• トップ
  • ニュース
  • 雑誌・コラム
  • クルマ好き界隈をザワつかせた「アルファロメオ」のデザイン、新型ジュニアの登場で「トナーレを再評価」する理由

クルマ好き界隈をザワつかせた「アルファロメオ」のデザイン、新型ジュニアの登場で「トナーレを再評価」する理由

5/14 10:02 配信

東洋経済オンライン

 アルファロメオからひさびさのコンパクトなモデル、「ミラノ」が4月10日に発表された。

 ところが、わずか5日後には「ミラノという名前が法律で禁止されている」とイタリア政府の発表があったことから、「ジュニア」に車名を変えるという声明を出した。

 デビュー直後からお騒がせのニューモデルだが、エクステリアデザインに対するコメントも賛否両論で、クルマ好き界隈を騒がせている。

 ニュースリリースによると、ジュニアのエクステリアデザインは、このセグメントにおけるデザインの基準を再定義し、冷徹な合理主義から完全に離れ、しなやかで刺激的なデザインを目指したとのことだ。

 フロントは「レジェンダ」と「プログレッソ」のバリエーションを用意した伝統の盾型グリル、3連LEDマトリクスヘッドランプなどにより、大胆で力強い個性をさらに引き立て、リアは1960年代のスポーツカー「ジュリアTZ」を彷彿とさせる「コーダトロンカ(断ち落としテール)」を取り入れたという。

【写真】アルファロメオ「ジュニア」のデザインを詳しく見る(60枚以上)

 つまりアルファは、「大胆で刺激的なデザインを目指した」ということになる。盾型グリルやコーダトロンカなどの伝統的なディテールを取り入れてはいるものの、グリルの中にロゴマークの絵柄を展開したり、リアエンドの縁にコンビランプを仕込んだり、これまでとはまったく違うディテールに挑戦している。

■過去にも賛否を巻き起こしてきたアルファ

 アルファのデザインが賛否両論だったことは、過去にもある。1962年に発表された初代ジュリアのセダンは、「醜いジュリア」というあだ名がついたほどだし、1989年にデビューしたスポーツカーの「SZ」は、強烈なフォルムから「イル・モストロ(怪物)」と呼ばれた。

 それでもジュニアに違和感を抱く人が多いのは、最近のアルファのエクステリアデザインが、過去の名車のエッセンスを上手に現代化した、まとまりのある姿だったことも大きいのではないかと思っている。

 2024年現在、アルファは我が国で、Dセグメントセダンの「ジュリア」、SUVの「ステルヴィオ」、CセグメントSUVの「トナーレ」をラインナップしている。ジュニアはトナーレの下、Bセグメントに位置するSUVだ。

 もっとも新しいのは、2023年に日本に上陸したトナーレだが、そのエクステリアデザインは、ジュニアとはかなり違う。それはニュースリリースを見ても明らかだ。

■ジュリアや8C、ブレラのエッセンスも

 エクステリアは、ヘリテージと先進性を融合したデザインが随所にちりばめられているとあり、アルファ初採用となるマトリクスLEDヘッドランプは、SZなどから着想を得た3連のU字型デイタイムランニングランプが個性を主張しているとしている。

 日本で販売されるトナーレには、TIとヴェローチェの2グレードがあり、取材したヴェローチェでは盾型グリルの縁がブラックとなるものの、TIはシルバーとなるので、昔ながらの顔つきが好みの人はTIを選ぶといいだろう。

 ボディサイドは、初代ジュリアのクーペを想起させる、シンプルながら官能的なショルダーラインが特徴的。リアドアガラスは、スーパースポーツ「8Cコンペティツィオーネ」を想起させ、リアにも3連のLEDコンビランプを採用。こちらは独創的なフォルムで話題になったクーペ、「ブレラ」を思わせる。

 逆に言えば、トナーレのスタイリングに大胆さはない。プロポーションも、現代のSUVのスタンダードと言える。でも、一部の車種のように、どこのブランドだかわからないようなことはない。アルファを知る人なら、ひと目でそれとわかるのではないだろうか。

 ホイールが多くのアルファに採用されてきた5ホールデザインであることも、そう思わせる理由のひとつだ。

 ナンバープレートの取り付け位置にも触れておきたい。

 縦型グリルを避けて左にオフセットして取り付けるスタイルは、日本でもヒットしたスポーツセダン「156」あたりから続くレイアウトだ。軽自動車で右側にオフセットしている車種はあるが、登録車ではあまり例がない。

