米利下げの確信得るまで強気の賭け手控え-痛手続きの債券トレーダー

4/15 12:28 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 底堅い経済データの発表で再び痛手を負った米国債トレーダーは、大口の強気の賭けを新たに行うのに先立ち、米金融当局による利下げが差し迫っているとの明確で決定的な証拠を目にしたいと望んでいる。

10日に発表された3月の米消費者物価指数(CPI)のうち、変動の激しい食品とエネルギーを除くコア指数は3カ月連続で予想を上回る伸びとなり、米国債利回りは先週、年初来の高水準に急上昇した。

こうしたショックに投資家は慎重姿勢を強め、米国債先物のショートポジションを積み上げた。最近の米長期債入札の需要低調も弱気ムードをあらためて裏付けた。

ナットアライアンス・セキュリティーズの国際債券責任者、アンドルー・ブレナー氏は「米国債市場を今支配しているのはショートだ」と指摘した上で、「金利を引き下げなければならないとの見方を支えるようなデータが必要だ」と述べた。

12日には、中東情勢緊迫化を受けた安全資産への逃避の動きを背景に米国債相場の下落に歯止めがかかり、利回りは低下した。イランが13日、イスラエルに前例のない攻撃を行ったことで不安が強まり、事態がエスカレートすれば米国債がさらに買われる可能性がある。

ただ、現在の経済情勢の下では、金利がより長くより高い水準で推移し、債券相場を圧迫する方向にあり、状況が変化するとの説得力ある証拠がない限り、流れに逆らおうとする投資家はほとんどいないと見受けられる。

トレーダーは年初時点で最大6回、計1.5ポイント相当の年内利下げの可能性を織り込んでいたものの、現時点では利下げ幅が計0.5ポイントに達するかどうかも懐疑的だ。ウォール街のエコノミストの大多数も利下げ見通しを後退させ、利回りが昨年10月のように5%を再び突破する可能性を含め、不穏なシナリオが想定されつつある。

米利下げ見通しの再調整は債券相場に大きく響いている。ブルームバーグの指数によれば、先週の米国債相場は約0.6%下げ、年初来では約2.6%安となっている。昨年の上げ幅4.1%の半分余りを消したことになる。

米利下げ、年内は12月の1回のみ-ドイツ銀とBofAが予想大幅修正

12日の相場上昇にもかかわらず、10年債利回りは4.52%で終了した。4.5%の水準で予想されていた買いが入らなかったか、買いが入っても一斉の売り圧力に対抗するには少なくとも十分に力強くなかったと考えられる。

マッコーリー・フューチャーズUSAの世界通貨・金利ストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏は「ディスインフレの流れが失速し、3カ月連続で2%の物価目標を大きく上回り、インフレ抑制の『最後の1マイル』は達成が難しい可能性にトレーダーは慣れつつある」と説明。現状を踏まえると、10年債利回りが4.75%に上昇する事態は「それほど無理のある想定ではないと考えられる」と話した。

ボストン連銀のコリンズ総裁は12日、金融緩和の開始に必要な確信を得るには、以前考えていたよりも時間がかかるかもしれないとする見方をあらためて示した。11日にはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、ごく近い将来に政策を調整する明白な必要性はないと語っていた。

15日には3月の米小売売上高が発表され個人消費の動向が明らかになるほか、16日には同月の住宅着工件数の発表があり、住宅ローン金利が引き続き高水準にある状況で住宅市場の現状が示される。

中立金利

10日に公表された3月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合議事要旨からは、インフレ率が2%の目標に向けた確固たる道筋にあるとのさらなる証拠が得られるまで、利下げに消極的な当局者の姿勢が浮き彫りとなった。

一方、昨年7月までの積極的な利上げキャンペーンにもかかわらず、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局の政策が労働市場の需給緩和のために十分抑制的かどうか疑問視する声が高まっている。

トレーダーの多くは現在、景気の加速にも減速にもつながらない中立金利について、新型コロナウイルス禍以前よりも一段と高い水準にあると推計している。

デリバティブ(金融派生商品)トレーダーは主要政策金利のフェデラルファンド(FF)金利に関し、向こう3年程度のうちに4%をわずかに下回る水準で推移する状況を想定。これは金融当局者がFF金利の長期見通しとしている2.6%(中央値)を大幅に上回る。

ボストン連銀のコリンズ総裁は12日のインタビューで、金利が長期的に以前よりも高くなっている「可能性がある」と述べるとともに、系統立てて解明するためチームを組んでこの問題に取り組んでいるとし、「重要な疑問点であり重点的に対応する」と語った。

なお、パウエル議長をはじめとする当局者は、政治的に偏っていると受け止められぬよう、11月の米大統領選の少し前に少なくとも1回は利下げしたいと圧力を感じているのではないかと、ナットアライアンスのブレナー氏はみる。しかし、力強い経済データの発表が続いて状況は複雑化しており、「パウエル議長は緩和を望み、その論拠を探しているが、見つけられずにいる」と解説した。

市場関係者の中には既視感を指摘する声もある。DWSインベストメント・マネジメント・アメリカズの債券責任者、ジョージ・カトランボーン氏は「底堅いデータの発表が続く限り、米金融当局の政策金利の道筋についてさらに疑問が生じるだろう」とし、「リセッションも『着陸』もなしで現金保有という、2023年に戻ったように多少感じられる」とコメントした。

原題:Weary Bond Traders Adopt Show-Me Mode to Avoid More Losses (1)(抜粋)

--取材協力:Edward Bolingbroke.

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/15(月) 12:28

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