33年ぶり大幅賃上げ、消費刺激で日本の内需株や中小型株買いに期待感

3/19 8:56 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 2024年の春闘の賃上げ率が5%超と33年ぶりの高水準となったことを受け、日本株市場ではこれまで出遅れていた内需株や中小型株に買いのチャンスが訪れるとの期待感が出てきている。

連合が15日発表した春闘の第1回回答集計によると、平均賃上げ率は5.28%と前年同時期の3.8%を大きく上回ったほか、ブルームバーグが3月初めに集計したエコノミスト予想の中央値(4.1%)も大きくしのいだ。中小企業も4.42%と、1992年以来の高水準だ。

年初からの日本株の上昇は大型株や外需株に物色対象が偏り、内需への依存度が高い食料品や陸運、空運株などは年初来上昇率が2-5%台と、東証株価指数(TOPIX)の15%高を大幅にアンダーパフォーム。同様に、内需系企業が多い中小型株の値動きを示すTOPIXスモール指数も9.5%高にとどまり、出遅れ感が強い。

春闘の集計結果を受け、市場では日本銀行が19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除に踏み切るとの見方が強まっている一方、予想以上の賃上げがここのところ弱さが目立っていた国内消費に恩恵をもたらすとの見方が浮上している。

UBS証券の守屋のぞみ株式ストラテジストは、現時点で投資家はインフレと所得増加の好循環シナリオをメインストーリーとして織り込んでいないと指摘。「賃上げは想定以上に進んできており、実質賃金がプラスになる確度は高まってきている」として、賃金の力強い上昇が確認できれば、「消費関連株にアップサイドがある」とみている。

米国経済の好調ぶりや生成人工知能(AI)ブーム、為替市場での円安進行のメリットをグローバル企業が多い大型株が享受する半面、円安のダメージを一番受けてきたのが内需株だ。輸入コストが上がる中、国内賃金の上昇が物価の上昇に追いつかず、実質賃金はほぼ2年にわたり前年割れが続く。

国内総生産(GDP)における実質民間最終消費支出も昨年10-12月期まで3四半期連続のマイナス。しかし、春闘での大幅な賃上げを受け、来年度からは実質賃金が明確に上向き、景況感も改善していく可能性がある。

一方、本当に消費が持ち直すのか、もう少し様子を見たいとの声が依然根強いのも事実だ。15-16年も円高が一服し、実質賃金は5年ぶりにプラス圏で定着したが、消費の回復は大幅に遅れた。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは「過去にも消費の回復が期待されながら、だめだったこともある。国内の人口が減る中、数字で消費の回復が確認できるまでは投資家も動きにくい」と話す。

中小型株に対しては、バリュエーション面から見た投資妙味を指摘する声がある。足元のTOPIXスモール指数の株価収益率(PER)は16.1倍と、時価総額と流動性上位の30社で構成されるTOPIXコア30指数の17倍を下回っている。歴史的に見て小型株のPERが大型よりも高いことが多く、過去20年間の約8割の期間でスモールがコア30を上回っていた。

アセットマネジメントOneの関口智信ファンドマネージャーは「TOPIXスモール指数は大型株に比べPERが非常に低く、割安感がある」と指摘し、「今年は小型株の方が大型株よりも上値余地があると考えている」と言う。

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最終更新:3/19(火) 8:56

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