(文 吉田 みく) ペットは家族と同様に、また時には家族以上に大切な存在だ。
そんな大切な“我が子”を育てる飼い主が、自身のペットの成長を記録をSNSや動画で配信し、ペット仲間などとシェアしたいと思うのは当然の心理だ。
現にSNSや動画に映るペットたちの無邪気な姿に癒されるユーザーも多い。なかには、寝起きの様子がかわいいと、飼い主が寝込みに“いたずら”をして、起こしたり、飼い主と同じコスプレに身を包んだペットたちも多くみられる。
私たちユーザーから見れば、これらに「いいね」を与えるにはたやすい。しかし、その“かわいがり”も、度を越えてしまえば、ペットにとってはストレスになる。
かわいさのあまり、愛犬と常に行動をともにしたり、人間と同じような価値観で洋服をとっかえひっかえ着せたりするのも、逆効果になる場合もある。また、「愛犬を自由にさせたい」とまったく躾をしないのも“愛情の虐待”となるようだ。
最悪の場合は、飼い主の過干渉でストレスがたまり早死にしてしまうケースもあり、過保護にも個人差の部分が大きいため、その線引きはなかなか難しい。
マリアさん(50歳・仮名)は、仕事で知り合った15歳年上のバツイチの夫とつまらない生活に嫌気がさし、結婚当初からセカンドパートナー探しに躍起になっていた。
マリアさんのほうからSNSで積極的に誘い、元彼や男友達はその場では話は盛り上がるが、いざ約束を取り付けようとすると尻込みされる日々に、「自分はもう女としての需要がない」と意気消沈。もともとモテていただけに、プライドも傷ついたという。
アプリでは年下とマッチングするも、「年齢的にママ活されそう」と一切の連絡を絶った。そんなマリアさんに“生活の張り”をもたらしてくれたのが、愛犬のトイプードル「Aくん」だった。
<【前編記事】50代人妻が大誤算…! “モテていた過去”を引きずり「セカンドパートナー」作りで陥った「男漁りの沼」>に引き続き、愛犬に対するマリアさんの愛情を報じるとともに、この愛情が一体どこからやってくるのかを改めて考えてみたい。
愛犬に費やす月10万円も惜しくない
「ワン友さんたちは良い人が多いのですが、ちょっとした場面で自慢っぽさを感じる事も多いです。『私、有名トリミングサロンに行ってるの』『この前、ペット歓迎のお宿に泊まってね』などと、お金でマウントを匂わせてくるような発言が気になってしまって……。
気のせいかもしれませんが、そういうことを聞くと、我が子だけノーブランドだったり、いつも同じお洋服だと可哀想じゃないですか。つい張り合ってしまいます」
共働きで愛犬にお金を十分に注げる環境も相まって、毎日のようにAくんのための洋服をネットで探しては注文しているそうだ。オーダー品になると1万円を軽く超えることも珍しくないという。
買った洋服を着たAくんをSNSに投稿し、その後数回使ったらあと使用せずに、”タンスの肥やしになっている。マリアさん自身も買いすぎていることは分かっているが、ほかの人と比べて、惨めな想いをしたくない気持ちから見栄を張ってしまうという。
1回につき2万円ほどかかるトリミングサロンもエステやマッサージを追加して毎回4万円近くの支払いだ。それでも愛犬が喜ぶならと出費を惜しまず、その様子もSNSに投稿し、おすすめのサロンとして紹介。「Aくんセレブですね!」のコメントが一番嬉しいと話していた。
月によって変動するものの、毎月10万円以上は愛犬に使っていると話すマリアさん。洋服、トリミングサロンの他に、レストランでのお祝いや犬のしつけ教室にも通っている。
「月10万円は、都心部に住む愛犬家さんの中では妥当な方だと思います。どなたも沢山の愛情とお金をかけているんです。ハイブランドのペットグッズをお使いの方も珍しくありません。
私自身、お金に困ってはいないので周囲と肩を並べることができますが……どうしても飼い主の年齢だけは溝が埋まりません」
ペットも家族の一員なのに
マリアさんによると、交流のある飼い主さんは、20~40代と年下のが多く、愛犬と一緒に映るオシャレな飼い主フォトは「かなり映えて羨ましい」と話していた。
一時期それを真似た写真を投稿したことがあったが、「他の愛犬家たちには、ご本人にもかわいいなどといった好意的なコメントがよせられているのに、私の投稿では愛犬のことしか褒められなかったので辞めた」と恥ずかしそうに話していた。
『いぬのきもち』の犬図鑑によるとトイプードルは、見た目のかわいさはもちろん、抜け毛や体臭などもあまりなく利口で人懐こい性格に加えて、遊び好きのアクティブな一面もあるので、一緒にお出かけをしたい人にはうってつけの犬種といわれている。
マリアさんも出かける際は、必ずAくんを連れていき、ランチやディナーもペットOKなレストランをはじめて訪れる場所は事前に調べ、すでに行きつけのお店もあるものの、毎回同じ店だとメニューなどに飽きてしまうので、Aくんと一緒に出かけられる場所を色々と開拓するのが好きだそうだ。
「とある商業施設のレストラン情報にペット入店情報が記載されていなかったんです。問い合わせをしたら、店舗ごとでルールが違うのでと言われてしまい、結局、どの店舗だったらAくんも一緒に入れるかは分からずじまいでした。
近年は多様性の時代ですし、ペットを家族の一員として扱っているご家庭も増えてきているのに、なんで? と憤ってしまいました。
ほとんどのお店が、キッズメニューなどの子供向けの情報は充実しているのに、ペットの情報はなんの記載もなく分かりにくんです。
ペットも大事な家族の一員なのに蔑ろにされているように感じる私の心の声に共感してくれるきっと人がいると思い、そのことを長文で投稿をしたのですが、誰からも賛同のコメントは得られなくて、結局投稿は削除しました」
「Aくんと生きていかなければならない」
話を聞いているうちに、マリアさんから夫の話は一切なくなり、愛犬Aくんの話ばかりになっていった。15歳年上の夫に対する現在の想いについて聞いた。
「年齢が上なので仕方がないのですが、夫は私よりも先に亡くなってしまうじゃないですか。その後に新しい恋や結婚は現実的ではありません。私とAくんで生きていかなくてはいけないんです。
そのためにも、入店可能なレストラン情報やペットフレンドリーな場所かどうかは頭に入れておく必要があると思っています。最近は私とAくんだけで行動することも増えました。夫はタイミングがあえば程度ですね。特に感情はなく、同居人くらいかと」
気になる貯金について聞いたところ、「遺産を残す人もいないので貯金はしない主義です。仕事もしているのでお金に関する不安は特にありません」と話していた。
いまのところペットを増やす予定はないというマリアさん。ペットモデルのレッスンやオーディションが忙しく、Aくんだけで手一杯とのことだった。
マリアさんが話すように、ペットも家族の一員ではある。大切な存在として扱ってもらいたい気持ちは十分に分かる。しかし、所々から承認欲求を満たしたい想いも強く感じる場面もあった。今一度、自分にとってペットとはどんな存在なのかを見つめ直してほしい。
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つづく<「東大卒のエリート」を寝取り、略奪婚した“29歳の専業主婦”が、都内一等地の「高級マンション」に住んで、青ざめたワケ>でも承認欲求を満たすために、沼落ちした女性の実態を明かしています。
マネー現代
最終更新:3/28(木) 12:02
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