「今の日本で最大の課題とされる『地方創生』にこそ日本の未来はかかっている」
2022年度の「地方創生テレワークアワード(地方創生担当大臣賞)」と「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」をダブル受賞した株式会社イマクリエ代表の鈴木信吾氏はそう語る。
地方創生をビジネスの使命として全国を駆け回り、約1万人の関係者と接した鈴木氏が、その経験をフルに生かして、このたび『日本一わかりやすい地方創生の教科書 ――全く新しい45の新手法&新常識』を上梓した。
各自治体からは、その地域ならではの「地に足のついた提案」で好評を博している鈴木氏から見た「外国人旅行者に『日本に行きたい』と思わせる3特徴」について解説する。
■「インバウンドで地方創生」素直にうなずけない自治体
コロナが鎮静化してから、日本国内には海外からやってくるインバウンドの観光客があふれるようになりました。
コロナ禍での行動制限から解放されたことだけでなく、折からの円安ドル高、日本国内のデフレ基調により、外国人にとって日本は何を買っても食べてもどこへ出かけても「安い、うまい、美しい」の三拍子がそろった国となっています。
しかし、「インバウンドで地方創生を」と語っても、素直にうなずく地方自治体の関係者は少ないかもしれません。
「うちのまちは観光資源がないし、名所旧跡もないから、インバウンドを誘致するのは不可能だ。インバウンドによる地方創生はありえない」多くの関係者が、そう考えていると思います。
しかし、訪日している外国人旅行者を調べてみると、おもに「3つの特徴」があることがわかってきました。
では、その「3つの特徴」とは、どのようなことでしょうか。
ひとつめは「外国人旅行者のニーズは『日本のどこにでもあるもの』」ということです。
■「有名観光地」だけに行きたがっているわけではない
【1】ニーズは「日本のどこにでもあるもの」
まずは、訪日外国人旅行者のニーズを検証してみましょう。
「訪日旅行で体験したいこと、体験したこと」のアンケートでは、1位から3位に「自然や風景の見物」「桜の観賞」「伝統的日本料理」があがっています。
この3つは「体験したい項目」でも「体験した項目」でも高得点をあげています。
それより下位には「温泉への入浴」「世界遺産の見物」「繁華街の街歩き」「遊園地やテーマパーク」といったコンテンツがあがっているのですが、トップ3には「日本の田舎ならどこでもあるもの」があがっていることに注目してください。
「うちの自治体には温泉も、世界遺産も、繁華街(銀座、秋葉原など)もない。遊園地もテーマパークもない。だからインバウンドは期待できない」というのが従来の地方自治体の嘆きでした。
けれど、このデータを見れば「うちの自治体にも自然ならある」「桜がある」「伝統料理がある」というように、思考をシフトすることができます。
2つめは「1週間以上の『長期滞在』をする旅行者が多い」ということです。
■「長期滞在」になるほど、「日本の地方」が人気
【2】1週間以上の「長期滞在」をする
「滞在日数」を調べてみると、次のグラフのようになります。
1位は「1週間未満」が約5割ですが、2位は「1週間以上2週間未満」が38%、3位は「2週間以上4週間未満」が7%です。
つまり、2位と3位をあわせると「1週間以上の滞在者」が45%です。
国内旅行者に比べると、圧倒的に「長期滞在者が多い」ということがわかります。
【3】「富裕層」になるほど、長期滞在を好む
また、「訪日外国人旅行者の地方訪問意欲」を見ても、次のように富裕層ほど意欲が高いことがわかります。
これは、地方においても一定の消費行動が期待されることを示しています。
この「3つの特徴」に基づいて、さらに「外国人旅行者の長期滞在」につなげるためには、SNSを使った次の「2つのステップ」が重要になってきます。
【ステップ①】
そこにしかない地方ならではの「地域資源(自然、桜、伝統料理など)」や「アクティビティ」の情報をSNSなどで発信する。
【ステップ②】
長期滞在につなげるための情報発信をする。
→ゲストハウス、キャンプ場、古民家民宿、農家民宿など
外国人の日本の地方への訪問意欲は非常に高く、「観光地がなくても日本らしい魅力的なコンテンツ」さえあれば、インバウンド需要が大いに見込めるでしょう。
■観光地に頼らなくても「インバウンド」「地方創生」は可能
とくに名所旧跡はなくてもいい。東京や京都、富士山、北海道のような有名観光地でなくてもいい。温泉すらなくてもいい。
その地域の「独自性」「歴史性」「個性」に立脚したローカルコンテンツを発掘して、SNSなどを駆使して、そこを徹底的にPRしていけばいいのです。
「そこにしかない」魅力を発掘できたら、そこに海外の視点を合わせることで、地域は新たな魅力をまとうことになります。
「日本全国どこにでも地方創生のチャンスがある」のです。観光地に頼らなくても「地方創生」は可能です。
「何もない」と思っている場所でも、グローバルな視点で見れば、新たな発見やそこにしかない魅力が眠っているかもしれません。
東洋経済オンライン
最終更新:4/20(土) 7:02
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