日本電計:計測器需要で株価上昇も、同業他社比で割安感あり
日本電計は電子計測器・制御機器の専門商社で、国内外メーカーの計測器、FA機器、電子部品を幅広く扱っています。自動車・AI・防衛業界向け計測器需要拡大が追い風となり、10年間で当期純利益は2.3倍、株主資本は2.4倍となりました。時価総額は3.8倍に至ったものの、同業他社比ではまだ割安感があります。
76年前に秋葉原で創業し日本全国で技術サポート体制を構築した計測器商社
日本電計(9908 東京)(株価2,875円、時価総額326億円:9月4日終値)は電子計測器・制御機器の専門商社として、国内外メーカーの計測器、FA機器、電子部品を幅広く提供する企業です。
自動車、半導体、AI、研究開発など設備投資が拡大する分野の企業を主要顧客とし、技術サポート体制(メーカーではなく日本電計のような商社が主として担当)と多様なメーカーとのネットワークを強みに事業を展開しています。
近年はEV・自動運転向け評価装置、データセンター関連計測需要、防衛・宇宙分野の研究開発投資が追い風となり、売上と当期純利益は5期連続で増収増益となっています。
日本電計は1950年に東京・秋葉原で電子計測器の販売会社として創業し、戦後の産業復興期に計測器需要の拡大を背景に事業を拡大しました。1960~70年代には国内外メーカーとの取扱いを増やし、産業機器・電子部品へ領域を広げることで総合計測商社としての基盤を確立しています。
1980年代以降は自動車、半導体、研究開発向けの高度計測ニーズに対応し、技術サポート体制を強化しました。2000年代にはFA機器やIT関連計測の需要増を取り込み、海外メーカーとの連携も拡大しました。
<神田須田町の店舗に立つ創業者高田啓伸氏> 日本電計と競合度が高い企業としては、東テク(9960 東京)、第一実業(8059 東京)、ユニソルホールディングス(7128 東京)などがあります。
日本電計は電子計測器、FA機器、電子部品を扱う計測器商社で、研究機関・自動車・半導体向けの計測需要を広く取り込む「総合計測プラットフォーム型」といえます。東テクは空調・環境計測、ビル設備向け計測器に強く、環境計測・空調制御の領域で日本電計と最も重なります。
第一実業は産業機器、FA、プラント設備を扱う総合商社で、装置系の大型案件や自動車向け評価装置で競合しますが、装置比率が高く日本電計より重装備寄りです。ユニソルHDは計測器・制御機器の中堅商社で、事業構造が日本電計に近く、中堅企業向け計測器販売で競合しますが規模は小さいです。
総じて、日本電計は計測器中心、東テクは環境計測、第一実業は装置・FA、ユニソルHDは中堅計測商社という違いがあります。
地域的な観点で見ると、4社の強みは明確に異なります。日本電計は全国に営業拠点を持つ「全国型」で、東海・関東・九州など製造業集積地に強いです。
東テクは空調・環境計測が主力のため、首都圏・大阪・名古屋など「都市型」の案件が中心。第一実業はプラント・FA・装置系の大型案件を扱い、国内広域に加えアジアなど「海外展開」にも強いです。ユニソルHDは中堅計測器商社として西日本(大阪・兵庫・広島)に強く、「地方中堅製造業」との結びつきが深いです。
当期純利益の増加トレンドに合わせて株価も上昇
日本電計の当期純利益は増加トレンドにあります。これは、自動車(EV・自動運転)、AI・データセンター、防衛関連などの研究開発投資が増加し、計測器需要が拡大したためです。
<日本電計の当期純利益推移(2016年3月期以降)> 株価については、当期純利益の増加トレンドに合わせて上昇しています。
<日本電計の株価推移(2016年3月期以降)>
利益拡大を受けた株価上昇でPBRは1.0倍に到達
日本電計の過去10年間の業績変化を見ると、売上高が1.6倍となったのに対し、営業利益は1.8倍、当期純利益は2.3倍と利益率の上昇を伴って増加しました。これは、EV・AI・防衛など成長市場の需要を確実に捉えたことに加え、技術支援・ソリューション提供を拡大することで「計測器商社」から「テクニカル商社」へと進化したことも要因です。
株主資本蓄積も順調に進んで2.4倍に達する中、株価はさらに勢いをもって上昇し、時価総額は3.8倍になりました。PBRは1.0倍に達しており、過去実績対比では割安感が薄れています。
<日本電計の業績推移(2016年3月期以降)>(億円) 2016年3月期 2026年3月期 変化(倍)
売上高 852 1,331 1.6
