変動激しい8月、最高値に僅かに届かず (4) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】
●企業業績
○2024年第2四半期の決算発表を終えていない企業はわずか数社となりました。時価総額の98.1%に相当する494銘柄が発表を終え、そのうち、389銘柄(78.7%)で営業利益が予想を上回り、492銘柄中303銘柄(61.6%)で売上高が予想を上回りました。
⇒2024年第2四半期の営業利益は前期比で7.0%増、前年同期比では6.6%増が見込まれており、過去最高を更新する勢いです。
⇒売上高は前期比で3.6%増、前年同期比では5.8%増となる見通しで、過去最高を記録した2023年第4四半期をわずか0.3%下回る水準となる見込みです。
⇒2024年第2四半期の営業利益率は、2024年第1四半期の11.58%と2023年第2四半期の11.87%を上回る11.99%になると予想されます(1993年以降の平均は8.83%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
⇒2024年第2四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は12.9%となっています。この割合は、2023年第1四半期は13.1%、2023年第2四半期は16.3%でした。
○2024年第3四半期(決算期がずれている企業は9月末に決算発表を開始する予定)に目を向けると、営業利益は前期比で4.4%増、前年同期比で16.8%増と予想され、過去最高を更新する見通しです。
○2024年通年の利益は前年比11.4%増が見込まれており、この予想に基づく2024年の予想株価収益率(PER)は23.8倍となっています。
○2025年通年の利益は前年比16.6%増が見込まれており、予想PERは20.4倍となっています。
●個別銘柄
○半導体メーカーのインテルは、営業利益が予想を下回り、ガイダンスを下方修正しました。また、100億ドルのコスト削減プログラムの一環として、従業員の15%削減(インテルの従業員数は11万人)と配当停止を発表しました。
○情報技術企業のシスコ・システムズは、コスト削減の取り組みとして、従業員を7%削減(約6000人、人員削減は2回目)することを明らかにしました。
○コーヒーチェーン大手のスターバックスは、2024年9月9日付でラクスマン・ナラシンハン最高経営責任者(CEO)に代わり、ファストフード・レストランのチポトレ・メキシカン・グリルのCEOであるブライアン・ニコル氏を新CEOに任命すると発表しました。
○ランジェリー小売業のヴィクトリアズ・シークレットは、ヒラリー・スーパー氏(サヴェージ×フェンティのCEO)を次期CEOに任命しました。
○米国の格安航空会社のジェットブルー・エアウェイズは、借り換えのために30億ドルを借り入れる(私募で15億ドル、ローンで12億5000万ドル、転換社債で4億ドル)ことを明らかにしました。これを受けて、S&Pグローバル・レーティングは同社の格付けを「B」から「B-」に引き下げました。
●配当金
○2024年8月の配当支払額は前年同月比5.9%減となりました。7月は同9.0%増、6月は同15.1%増で、年初来では3.4%増加しています。
⇒8月の配当支払金は前年同月の1株当たり8.13ドルから7.65ドルに減少し、支払総額も前年同月の679億ドルから642億7000万ドルに減少しました。
○2024年8月は、増配が21件、配当開始が0件、減配が1件で、配当停止は2件でした。2023年8月は、増配が19件、配当開始が0件で、減配が4件、配当停止は0件でした。
⇒年初来では、増配が235件、配当開始が6件、減配が10件、配当停止が2件となっています。2023年の同期間は、増配が240件、配当開始が7件、減配が19件で、配当停止は4件でした。
⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5 件で、配当停止はありませんでした。
○8月の増配率の中央値は、7月の5.66%から6.76%に上昇しました(6月は2.62%でした)。年初来では6.76%(7月末時点は6.67%、6月末時点は6.78%)となっています。8月の平均増配率は7月の9.24%から7.15%に低下し(6月は8.46%)、年初来では8.35%(7月末時点は8.48%。いずれも2倍以上になった銘柄を除く)となりました。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。
○2024年の配当に関して、予想は引き続き増加となっており、年間の増配率は1936年以降の平均である5.79%を上回る見通しです。この予想では、アルファベットによる最近の配当開始(年間配当額を87億ドル押し上げ)、米銀による6月と7月の増配(FRBが6月にストレステストを通じて認可)、米連邦公開市場委員会(FOMC)による2024年第3四半期末時点での利下げ開始(9月18日のFOMC会合において)に加えて、景気の大幅な減速は回避され、インフレ再燃への懸念は限定的(だが高まりつつある)で、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)ことを織り込んでおり、2024年の実際の1株当たり配当支払額は、2023年から約6%増加すると予想しています(2023年は前年比5.05%増、2022年は同10.80%増)。これにより2024年の現金配当は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。
