米ドル/円が152円の壁を突破。鈴木財務相のコメント、トーンが弱まっている?
大橋ひろこ:
先週(4月8日~)は、米CPI(消費者物価指数)が予想を上回ったことで、ついに1米ドル=152円の壁を突破しました。
介入警戒感が高まりましたが、一向に入る気配がないですね。
西原宏一:
岸田首相が国賓待遇での訪米中だったということもあるのでしょう。
岸田首相は昨日(4月14日)帰国しましたが、では今週(4月15日~)入るのか? というと、それも疑問になってきました。
鈴木財務相のコメントからは、重要なフレーズである「断固たる措置」の言葉が以前ほど聞かれなくなっています。
大橋ひろこ:
152円手前では連日のように円安けん制発言が出ましたが、抜けてからは頻度も減っていますね。今日(4月15日)も153円台後半まで上がってきました。
西原宏一:
介入について米国の合意が得られていないのかもしれませんね。
先週のコラムで話したように、財務官経験者にも介入を示唆するコメントを出させて、市場の警戒感を高めさせましたが、こうしたコメントについても「OBまで動員して円安を食い止めようとしているのは介入できないから」との見方もできます。
米ドルは全面高。6月の米利下げの可能性がほぼ消滅し、米長期金利が上昇
大橋ひろこ:
米利下げは6月の可能性がほぼ消えて、米長期金利(米10年債利回り)も4.6%目前まで上がってきました。
為替市場も米ドル全面高です。このタイミングで円買い介入を行っても焼け石に水ですね。
西原宏一:
155円をつけてしまうと困る会社も多いでしょうから、その手前、154円台後半ではさすがに入るだろうと思いますが、どうするでしょうか。
大橋ひろこ:
IMM(国際通貨先物市場)ポジションは円売りが16万枚。過去最高の18万枚に近づいています。これだけを見れば、さらなる円売りの余地は小さいとも見えますが……。
中東情勢の緊迫化とコモディティ
大橋ひろこ:
先週末は中東情勢がにわかに緊迫し、リスクオフとなりました。
土曜日(4月13日)には、イランが実際にイスラエルへドローンやミサイルで攻撃しましたが、ほとんどが迎撃されました。
西原宏一:
迎撃にはイスラエルのアイアンドームが使われただけでなく、米軍や英軍、フランス軍なども参加しています。
発端はイスラエルによるイラン大使館の攻撃でしたが、イランの国内世論は反撃したことで収まります。
次はイスラエルのフェーズ(局面)となり、イスラエルはさらに報復したいでしょうが、米英仏に「借り」ができましたから、国際世論を無視して強硬な態度は取りづらいでしょう。
大橋ひろこ:
ゴールドはリスクオフでの買いもありましたが、それだけでなく3月頭からの上昇はインフレ再燃に備える買いだったのだと思います。
原油もこれからアメリカがドライブシーズンに入り需要期を迎えますし、中国経済がいったん底入れしたとの期待もあり、下がりづらいとの見方が強まっています。
大統領選に向けてバイデンさんは苦しくなってきましたね。
「米ドルは買わないといけない」
西原宏一:
昨年末には年6回利下げの予想だったのが、2回できるかどうか。米ドルは買わないといけないのでしょう。
大橋ひろこ:
なにもなければ、米ドル買いが続くのかもしれませんね。
何かあるとすれば、株の暴落ですが、地政学リスクは基本、売り材料ではありませんし、とくに大きな懸念は見当たりません。
西原宏一:
今回もそうでしたが、リスクオフといっても週末リスクに備えるだけで月曜日にはすぐ買い戻される展開が続いていますね。
米ドル買いを基本戦略に。通貨ペアは簡単なのは利下げ方向がはっきりしているスイスフランの売り
大橋ひろこ:
今週は米小売売上高(4月15日)やフィラデルフィア製造業景況指数(4月18日)などが発表されます。
こうした指標が上ブレるようだと、米金利上昇から米ドル高がさらに進む可能性があります。米ドルを買うとすると通貨ペアは?
西原宏一:
先週から下げ始めたユーロ/米ドルが1.07ドル割れを維持できるかどうかに注目していますが、簡単なのは利下げ方向がはっきりしているスイスフランの売りでしょう。
米ドル/スイスフランのロングですし、政府・日銀の介入にも期待するならスイスフラン/円のショートでもいいのかもしれません。
大橋ひろこ:
米ドル/円はいかがでしょうか?
西原宏一:
高いところを買うと苦しくなりますが、今年(2024年)は押し目らしい押し目がないまま上がっています。介入警戒もありますから、短期で回転させるのがよいのかもしれません。
(構成/ミドルマン・高城泰)
ザイFX!
最終更新:4/15(月) 19:07
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