京都・三条にヒルトンホテルが開業予定、「都市課題」解決に寄与できるか《楽待新聞》

5/1 19:00 配信

不動産投資の楽待

多くの観光客らでにぎわう、京都の中心地の1つ、河原町三条。ここに、2024年にも「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」のホテルが開業する。

京都市は「定住人口」と「産業・働く場の確保」という課題を抱えているという。こうした課題解決に向けた1つのきっかけとなるだろうか。

京都のヒルトンホテル計画の概要を確認していこう。

■認定プロジェクトの概要

今回の「ヒルトン誘致」は、デベロッパーの東京建物による「(仮称)京都三条河原町プロジェクト」と名付けられている。

3月には、国土交通省が、このプロジェクトを「優良な民間誘導施設等整備事業計画」として認定。認定されたプロジェクトの事業者は、一般財団法人民間都市開発機構による金融支援を受けることが可能となるという。

ヒルトンは複数のブランドを展開しているが、今回誘致されたのはフラッグシップブランドである「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」だ。ホテルズ&リゾーツは高級路線かつ大規模チェーンを展開する、ヒルトングループの基軸ブランドとされている。

同ブランドのホテルはさまざまなシーンに対応しており、通常の宿泊以外にもコンベンションや会議、結婚式、パーティーなどに幅広く利用されている。

国交省が当該プロジェクトを優良事業計画として認定した理由の1つはここにある。同省のプレスリリースには、このプロジェクトは「国内外のビジネス客等が快適に活動・滞在できる宿泊施設や会議室、緑地等を整備することで、ビジネス環境の向上や良好な都市景観の形成に貢献する」とある。

なお、同ブランドのホテルは京都初進出だ。ホテルのコンセプトは、歴史や伝統など京都が持つさまざまな魅力と顧客を結び付ける「京都SYNAPSE(シナプス)」。京都の魅力を発信するとともに宿泊客の新たな発見と出会いを提供するホテルを目指すという。

ホテルの規模は地上9階・地下2階、敷地面積約5050平米、延床面積2万7000平米。地上階が客室で客室数は313室、宴会場や会議室等は地下階に設けられる。バー、レストラン、カフェなどの施設に加え、ジムや屋内プールなども備える予定だという。

立地は2018年1月いっぱいで営業を終了した京都ロイヤルホテル&スパの跡地であり、京阪本線の三条駅から徒歩5分、地下鉄東西線の京都市役所前駅から徒歩2分の場所だ。

■都市課題の解決に貢献することを期待

今回の計画地は、京都市が2019年3月に策定した「京都市持続可能な都市構築プラン」の中で、「都市活力をけん引する」役割を担う「広域拠点エリア」に指定されている。

広域拠点エリアには京都駅周辺から二条駅や京都市役所前駅周辺までが含まれており、三条駅周辺はエリアの北東側となる。この広域拠点エリアの将来像と暮らしのイメージとして挙げられているのは、以下のようなポイントだ。

・広域的な商業施設、多くの企業が活動するオフィスビルやホールなどが集積し、国内外から人々が集い、働き、交流が行われている。

・市民の安心安全な暮らしや地域コミュニティと共存しながら、ビジネスや観光等で京都を訪れる人々が快適に活動・滞在し、街の活性化にも寄与している。

一方で、京都市持続可能な都市構築プランには京都市が持つ課題についても書かれている。課題の1つは「定住人口」と「産業・働く場」の確保だ。

コロナ禍前に作成された資料なので2024年時点では変化しているが、オフィス不足が鮮明になっていると指摘されている。

京都市内では2011年以降、延床面積が1000坪以上のテナントビルは建っておらず、オフィスの空室率が大阪・神戸と比較して低くなっている。空室率の低下はオフィス賃料を押し上げており、企業の事業拡大や企業誘致の妨げになっているという。

結果的に京都市外で働く市民が増加しており、若年層や子育て世代の人口が転出超過している状況だ。

新たなヒルトンホテルはオフィスを構えるわけではないので、京都市が指摘する直接的な課題解決に貢献するわけではない。

しかし、ヒルトンホテルが国際的にも知名度の高いホテルブランドであることや、ビジネスにも活用できる施設を備えているという点で、広域拠点エリアの将来像の形成に寄与すると判断されたのではないだろうか。

そのほか、計画地は京都市の「立地適正化計画」において「都市機能誘導区域」にも指定されている。

立地適正化計画は、京都市持続可能な都市構築プランと同じく2019年に京都市が策定したものであり、人口減少などの都市課題に対応することなどをその目的としている。

さまざまな地方都市が掲げている目標ではあるが、計画が目指すまちの将来像は都市機能が集約された「コンパクトシティ」だ。

国土交通省は、ホテルの備える各施設がビジネスフレンドリーな環境の構築に寄与するとともに、少子高齢化が進んでいる地域住民のコミュニティの活性化にも貢献するとしている。

ホテルの開業時期は明示されていないが、国土交通省が認定プロジェクトの事業施工期間(予定)を2024年5月15日までとしているため、少なくとも今年中には開業するのではないだろうか。

ヒルトンホテルの開業のみで京都市の抱える都市課題がすべて解決されるわけではないが、今後も解決につながる都市開発の動きが出てくることに期待したい。

朝霧瑛太/楽待新聞編集部

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最終更新:5/1(水) 19:00

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