 ナンバープレートの取り付け位置は、2021年に角度などが細かく規定された。そのためトナーレでは、進行方向から見て垂直面に近くなるよう、専用の台座を設けている。それでもオフセットを維持しているところに、ビジュアルへのこだわりが感じられる。

 ところがジュニアでは、現地の広報写真を見る限り、アルファとしては久々にフロント中央に取り付けられるようだ。これによってアルファらしさが薄れたりしないか、気になっている。

 ちなみに車名のトナーレ(Tonale)は、イタリア北部にある峠の名前に由来している。ミラノと同じく地名でありながら政府から文句がなかったのは、ジュニアがポーランド製なのに対し、こちらはイタリア製だからのようだ。

■ジュニアとトナーレ、インテリアは似ている

 エクステリアでは対照的なアプローチとなったジュニアとトナーレだが、インテリアは似ている。

 ジュニアのニュースリリースによると、インテリアはドライバー志向で、10.25インチTFTスクリーンを内蔵した「テレスコープ(望遠鏡)」スタイルのメーター、ドライバー側にチルトした10.25インチのタッチ式センターディスプレイ、高性能アルファを象徴する「クアドリフォリオ (四つ葉のクローバー)」のエアコンルーバーなどが特徴と書いている。

 一方のトナーレも、テレスコープスタイルのメーター、ドライバー側にチルトしたセンターの10.25インチのタッチ式センターディスプレイなどが共通で、インパネ両端の丸いエアコンルーバーはクアドリフォリオではなく普通の丸型になることや、メーターのスクリーンが12.3インチになることが違う。

 インパネ断面の形状は違っていて、ジュニアは1970~1980年代の大衆車「アルファスッド」のように、上端が手前にせり出した形状。トナーレは2段になっていて、間に魚の鱗を思わせる模様が入ったシルバーのパネルが入る。こちらはレースでも活躍した1960~1970年代の「ジュリアクーペ」を思わせるものだ。

 ジュニアでは、サベルト製のスポーツシートを奢られていることにも目が行く。サイドサポートは大きく張り出しており、赤のステッチを含めて、かなりスポーティな装いだ。

 トナーレのシートは、TIがファブリックでヴェローチェがレザー。どちらもステッチはモノトーン系で、シート形状もおとなしい。

 ジュニアは、これ以外のシートも用意されるような気がするが、Bセグメントらしく元気なイメージを出したジュニア、Cセグメントとして落ち着いた雰囲気を表現したトナーレ、という方向性の違いもありそうだ。

 ボディの全長×全幅×全高は、ジュニアが4170mm×1780mm×1500mm、トナーレが4530mm×1835mm×1600mmで、歴然とした差がある。ただし今回、トナーレを東京都内で乗った限りでは、サイズで困るようなことはなかった。

 両車で大きく違うのはパワーユニットで、ジュニアは1.2リッター直列3気筒ターボのハイブリッド(HEV)と電気自動車(BEV)、トナーレは1.5リッター4気筒ターボのマイルドハイブリッド(MHEV)と、今回ドライブした1.3リッター4気筒ターボで前輪を、モーターで後輪を駆動するプラグインハイブリッド(PHEV)が選べる。

 かつてジュリアクーペの2000GTヴェローチェを愛車とし、先日はさらにひと世代さかのぼる初代「ジュリエッタ」を試乗したりした身からすれば、トナーレはかつてのアルファのような、エンジンの吹け上がりやサウンドを楽しむようなクルマではないし、ジュニアもそうであるような気がする。

 とはいえハンドリングについては、クイックなステアリングは156以来の“アルファらしさ”だし、ガチガチではなく、適度にストロークしてドライバーの気持ちを姿勢変化として反映してくれるサスペンションも、アルファの伝統どおりだ。

■ジュニアを見て再評価するトナーレのデザイン

 新しいジュニアがどのような走りをするかは、現時点ではわからないけれど、トナーレのハンドリングはまさにアルファで、デザインも過去の名車のエッセンスを上手に取り込んでいると感じている。

 とりわけスタイリングについては、後輪駆動という魅力を持つジュリアやステルヴィオより、アルファらしさの表現がうまいと思っている。ジュニアがあのような姿で出てきたことで、トナーレのデザインを再評価しているのは、筆者だけではないはずだ。

【写真】改めてアルファロメオの「ジュニア」と「トナーレ」を比較する(60枚以上)

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:5/14(火) 12:11

東洋経済オンライン

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング