欧米の小売業者が苦戦、経費増加し売り上げ伸びず-破産手続き開始も

3/25 15:10 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 多くの週末、ロンドン東部の何の変哲もない路地に、何十人もがサンプルセールを目当てに列を作る。有名デザイナーの衣類が7割引きかそれ以上の値引き価格で提供されるのだ。

数週間前には、消費者が高級小売店マッチズによるバーゲンセールで掘り出し物を物色する中、弁護士たちは同ブランドについて倒産法の手続きを開始していた。英資産家マイク・アシュリー氏率いるフレイザーズ・グループに買収されてからわずか数カ月後のことだった。

マッチズの苦境は、個人消費が低迷する中で、小売業者の厳しい状況が欧米で広がっていることを示す最新事例だ。インフレが経費を押し上げ、個人消費を圧迫し、小売業者はぎりぎりの状態に追い込まれており、大規模な値引きですら生き残りに不十分な状況となっている。小売業者はその前には、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による休業やサプライチェーンの混乱など、さまざまな問題が重なり困難に見舞われていた。

コンサルティング会社ベグビーズ・トレイナー・グループのパートナー、ジュリー・パーマー氏は英国について、「国内で最も強力で知名度の高いブランドでさえ苦戦している」とし、「困難なマクロ経済環境、裁量的消費支出の減少、金利上昇、サプライチェーンにおける新たな課題」に言及した。

この業界はなお、1年で最も重要な時期であるクリスマスの残念な結果をまだひきずっている。英小売協会(BRC)とコンサルティング会社のKPMGのリポートによると、英国の昨年12月の総売上高は1.7%増にとどまり、1年前の約7%増を下回った。

米国も似たような状況で、小売売上高は今年、予想を下回るスタートとなった。その一方で、消費者物価指数(CPI)統計では変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が市場予想を上回る伸びとなり、消費者の買い控えの一因を物語っている。

デフォルト率上昇

JPモルガン・チェースが3月1日に発表したリポートによると、米ハイイールド債市場の小売りセクターではこの1年のデフォルト(債務不履行)率が5.4%超と、過去22年の平均である2.8%のほぼ2倍に達している。

デジタル・コンサルティング会社CI&Tの小売り戦略ディレクター、メリッサ・ミンコウ氏は、現在苦戦を強いられている企業のもう一つの共通点は比較的狭い範囲に絞っていることだと指摘する。「ニッチな市場で勝負する場合、生き残り、成功するためには誰よりもうまくやる必要がある」と語った。

ここ数カ月間に、米国の小売業者エクスプレス、ディスカウント小売りビッグ・ロッツ、消耗品・雑貨小売店99センツ・オンリー・ストアズなどが、経費の増加に売り上げの伸びが追いつかず、救済融資や債務再編を検討している。手工芸用品販売の米ジョアンは、パンデミック・ブームでは売り上げが伸びたものの、今月連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請した。

信用格付け・コンサルティング会社パルス・レーティングスの最高クレジット責任者スコット・フリードマン氏は、「家計は逼迫(ひっぱく)している」と指摘。格安チェーン店の苦境は、そうした店舗の中心顧客である低所得世帯ができるだけ節約しようと、購入する商品を選別していることが一因だと語る。

フリードマン氏は「消費者は裁量的な商品を避け、小売業者にとって利幅が薄めの必需品だけを買っている」とも話した。ビッグ・ロッツのブルース・ソーン最高経営責任者(CEO)は、買い物客を引きつけて損失を食い止めるために「極端なバーゲン」に一段と力を入れる計画だと説明した。

一方、高価格品を扱う小売業者では、490ポンド(約9万3500円)のバーバリーのポロシャツや1025ポンドのロエベのブランケットなどを扱うマッチズが来月初めにロンドン東部ハックニーの倉庫で再びバーゲンセールを行う予定だ。

英ファッションブランド、テッドベーカーは1月の英小売売上高が予想を上回る中で、3月19日に倒産法の手続きの開始を申請した。

ベグビーズのパーマー氏は「資本力があり経営が軌道に乗っている企業で、顧客が望むものを提供できるのであれば、市場はある。そうでない小売業者が存続していく上で十分な需要はない」と語った。

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原題:Retailers Collapse as Expenses Rise, Sales Weaken: Credit Weekly(抜粋)

--取材協力:Rheaa Rao.

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最終更新:3/25(月) 15:10

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