8億円貯めたサラリーマン投資家が、4235万円にのぼる「絶望的な誤発注」から得た“2つの教訓”

4/16 8:32 配信

東洋経済オンライン

「消費は完全な悪、無料こそ正義」。そんな信条の下、クーポンや無料サンプルをフル活用する「コジ活」で得た資金を運用してきたサラリーマン投資家の御発注氏ですが、リーマン・ショックを乗り越えた直後に、なんと4000万円を超える誤発注をしてしまったことがあるそうです。
足かけ20年で約8億円もの資産を築き上げた御発注氏が、自らのミスで招いた絶望的な誤発注から得た教訓について、同氏の著書『年間配当2000万円!  超節約と優待株で8億円を貯めた御発注の「コジ活」投資法』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

■節約術の一環として手を染めていた「信用取引」

 ライブドア・ショックとリーマン・ショックは、いわば、外部環境に由来する「未知のリスク」が現実化した事態でした。自分ではどうしようもない変化への対処を余儀なくされた格好です。

 ただ、それらの対処が落ち着いた忘れもしない2010年7月12日。これはその真逆、自分で防げたはずの「未知のリスク」が現実のものとなった出来事でした。

 この日―― 零時を回った夜、私は「三光マーケティングフーズ」という銘柄に5株、成り行きでの買い注文を出しました。これは信用買いでした。

 株の売買は、自分が持っている資産で直に行うこともできますが、証券会社からお金や株式を借りることで「信用買い」「信用売り」を行うこともできます。

 信用買いとは、証券会社からお金を借りて株を購入する方法で、少ない資産で大きな金額の取引が可能です(レバレッジ効果)。

 株価が上昇すれば、投資金額以上の利益を得られるため、その売却益から借金を返済することで、大きく儲けることができます。ただし、株価が下落すると損失も大きくなるため、そこはリスクとなります。

 「信用売り」とは、証券会社から株を借り、それを売った後で買い戻し、その株を証券会社に返す、という方法です。

 「株価が下落する」という局面で借りた株を売り、株価が下がった後で買い戻せば、その差額が利益となるわけです。ただし、予想に反して株価が上昇すると、値上がりした株を買い戻す必要があるため、損失が発生するというリスクがあります。

 どちらの場合も、証拠金(担保)を預けて取引を行い、借りた資金や株式には返済期限があります(最長で6カ月)。もし損失が発生した場合、証券会社への借金が増えた状態になるため、証拠金(担保)を追加で投じなければなりません。これが「追証」です。

 株価の値上がり/値下がりを読み間違えると、大きな追証が発生することがあり、取引には注意が必要です。

 当時、私はそんな信用取引に手を染めていました。といっても、私の場合、レバレッジ効果による大きな儲けを狙ってのことではありません。信用買いでは、買い注文をした後で、その株を買い取る(現引き)ことにすると、取引の手数料が安く済むのです。

 あくまでの節約術(コジ活)の一環として、信用取引を利用していたのでした。

■「5株」のはずが「500株」の買いだった! 

 こうして私は、三光マーケティングフーズの株に5株、成り行きで「買い」の注文をしたわけです。なぜ5株かといえば、それが優待を最も多くもらえる株数だったから。あくまで慎ましい動機だったわけですが、翌朝になると事態は急変を迎えていました。

 夜に買い注文をしたはずの5株が、朝、証券口座にログインしてチェックしても、まだ買えていなかったのです。その時は、さして気にも留めずやり過ごしたのですが、出勤して10時頃にもう1度チェックすると、株価が前日の終値7万7200円から、8万4700円まで一気に値上がりしていました。+9.7%の上昇です。

 最初は値上がりに喜んでいたのですが、「おかしい」と口座管理画面を見た私は血の気が引きました。見慣れない画面、平たく言えば「このままだと追証が発生する可能性があります」という記載が目立つように表示されていたのです。

 状況が呑み込めず、画面のバグかと思う私。しかし、信用評価損益はマイナス274万3214円(たしか)と表示されています。あまりに見慣れない表示、金額に冷や汗が出ました。そこで自分が購入した株数を確認すると、なんと「500株」。5株の信用買いをしたつもりが、100倍もの成り行き注文を出していたのです。

 通常の売買であれば、「残高が足りませんでした」で取引ができずに終わるところですが、これは信用買いです。証券会社に借金をして500株を買ったことになるわけです。

 その額、実に4235万円。当時の運用額を大きく上回る、信用全力誤発注でした。わかってとったリスクが顕在化したというなら、まだ納得できますが、節約目的で行った信用取引でこの状況は到底呑めるものではありません。

 やってしまった―― 。

 状況がわかってくると、次第に怒りがこみ上げました。会社のトイレに駆け込み、顔を2発、3発と思いきり殴りました。このままではマズい。とにかく売らなければという思いでなんとか損失を200万円程度に抑えることができました。

■とにかく「二次被害」を最小限にする

 私は「やらかし」を理解した時、会社のトイレで自分の顔を思いきり殴りました。単純にとんでもないミスをした自分自身に対して腹立たしい思いからの行為でしたが、結果的には、2つの意味がある大事な行動だったと思います。

 1つ目は、自分のミスで大きな損失を出してしまったという大きなショックを、それを上回る物理的な痛みで上書きすること。

 コントロールできない痛みを覆い隠すには、コントロールできるさらなる痛みを自ら与えること。これは麻酔なしで虫歯治療をしたときに学んだことでもありました。

 こうして動揺する自分を無理矢理コントロール下に置き、完全ではないながら、冷静さを取り戻すことができたのです。

 2つ目は、失敗について、「ああすればよかった」とか「こうしておけばよかった」という後悔や反省に心を奪われるのではなく、「今は何をするべきか」「次にどうすべきか」を考え行動に移すために、心を切り替えるきっかけになったこと。

 ミスやトラブルの場面では、とにかく事態を緩和するための行動が第一です。後悔や反省、IRへの苦情の電話などは、落ち着いたときにいくらでも行えるわけで、決して「今」ではありません。

 このように2つの意味で、自分自身の心を制御することができたおかげで、なんとか被害を最小限に抑え、次の投資につなげることができたのだと思います。

■一番よくない行動が「狼狽売り」

 ただ、私は別に、皆さんにも投資でミスをしたら自分の顔を殴れ、と言っているのではありません。

 何か問題が発生した時に大事なのは、まず冷静になること。それを心に留めておいてほしいと思います。もちろん、その一手として私のようにすることを止めるものではありませんが。

 思えばリーマン・ショックの急落で元本割れし、冷静さを失った時も、事態が好転したのは「自分が信じられる方法を忠実に繰り返そう」と思い直すことができてからだったような気がします。

 「狼狽売り」といった言葉があるように、株価が急落すると、多くの投資家は慌てて売りに走ってしまうものですが、そういう事態に直面したとき、一番よくない行動がこれです。

 まずは冷静に自分の資産、そして心は持ちこたえられるかを確認するべきだと思います。

 その上で、売買をするのかしないのか、するとしたらどのような売買をするのか。銀行口座から資金を移して新規に買うのか、それとも急落銘柄を売って値持ちのいい銘柄に乗り換えるのか、あるいはその逆の取引をするのかなど、様々な対応が考えられます。

 もちろん、そのようなシミュレーションを事前に行っておくことは、とても役に立ちます。地震の避難訓練と同じです。

 余談ですが、三光マーケティングフーズは、あらかた損切りした後にIRに電話して、売買単位は100株の会社が多いから変更してほしいという苦情の電話と、ついでに株の残りを持っていても問題ないか確認するため、業績について詳しく聞きました。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/16(水) 8:32

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