事前告知はなくサプライズで配信、任天堂が「Switch Online」加入者限定で音楽サブスクを開始した狙いとは?

11/2 16:32 配信

東洋経済オンライン

 2024年10月31日、スマホ向けアプリ「Nintendo Music」が配信された。「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」、「ポケモン」、「どうぶつの森」など、任天堂に関連するゲームのBGMを聴けるアプリだ。

 事前告知などもなく、サプライズで配信されたため、驚いた人も少なくなかった。中身を見れば、さらなる意外性のあるものだった。

■濃いファン向けの要素もたっぷり

 Nintendo Musicは、昨今では当たり前となったいわゆる“サブスク”サービスに該当する。ただ、このサービス単体で料金を取るわけではない。Nintendo Switch専用のオンラインサービス「Nintendo Switch Online」に含まれるコンテンツだ。

 Nintendo Switch Onlineの加入者は、オンラインでフレンドと一緒にゲームを遊んだり、大量のレトロゲームを楽しめる。それらに加え、スマホで任天堂の音楽も楽しめるようになったわけだ。

 しかも、Nintendo Switch Onlineは月額200円~300円程度の価格だ。音楽サービスだけを受けるために加入したとしても、非常に安い部類といえる。

 楽曲は初代「スーパーマリオブラザーズ」から、最新作スプラトゥーン3までそろっている。曲数は順次、追加予定という。

 サントラに約10万円のプレミア価格が付いた「スーパーマリオ ヨッシーアイランド」の楽曲が収録されているほか、同じくサントラが約29万円まで高騰した「スーパードンキーコング2」の曲も追加予定だ。

 再生時は楽曲のシチュエーションに合わせたグラフィックが表示されるほか、曲を一定時間まで自動でループさせる「ながさチェンジ」、音楽からゲーム内容がわかってしまうようなタイトルには、ネタバレ防止機能まで用意されている。

 穏やかな雰囲気、ボス戦、あるいはキャラクターごとなど、ジャンル別再生機能も充実している。ほかのサブスクサービスとは違う体験を楽しめるというわけだ。

■アカウントの重要性を上げる独自の一手

 任天堂のゲームは、サントラがそもそも発売されなかったり、出ていてもプレミア価格で手が届かないことがあった。それを不満とする声も上がっていた。

 サントラは出したからといって必ずヒットするわけではないし、時代はサブスクである。Nintendo Musicは、ゲームファンの不満を解消しつつ、任天堂が持つ重要な資産をうまく活用したといえる。

 単なるサブスク解禁ではなく、自社サービスとして展開したところが任天堂らしい。前述のようにゲーム音楽ならではの要素があり、こだわりを感じる。

 こうした贅沢な仕様は、任天堂のゲームをオンライン上で買ったり、オンラインサービスで遊ぶときに必要な「ニンテンドーアカウント」の重要性を上げる狙いもあるだろう。

 常時接続が当たり前になってから、家庭用ゲーム機においても、各人それぞれがアカウントを持つようになった。任天堂は他社と比較するとやや出遅れていたが、現在はサービスを充実させてきた。

 ニンテンドーアカウントでは、所持しているゲームの情報以外に、「NINTENDO TOKYO」などのグッズショップでGPSチェックインして特典をもらえる仕組みもある。

■ニンテンドーアカウントの価値を上げる

 フレンドリスト、ゲームのプレイ時間など、アカウントに情報が溜まれば溜まるほど、その重要度は増す。ユーザーにも必然的に帰属意識が生まれてくる。

 PCゲーム販売プラットフォームの最大手Steamは、ゲームを売るだけでなくコミュニティ要素を重視している。アカウントの重要性は高く、遊ぶ目的ではなく、ライブラリを充実させるためにゲームを購入する人もいるくらいだ。

 PlayStationもXboxも、「トロフィー」や「実績」というシステムがある。これはゲームを遊ぶ上で条件を満たすと獲得できるもので、いわば勲章のようなものだ。こういうシステムがあると、そのハードへの帰属意識が高まり、同じゲーム機で遊ばれ続けるわけだ。

 任天堂もゲーム音楽のサブスクといった独自の手法で、ニンテンドーアカウントの価値を上げようとしている。サブスクの継続契約に繋がると同時に、次世代機でも任天堂のゲーム機が選ばれる可能性へと繋がっていくだろう。

東洋経済オンライン

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最終更新:11/2(土) 16:43

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