オゼンピックで「できちゃった」、不妊治療効果の可能性巡り議論噴出

4/19 0:43 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 不妊症に悩みながら減量のために薬品を投与された女性の一部に、妊娠というサプライズが起きている。妊娠中にノボ・ノルディスクやイーライリリーの薬品を使う安全性が問われている。

「もう子供は産めないと思っていた」と、ノースカロライナ州ホワイトビルに住むソーシャルワーカー、トリア・レジェットさん(40)は語る。2018年に第1子が誕生した後、次の子を望んでいたレジェットさんは22年、肥満治療のためにノボの「オゼンピック」を使い始め、後にリリーの「マンジャロ」に切り替えた。体重が減少していくとすぐに、別のお祝いの理由ができた。彼女は妊娠していたのだ。

「体重の減少が効いたみたいだ。信じられない」とレジェットさんは語った。

こうした成功例を受けて、米国の女性を悩ます不妊症の主因である多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療に、GLP-1受容体作動薬を処方する動きが医師たちの間で起きている。しかしこうした薬品が妊娠に与える影響に関するデータはない。

コロラド州オーロラの小児病院でPCOSクリニックのディレクターを務めるメラニー・クリー氏は「オゼンピックやウーゴビを処方された女性の『できちゃった』ケースはあちこちで起きている」と話す。「わくわくする話だが、少し怖い気もする。データが揃わないまま事が進んでいるからだ」と述べた。

PCOSは患者数が多いにもかかわらず、治療薬が承認されていない。一般に推奨されている食事療法が有効かどうかについても、専門家の意見は分かれている。可能性があるなら何でも試したい医師や患者もいて、成功例に飛びつく傾向がある。

GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として20年ほど前から販売されている。肥満症治療としての使用が拍車をかけ、2030年には1000億ドル(約15兆4500億円)市場に成長するとみられる。ここで問題なのは、メーカー側にPCOS患者の使用について系統的な研究が行われておらず、その計画もないことだ。研究者らは十分なデータを得ずに独自で有効性を調査しており、米規制当局は企業に情報収集を求めているのが現状だ。

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これまでのところ、安全性に関するデータは有望と言える。2型糖尿病の女性5万人の健康記録を調査した最近の研究では、妊娠の極めて初期段階でこうした薬を使用した女性では、インスリンを使用した女性に比べて先天異常の増加は見られなかった。

それでもこの研究の著者は、さらなる確認が必要だと注意を促す。特に糖尿病ではない女性においてそれは重要だという。コペンハーゲンの研究者らも、昨年発表したGLP-1受容体作動薬の調査報告で、「長期的な安全性に関する情報が限定的で、特に妊娠に関する情報は限られている」と指摘した。

懸念する理由のほとんどは動物実験の結果に基づいている。ノボが開発した薬剤の有効成分セマグルチドは、動物の先天性異常増加と関連している。リリーの薬品についても同様の研究が行われ、妊娠中の使用が「胎児にリスクを与える可能性」が示されたと同社は述べている。

こうした薬が妊娠に寄与するのかどうか、寄与するのならどのように作用するのか、正確には知られていない。減量がPCOS患者の生殖能力を高めることは知られており、旧型の肥満治療薬であるサクセンダも、肥満症のPCOS患者の妊娠率を高めることが研究で示されている。GLP-1受容体作動薬には生殖機能を促進するホルモンのような作用があり、経口避妊薬の効果を鈍らせるとも考えられている。男性の不妊にも関与しているのではないかと考える専門家もいる。

妊娠を計画している場合、どの時点で薬の使用を中止すべきかについては専門家の間でも意見が分かれている。妊娠の4週間までなら安全だと患者に伝える医師もいれば、妊娠するまで薬を使い続けても問題ないと言う医師もいる。ウーゴビの添付文書には、妊娠を試みる2カ月前までには使用を中止するべきだと書かれている。リリーは「ゼップバウンド」の添付文書で、妊娠した場合は使用を停止するよう勧告している。

PCOSの専門家であり、アラバマ大学バーミングハム校とニューヨーク州立大学オールバニ校で教えるリカルド・アジズ教授は、これらの薬は「治癒はしないが、症状はかなり改善する」と話す。それでも、不妊治療としてこれを推奨するにはもっとデータが必要だという。

レジェットさんのように薬品を使用中に妊娠した女性らも、ある疑問を抱いている。レジェットさんは自分の娘が同じ年頃の子どもたちよりも小さいことを不思議に思うことがあるという。

「この子はとても小さいので、それについてもっと知りたいと思う」と語った。

原題:Ozempic ‘Oops’ Babies Spark Debate About Use as Fertility Drug(抜粋)

--取材協力:Jessica Nix、Naomi Kresge.

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/19(金) 0:43

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