初心者は特に要注意! 合法でも嫌われる「サンタメ契約」は何が問題?《楽待新聞》
不動産取引の現場では、たびたび「三為契約(サンタメ契約)」が交わされている。三為契約とは、売主と買主の間に「三為業者」と呼ばれる宅建業者が入り、それぞれと売買契約を結ぶものだ。
違法ではないものの、売主と買主の双方にデメリットが生じる可能性をはらんでいるため、その利用は慎重になるべきとされている。
具体的な仕組みを知らなくても、何となく注意すべき契約であると認識している人もいるだろう。今回は、大手不動産会社でトップセールスの経験を持ち、現在は行政書士YouTuberとしても活躍する棚田健大郎氏に、三為契約の仕組みや問題点などを改めて解説してもらった。
■三為契約ってどんな仕組み?
そもそも三為契約(第三者のためにする契約)とは何か。
一般的な売買契約は売主と買主で契約を結ぶが、三為契約では売主と買主の間に宅建業者(三為業者)が入る形となる。
例えば、売主をA、宅建業者をB、買主をCとする。AがBに物件を2000万円で売却し、BがすぐにCへ2500万円で売ったとき、Bは500万円の売却益を得られる。
しかしこの場合、AからB、BからCへと移った所有権については登記が必要で、Bにとっては登録免許税や不動産取得税が負担になる。物件価格によってはこれが100万円を超えるケースもあるといい、せっかくの売却益を圧迫していると感じる不動産会社が多かった。
そこで、かつては業者Bの移転登記を省く「中間省略登記」という手法が用いられていた。しかし、これが多くのトラブルを招いたため、法改正によって現在は禁止となっている。
これを受けて編み出されたのが、三為契約だ。三為契約では、売買契約書に以下のような条文を盛り込み、合法的にAからCへダイレクトに移転登記を行う。
--------------------------
三為契約の条文例(売買契約書)
買主は、第3条の売買代金全額の支払いをするときまでに、本物件の所有権・敷地権の種類が、借地権のときは建物の所有権と敷地に関する借地権の移転先となる者(以下「第三者」という)を指定し、売主は、買主の所有権等の移転先の指定及び売買代金全額の支払いを条件として、第三者に対して本物件の所有権等を直接移転します。
2.買主は、自らを所有権等の移転先として指定することができます。なお、本項以下「第三者」という場合には、買主が自らを指定した場合を含むものとします。
3.売主は、第三者が売主に対して行う本物件の所有権等移転を受ける旨の意思表示の受領権限を買主に与えるものとします。
4.買主が売買代金全額を支払い、売主がこれを受領した後であっても本物件の所有権等については、第三者が売主から直接取得するものとします。
5.売主が本条に基づいて行う所有権等の移転は、買主が第三者に対して負う所有権等移転の義務の履行として行うものとします。
--------------------------
売買契約書にこのような記載があると、登記簿上では所有権がAからCに直接移ることになる。つまり、Bには登録免許税などの請求が来ない。
棚田氏によると、投資物件の売買では、かなりの確率でこのような三為契約が用いられているという。
■不動産会社はなぜ三為契約を結びたがるのか
棚田氏は「売主と買主の間に入るのであれば、三為業者としてではなく媒介(仲介)業者として入るのが正しいあり方だと思う」と話す。
不動産業界には三為業者がたくさん存在する。その背景には、「宅建業者の報酬の上限」が関係しているようだ。
宅建業者が不動産取引の媒介を行う場合、仲介手数料(媒介報酬)の上限金額は以下の式で計算される。
--------------------------
取引額200万円以下:取引額の5%+消費税
取引額400万円以下:取引額の4%+2万円+消費税
取引額400万円超::取引額の3%+6万円+消費税
--------------------------
仮に2000万円の物件を媒介した時、その不動産会社が受け取れる仲介手数料は最大で72万6000円、両手仲介だとしても145万2000円だ。報酬の上限額が設定されていることで、大きな利益を出しにくい。
これに対し、物件の転売による売却益には上限額が定められていない。2000万円で買い取った物件を2500万円で売却すれば、単純計算で500万円の利益が出る。上記の媒介契約と比べて、不動産会社が利益を出しやすいことは明らかだろう。
棚田氏が実際に見た事例では、最終的な売主と買主の間に4社の三為業者が入っていたケースもあったという。
三為業者は、転売益を上げるために、売主Aからはより低い金額で物件を買い取り、買主Cにはより高い金額で物件を売りつける。三為契約でなければ、Aは物件をより高く売れ、Cは物件をより安く買えた可能性があったということで、知らない間に損をしてしまうかもしれない。
間に入る業者が多いほど、売主と買主が損をしやすい構造になっている。
棚田氏は「三為契約は、売主も買主も不動産取引や相場に関する知識が乏しいという場合が多いです。不動産会社からしつこい営業をかけられて、結果的に損をしてしまうことがあるので、個人的にはおすすめしません」と話している。
■三為契約の回避方法は?
では「三為契約を結びたくない」という場合、どのように避けることができるのだろうか。棚田氏は4つの方法を提示する。
1つ目は、事前に売買契約書のひな型を確認すること。前述のような特約(条文)が契約書に盛り込まれている、と気付くことができれば、三為契約の締結を回避できる。
2つ目は、不動産会社に対して「三為契約はNG」とあらかじめ伝えておくこと。棚田氏は「個人的にこれが1番確実だと思う」と話す。
これを伝えることで、三為契約の仕組みやデメリットを理解しているとのアピールとなり、不動産会社に出し抜かれることを予防できる。
3つ目は、買主側が物件の所有者を確認すること。売買契約書に記載された売主と登記簿の所有者が一致しない場合、それは三為契約である可能性が考えられる。
4つ目は、契約から決済日までの日数を確認すること。三為業者は、買主を見つける時間を確保するため、契約から決済までの期間を長くしたがる傾向にあるという。
棚田氏も、3~6カ月ほど空けた契約書を見かけたことがあるそうだ。契約から決済までの期間が長いと、別のトラブルが発生するリスクも高まるため、不自然に決済日が遅い契約は避けることを心がけたい。
◇
三為契約は、合法的な手法ではあるものの、仕組みを知らないと売主や買主が損をする可能性がある。かつて実務を経験していた棚田氏も、「よほど売り急いでいる状況でない限りはおすすめしない」と話す。
三為契約を結びたくない人は、売買契約書や登記簿の確認に加えて、「三為契約はしない」と自ら伝えることも検討したい。
不動産投資の楽待
関連ニュース
- 【動画】合法だけど、要注意!知らないと損する「三為契約」の裏側
- 危ないと言われる「擁壁物件」、買ったら本当に傾いた…高額な修繕費にオーナー絶句
- 管理業法の「サブリース規制」、何が禁止されているのか?
- マンションは「10年後の売却」から逆算せよ、プロが教える「適正価格」を知る方法
- 1都3県の「勝ち組エリア」はここだ、不動産投資の適地を「街の新陳代謝率」で見る
最終更新:12/3(火) 19:00