営業利益 27 50 1.8
当期純利益 16 37 2.3
株主資本等合計 137 329 2.4
時価総額 85 326 3.8
PBR(倍) 0.6 1 -
PER(倍) 5 9 -
※時価総額は期末時点値、2026年3月期は直近値出所:日本電計の資料などより作成
ちなみにセグメント別では、日本の安定成長、中国の高成長、その他の新規市場拡大が重なり、全体として着実な増収増益トレンドを形成しました。
日本はEV・自動運転、半導体、AI・データセンター向けの計測需要が継続拡大し、研究開発投資の底堅さとテクニカル商社化による粗利率改善で、長期的に安定成長を維持しました。
中国は2015~2020年に景気減速やコロナで変動があったものの、2021年以降はEV・電子計測需要が急拡大し、高成長と収益改善が進みました。その他(主にアジア)は新規市場開拓が進み、規模は小さくても高い利益率が、全体の収益性押し上げに貢献しました。
<日本電計のセグメント別業績推移(2016年3月期と2026年3月期)>(億円) 2016年3月期 2026年3月期 変化(倍)
売上高 852 1,331 1.6
日本 736 1,020 1.4
中国 86 224 2.6
その他 30 87 2.9
営業利益 27 50 1.8
日本 33 65 2.0
中国 4 5 1.2
その他 1 4 4.2
営業利益率 3% 4% -
日本 4% 6% -
中国 4% 2% -
その他 3% 4% -
出所:日本電計の資料などより作成
2027年3月期は、車載・電子計測の需要拡大と中国・その他海外の成長により増収増益が見込まれています。株価水準がこのまま変わらなければ、2027年3月期にはPBRが0.9倍にまで低下する計算になります。
<日本電計の業績予想>(億円) 2026年3月期 2027年3月期
実績 予想
売上高 1,331 1,360
営業利益 50 52
当期純利益 37 35
株主資本等合計 329 353
時価総額 326 326
PBR(倍) 1.0 0.9
PER(倍) 9 9
出所:日本電計、FactSetの資料などより作成
産業用機械・機器卸同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は4,500円
日本電計の比較対象に適する産業用機械・機器卸の上場同業他社には、前掲の東テク、第一実業、ユニソルHDのほかに、カナデン(8081 東京)、日伝(9902 東京)、椿本興業(8052 東京)、アズワン(7476 東京)、ダイトロン(7609 東京)、進和(7607 東京)などがあります。
これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、株価純資産倍率(PBR)を縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、日本電計については大きく割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があるといえます。
この割安感が解消された場合の日本電計のPBR(散布図の青破線に乗る水準)は1.6倍であり、相当する株価は4,500円(58%上昇)です。
<主な産業用機械・機器卸企業のROEとPBRの関係><主な産業用機械・機器卸企業10社のROEとPBR>社名 証券コード 取引所 売上高 ROE PBR
億円 % 倍
第一実業 8059 東京 2,191 12 1.3
東テク 9960 東京 1,700 19 2.1
ユニソルHD 7128 東京 1,590 3 0.9
カナデン 8081 東京 1,456 8 1.1
日伝 9902 東京 1,410 6 1.0
日本電計 9908 東京 1,331 12 1.0
椿本興業 8052 東京 1,310 11 1.1
アズワン 7476 東京 1,107 13 2.5
ダイトロン 7609 東京 1,031 14 2.4
進和 7607 東京 861 8 0.9
出所:各社資料より作成
前述の通り、日本電計は今後も高水準収益継続が見込まれる中で、現在の株価2,875円には同業他社比で割安感があります。この割安感が解消された水準は4,500円(58%上昇)です。
西 勇太郎
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