⇒注目すべき点として、2024年第3四半期と2024年第4四半期の配当支払い額は、過去最高の更新が予想されます(現在の過去最高は2023年第4四半期)。
●インデックス・レビュー
◇S&P500指数
8月のS&P500指数 は厳しい出だしとなり、月初の3営業日で6.08%下落しました。背景には円キャリートレードの巻き戻しがあり、円が1ドル142円まで上昇した結果、日経平均株価は3営業日で12.40%下落しました。米国のVIX恐怖指数は、景気後退懸念が再燃し、米国株が幅広く下落する中で、65.37まで上昇しました(これら3つの指数は月末までにある程度回復)。数日をかけてキャリートレードが解消され、経済を巡る懸念が後退するのに伴い、市場は回復基調となり、9月17‐18日のFOMC会合で予想される利下げに投資家の注目が集まりました(0.25%と0.50のどちらの利下げ幅が見込まれるかが議論されています)。相場の好転に加えて、2024年第2四半期決算(98%の銘柄が発表済み)は好調な内容が続いており、利益は四半期ベースで過去最高を更新する見通しです(2024年第3四半期と第4四半期も過去最高益の更新が予測されています)。更にインフレ率も低下が続きました。その結果、幅広い銘柄で株価が反発し、S&P500指数は前月末比6.08%の下落から切り返し、同2.28%上昇で月を終え、終値での過去最高値を僅かに0.33%下回る水準となりました。
8月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は7月の0.95%から1.32%に上昇し、2023年3月(1.51%)以来の高水準となりました。年初来では0.91%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。8月の出来高は、7月の前月比9%減少の後に、同1%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では2%減少となりました。2024年8月までの12ヵ月間では前年同期比8%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。
8月は1%以上変動した日数は22営業日中9日(上昇が6日、下落が3日)で、市場は2日で2%以上の変動を記録しました(上昇が1日、下落が1日)。7月は1%以上変動した日数は22営業日中6日(上昇が4日、下落が2日)、2%以上変動した日数が1日(下落)でした。年初来では、1%以上変動した日数は36日(上昇が24日、下落が12日)で、2%以上変動した日数は4日(上昇は2日、下落は2日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。8月は22営業日中14日で日中の変動率が1%以上となり、4日で日中の変動率が2%以上となりました。対して7月は1%以上の変動が22営業日中9日で、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、56日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は6日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
8月は値上がり銘柄数が若干減少しましたが、なお値下がり銘柄数を大幅に上回りました。8月の値上がり銘柄数は355銘柄(平均上昇率は5.51%)と、7月の364銘柄(同8.19%)から減少しました。8月の10%以上上昇した銘柄数は52銘柄(同14.21%)と、7月の116銘柄(同14.89%)から減少し、2銘柄(7月は6銘柄)が25%以上上昇しました。一方、8月の値下がり銘柄数は148銘柄(平均下落率は5.39%)と、7月の139銘柄(同5.63%)から増加しました。8月の10%以上下落した銘柄数は19名柄(同17.81%)と7月の22銘柄(同16.58%)から減少し、4銘柄が25%以上下落しました(7月は4銘柄)。年初来では、値上がり銘柄数は372銘柄(平均上昇率は20.65%)で、272銘柄(同26.31%)が10%以上上昇し、110銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は129銘柄(平均下落率は13.06%)で、68銘柄(同21.32%)が10%以上下落し、18銘柄が25%以上下落しました。2023年通年では、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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株探ニュース(minkabu PRESS)
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最終更新:9/13(金) 11:41