4年で売上高8倍のデベロッパー、「霞ヶ関キャピタル」のビジネスモデル《楽待新聞》

2/19 19:00 配信

不動産投資の楽待

企業の決算から、不動産業界の現状について考える本連載。今回取り上げるのは「霞ヶ関キャピタル」です。

急速な成長を見せている不動産デベロッパーで、不動産業界の中では純利益の成長率も高く、時価総額の増加率は突出して高い企業です。

今回は大きく成長している霞ヶ関キャピタルがどのような企業なのか、また直近の収支がどのような状況なのかを見ていきましょう。

■売上高は「4年間で8倍」に急増

まずは、霞ヶ関キャピタルが近年どれほどの成長を見せているのか、ここ5年間の業績の推移から見ていきます。

以下は、売上高の推移です。大きな成長が続いており、2020年8月期には80億円だったところ、2024年8月期には657億円と約8倍の成長をみせています。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

利益面も同様に大きく成長しています。

純利益は2020年8月期に1億3000万円程度だったのが、2024年8月期には50億円超まで拡大しています。売上・利益ともに大きな成長を見せていることが分かると思います。

ちなみに直近2024年8月期について、業績の前期比も見てみましょう。

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売上高:+76.2%
営業利益:+92.2%
経常利益:+90.8%
純利益:+144.8%
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上記の通り、直近の段階でも大きな成長が続いているということが分かります。

■急成長の理由? 「霞ヶ関キャピタルモデル」とは

どうしてこれほどの成長を見せているのでしょうか。理由を探るため、霞ヶ関キャピタルのビジネスモデルを見ていきましょう。

霞が関キャピタルは不動産デベロッパーとして事業を展開していますが、ビジネスモデルには特徴があります。

具体的には、「霞が関キャピタル1.0モデル」と「霞が関キャピタル2.0モデル」という2つのビジネスモデルです。

主力は「霞が関キャピタル1.0モデル」の方で、これは「戦略的コンサル型のデベロッパー」と「成果報酬志向型のファンドマネージャー」の事業を組み合わせたモデルとなっています。

通常の不動産デベロッパーは、土地の取得からその活用のプランニング、開発までを行い、建築物が完成した後に運用や売却を行うことで収益を得るモデルとなっています。

一方、「霞ヶ関キャピタル1.0モデル」は以下のようになっています。

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<霞ヶ関キャピタル1.0モデル>

①霞ヶ関キャピタルが土地を取得し、活用のプランニングをして付加値を付け、開発ファンドを組成し開発ファンド投資家へ売却

②建築は開発ファンド投資家が主体で実施され、霞が関キャピタルはデベロッパーとしてプロジェクトマネジメントに参加、コストや工期管理を行いマネジメント報酬を受領

③建築物の完成後、開発ファンド投資家から不動産ファンド投資家へ売却され、その際に期待収益を超過していた場合は霞が関キャピタルは成果報酬を受け取る。さらに不動産ファンドのアセットマネジメントを継続的に行うことでマネジメントフィーを受領する
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このように、土地の売買とファンドマネジメントフィーや成果報酬を受け取るモデルとなっています。

これが、土地の売買だけを行う「戦略的コンサル型のデベロッパー」とその後のファンド運営を行う「成果報酬志向型のファンドマネージャー」を組み合わせたビジネスモデル、という意味です。

では、このようなビジネスモデルを採用することにより、通常のデベロッパーとはどのような違いが出るのでしょうか?

まず、通常の不動産デベロッパーは、土地を取得をして建築後に収益を得るモデルですから、投資資金の回収までに時間がかかります。

一方の「霞ヶ関キャピタル1.0モデル」では、開発前の段階で土地を売却するため、投資から回収までの期間が早いのです。

もちろん、通常の不動産デベロッパーのように、すべてを自社で手掛けた方がトータルの利益は大きくなります。ただし、1つ1つの案件に時間がかかるので、資金力のある大手でなければ、同時に多くの案件を手掛けられず、成長に時間がかかります。

その点、霞ヶ関キャピタルモデルの場合、投資回収を高速で回転させることができるため、資金力が小さくても成長が期待できるということです。

なお、このビジネスモデルは、大手不動産デベロッパーのように圧倒的な資金力やコネクション、技術力を背景にした事業と比べると、他社に真似されすいということは想像がつくと思います。

つまり、大きく成長するためには、土地のソーシング力(優良な土地や物件を効果的に見つけ出し取得する能力)やプランニング力、マネジメント力が必要だということです。

■ポートフォリオも変化

売上の成長とともに、案件も大型化してきており、新規案件の平均の事業規模は、4年間で2.5倍となっています。

また、土地売買だけでなくファンドマネージャーとして長期的な収益も受け取るモデルですから、開発してきた案件が増えるほど、ファンド事業の収益も積み上がっていきます。

つまり、累計の案件数の増加に合わせて、収益ポートフォリオも変化しているということです。

2021年8月期は収益の1割がストック収入で、9割が土地売却でしたが、2024年8月期では2割がストック収入となり、ファンドの成果報酬も約2割まで拡大しています。

