ヘルシーなだけじゃない! フレッシュネスバーガーが「3ポテト2チキン」を提供するワケ

5/2 10:11 配信

東洋経済オンライン

「このメニュー、そこまで有名ではないけど自分は好きだなあ」「定番や看板ではないかもしれないけど、好きな人は結構多いと思うんだよな……」――外食チェーンに足を運ぶと、そう思ってしまうメニューが少なからずあります。店側はどんな思いで開発し、提供しているのでしょうか。
人気外食チェーン店の凄さを「いぶし銀メニュー」から見る連載。今回はバーガーカフェチェーン・フレッシュネスバーガーの「フライドチキン(骨なし)」を取り上げます。

 飲食チェーンには「代名詞」「定番」というべきメニュー以外にも、知られざる企業努力・工夫を凝らされたものが数多く存在します。本連載では、そうした各チェーンで定番に隠れがちながらも、根強い人気のある“いぶし銀”のようなメニューを紹介していきます。

■「女性向けのヘルシーチェーン」だけでない顔も

 今回のテーマは、バーガーカフェチェーン・フレッシュネスバーガーで販売している「フライドチキン(骨なし、以下『フライドチキン』)」です。

 フレッシュネスバーガーといえば、その名の通り健康的なハンバーガーを提供している、女性向けのヘルシーなチェーンというイメージがあります。

 【画像】フレッシュネスバーガーの「フライドチキン」「チキンナゲット」…などの様子を見る(11枚)

 公式Webサイトのメニューを見ても「クラシックアボカドバーガー」や「ガーデンサラダバーガー」といった野菜を打ち出したものが目立ちますし、「クラシックバーガー」や「クラシックチーズバーガー」も、バンズから飛び出るレタスが印象的です。その他、2020年から100%植物由来の大豆パティを使用したハンバーガーを販売するなど、環境にも配慮した商品も展開しています。

 ここまで書くと「やっぱりフレッシュネスバーガーって、ファストフードの割に健康的なチェーンだよね」という印象で終わってしまいますが、その懐の深さをあなどってはいけません。意外や意外、サイドメニューには多くのフライメニューをそろえています。

 例えば、ポテトだけでも「北海道産フライドポテト」に「フレンチフライポテト」、さらにスタジアムやフードコートの店舗限定で販売している「ロングポテト」の3種類を提供。鶏肉×揚げ物メニューでは、今回のメインテーマであるフライドチキンに加えて「国産チキンナゲット(5個、以下『チキンナゲット』)」を販売しています。

 さらに、栃木の4店舗限定で見た目のインパクトに驚く「宇都宮野菜餃子バーガー」を販売していたり、長く愛されていた「ベーコンオムレツバーガー」やキャンペーンメニューではマンゴーを挟んだ「マンゴーバーガー」を提供したりと、単にお高くとまっているファストフードではないのが、フレッシュネスバーガーなのです。

■居心地の良い店内 コロナ禍を経てもイートインが多数派

 そんなフレッシュネスバーガーが提供しているフライドチキンは、どんな工夫が隠れているのでしょうか。実食します。

 お店に入ると、まず目に付くのが「バーガーカフェ」の「カフェ」の部分です。いわゆるファストフードらしくない、おしゃれな飲食スペースに、ガラス張りのキッチン。レジ前のスペースにはいくつものパンも並んでおり、食事だけでなくちょっとした軽食にもうってつけな印象を受けました。

 床は木材張り、天井も通りいっぺんのデザインとは一線を画しており、商品待ちスペースに椅子が置いてあるのもうれしいところ。フレッシュネスバーガーでは基本的に注文があってから商品を調理するため、待ち時間が発生しやすいことに配慮しているのでしょう。

 その他、世界各国の調味料も置いてあるなど、コロナ禍を経てテイクアウトがかなり浸透した今でも「店で食べたい」と思うような空間です。フレッシュネスバーガーを運営する、フレッシュネスの青木美華さん(マーケティング本部マーケティング部 広報担当)によると、もともとイートインに強く、コロナ禍ではテイクアウトやデリバリーが増えたものの、現在はイートインが6割、テイクアウトが3割、デリバリーが1割ほどとのこと。

■開けてビックリ、美しいハンバーガーが登場

 ――と書いておいて、今回は諸事情によりイートインではなく、テイクアウトでいただきます。まずは代表的なメニューであるクラシックチーズバーガーから。包み紙を開くと驚きました。メニューで見る姿と、あまり変わらないままハンバーガーが出てきたからです。

 飲食店の取材をしていると、ハンバーガーはバンズが湿気を吸ってつぶれたり、ソースが垂れていたり、具材がメニューより少なかったりしていて「うーん」と思うこともしばしば。そんな中、フレッシュネスバーガーはかなりメニューの写真に肉薄した状態で商品を提供していると感じました。

 食べ応えと味も抜群です。たっぷりのレタスと輪切りの玉ねぎ、さらにトマトが入っており、大きなパティに負けない野菜分を補給できました。

 お次は肝心のフライドチキン。表面の大きさは、成人男性の握りこぶしくらい、といったところでしょうか。一口噛むと、衣のサクっとした食感に続いてスパイスのいい風味が広がります。肉質はかなり柔らかく、味はしょっぱいというよりも甘めです。油切れもよく、衣の後味は引きずりません。おやつ感覚であっという間に食べてしまいました。

