしい。ブームが終われば“まともな男”が出てくるだろう」と言っているのを耳にしましたが、理論上は戻らない。だからある程度は乗っかっていかないと。

 植草:男性が美しさを求められる一方で、今の女性はある程度の経済力が求められます。三十数年、ずっと年収は上がらないのに物価は上がっているので、当然ながら妻も働き続けないと昭和のような生活はできません。だから男性と女性、対等ですよね。

 東村:かつて結婚は男の傘の下に入るシステムだったものが、今は平等にギブアンドテイクするパートナーシップの要素が強くなってきているんですね。

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最終更新:3/25(月) 11:38

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