ファンドでの収益の合計は39%まで拡大しており、収益構成は大きく変化してきたことが分かると思います。

資本の高回転が実現できるビジネスモデルと、ストック収益などファンドからの収益の積み上げにより大きな成長を実現してきたということです。そしてストック収益が拡大してきましたので、一定の安定収益もあり、業績は悪化しにくい企業だということも分かると思います。

ここで、もう1つの「霞が関キャピタル2.0モデル」も触れておきましょう。

こちらは霞が関キャピタルとパートナー企業が、2:1で出資して合弁会社を設立し、土地取得から開発まで手掛け、その後にファンドへ売却する…という、通常の不動産デベロッパーに近い事業となっています。

ちなみに、ファンドへ売却後は1.0と同様、アセットマネジメントによる継続収益を得るモデルとなっています。

こちらは多くの不動産デベロッパー同様に開発まで行うモデルですから回収までの時間はかかりますが、1/3は出資してもらって事業を行っていますので、ある程度は資本効率が高いモデルとなっています。

1.0にせよ2.0にせよ、自社でリスクをすべて取らずに資本効率を高く事業を展開している点が特徴で、このような資本効率を意識した事業展開が、高成長に繋がっていると見ることができるでしょう。

■活況なホテル市場が好業績を後押し

続いて、霞ヶ関キャピタルがどのような分野に投資して成長してきたのか、その投資先を見ていきましょう。2024年8月末時点での事業規模は以下の通りです。

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物流(冷凍・冷蔵物流)やホテルを中心に事業を展開しています。

これらのうち、ホテルは国内の建設市場の中でも成長が期待される分野の1つです。霞ヶ関キャピタルの決算説明資料にも、進行中や計画中の案件が多数あるとされています。

さらに、信用や資金力が高まってきたこともあってか、ホテルの案件規模自体も拡大しています。直近の好調の要因も、ホテル事業の拡大による影響が大きいと言えるでしょう。

成果報酬の拡大が業績に好影響を与えていることは前述の通りですが、これも、活況なホテル市場によって、高収益でホテルの売買が行われやすいことが影響していると考えられます。

■物流施設の建て替え需要に注目

冷凍・冷蔵物流の国内市場も、単身世帯の増加や女性の社会進出など、ライフスタイルの変化による冷凍食品の消費量増加に伴う成長が期待されています。

そして冷凍・冷蔵物流の業界で、マーケットの拡大以上に期待されるのが「建て替え需要の拡大」です。

この分野では、環境負荷の少ない自然冷媒への転換が求められるようになっています。築20年以上の老朽化した倉庫も増えており、建て替え需要が期待されています。

そもそも、冷凍・冷蔵以外でも物流業界全体として、ハイテク物流施設への移行も進んでおり、そういった面からも需要が期待されています。ライフスタイルの変化による冷凍食品の拡大と、建て替え需要によるマーケットの拡大が見込まれている、ということです。

これらのほか、ヘルスケアの分野で同社が注力しているのが「ホスピス」です。

高齢化が進む中でホスピス需要も拡大しいますが、特に市場が未開拓で賃料が比較的高めのホスピスに注力した展開をしています。今後、市場の開拓が必要になってくると考えられますので、成長するかどうか注目です。

また、海外にも積極的な投資を進めており、マーケットの拡大が期待されるドバイを中心とした投資を進めています。特に富裕層の拡大が期待されますので高級レジデンスへの投資を進めているようです。海外の成長も重要ですから、この拡大にも注目です。

■大手デベロッパーとの競合が課題?

急速な成長を遂げている霞ヶ関キャピタルですが、もちろん懸念点もあります。

投資先は先に紹介したように成長市場ではありますが、競合も多いです。案件規模が拡大すればするほど、大手の不動産デベロッパーとマーケットが被ってきます。

そういった中、どの程度まで、案件規模の拡大や案件確保を続けられるかは不透明です。この点は注意してみていく必要はあるでしょう。

では、最後に直近の業績を見ていきます。今回取り上げるのは、2025年8月期の1Qまでの業績です。

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・売上高
153億円(+26.2%)

・営業利益
29.7億円(+355.3%)

・経常利益
28.8億円(+632.6%)

・純利益
20.0億円(790.3%)
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増収で大幅増益と、高成長が続いています。通期予想に関しても前期比以下の通りです。

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売上高:+44.6%
営業利益:+93.3%
経常利益:+90.8%
純利益:99.2%
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大幅な増収増益を見込んでおり、パイプラインも多数ですから基本的には、まだ成長が続くことが期待されます。どこまで拡大が続くのかには注目です。

妄想する決算/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待

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最終更新:2/19(水) 19:00

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