■メインターゲットは女性の一方で、最近は男性客も増加

 ここであらためて、フレッシュネスバーガーの紹介です。1号店がオープンしたのは1992年で、渋谷区・富ヶ谷にある最寄駅から徒歩15分の木造一戸建てでした。その後、1998年に50店舗、2000年に100店舗を達成し、2024年3月時点で150店舗超を展開しています。

 青木さんによると、フレッシュネスバーガーのメインターゲットは20代後半~40代の女性。キーワードは「ホームメイドとヘルシー」(青木さん)です。

 チェーン店としては比較的小規模な点を強みにして、効率性やコストなどの面で大規模チェーンでは逆に扱いにくいような国産食材を使ったり、店内での仕込みをウリにしたりと、独自の道を歩んでいます。

 ただ、最近は健康志向の男性も増えてきたことから、利用者の男女比は4対6ほどと、意外に大きな差はありません。時間帯別では、主力のランチタイムだけでなく、朝はホットドッグやコーヒーを提供し、アイドルタイムはスイーツ。

 さらに夕方以降はハッピーアワーの展開やおつまみメニューを販売するなど、それぞれに合わせた戦略を張っています。「『ハッピーアワー』といいつつ、午後4時から閉店までビールを290円で販売しており、この時間は男性客も多くいらっしゃいます」と青木さん。

■なぜ「3ポテト、2チキン体制」なのか

 複数種類のフライメニューを提供している理由の一つには、多彩なニーズに沿ったメニュー展開をしたいと考えたことがあったそうです。

 もともと、創業当時のフライメニューは北海道産フライドポテトのみ。その名の通り北海道産のじゃがいも「北海こがね」を使用しており、非常に思い入れの強い商品でしたが、ポテトと並んでハンバーガーと一緒に食べられることが多いチキンナゲットを、2008年にメニューへと追加。外側の衣には7種類のスパイスをミックスしており、中身は製造工程で「蒸し」を挟むことで、非常にフワフワな食感を実現している、こちらもいぶし銀のメニューです。

 その後、飲み物だけを利用している人や、小腹が空いたときに食べる商品として、サイドメニューを充実させる観点から2016年にフライドチキンを発売しました。

 フライドチキンの登場には、ハンバーガーのラインナップを広げる狙いもありました。というのも、同時期にフライドチキンを使った「クリスピーチキンバーガー」も発売しています。「当時は牛肉メインのラインナップだったため、鶏肉を使ったハンバーガーも作ろうと開発しました」と青木さんは話します。

 メニュー開発でポイントになったのが「鶏もも肉」を使うことでした。ジューシーさをウリにした商品を作りたいと考えたものの、もも肉は独特の臭みがあり、加工や店舗調理の再現性に難しさがあります。そこで、下味に白みそを使ったり、バジルやコリアンダーなど8種のスパイスを加えたりすることで、もも肉の短所を消し、ジューシーな商品に仕上げました。

 鶏肉の下味などは工場でしていますが、そこから生の鶏肉を店舗に配送し、調理用のバッター液は店内で作っています。注文が入ってからその場で揚げることで、サクサクかつジューシーな味を提供できているそうです。

 チキンナゲットは子どもの人気が高いメニューであることから、ファミリー層の購入が多く、フライドチキンはスナック感覚でドリンクと一緒に購入する女性客が多いとのことで、同じ鶏肉メニューでもうまく住み分けながら、多彩なニーズをすくいとれています。

 さらに2018年からは、野球場など一部店舗で「ロングポテト」を発売。2022年には、軽やかな食感でよりハンバーガーと合わせやすいフレンチフライポテトもメニューに追加。とはいえ、セットメニューのポテトで選べるのは北海道産フライドポテトのみと、同メニュ-に対するフレッシュネスバーガーの愛が垣間見えます。

■ハンバーガーの「顔」に並々ならぬ情熱

 取材の最後に、ちょっと気になったので、青木さんにハンバーガーがキレイに提供されて感動したことを伝えてみました。するとフレッシュネスバーガーでは、いかにメニュー写真を再現できているか、全店舗を対象にした「再現性チェック」を行っていると返事があり、驚きました。

 何でも、新商品を出す際、各店舗で責任者がオペレーションに沿って作った商品を写真で送ってもらい、ハンバーガーであれば、ソースの色の見せ方や具材を入れる位置などがメニューに近い状態か、商品開発担当者が自ら確認しているとのこと。これまで特に難しかったのは、2023年に期間限定発売した「夏野菜マリネのガーデンサラダバーガー」で「輪切りの野菜を挟んでいくオペレーションが積み木のようで、苦労しました」と青木さんは話します。

 他にも、デリバリー用の器材はバンズが過度に湿気を吸わないような通気性が良いものを作ったり、商品を発売する際は商品開発やマーケティング部署が手分けして店舗をまわってチェックをしたりと、美しい状態で商品を届けることに並々ならぬ情熱を注いでいるそうです。

 フレッシュネスだけでなくビューティーにも気を配る取り組みに驚かされました。

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最終更新:5/10(金) 14:46

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