町民の約半数が高齢者 大阪・豊能町でAIオンデマンドバス社会実験

2/16 12:11 配信

THE PAGE

人の流れを増やして地域を活性化させたいというねらい

 大阪府北部にある豊能町で、予約に応じて運行するAIオンデマンドバスの実証実験が行われています。人口減少と高齢化が進む中、同交通によって移動の利便性を高めて、人の流れを増やして地域を活性化させたいというねらいがあります。需要などを検証の上、2024年度の本格運行を目指します。

人口はピーク時から約3割減、高齢化も進む

 2月1日午前、能勢電鉄光風台駅の改札を抜け、駅前ロータリーの左側にある階段を登って片側1車線の道路に出ます。その道路を右折し、ゆるやかな上り坂を歩くと、AIオンデマンドバスの出発式が行われる公園に着きました。

 ここまでの道中で、坂が多い地域であることがよくわかりました。特に足腰が弱い高齢者の場合、自家用車なしに外出するのは平地での生活よりもハードルが高いことが十分予想されました。

従来の路線バスの事業継続が難しい状況

 豊能町は、大阪府北部の中山間地にある自治体です。人口は2022年12月の時点で1万8526人と、ピーク時の1995年から約3割減少。高齢化率は48.2%と町の人口の約半数に達しています。

 阪急バスによると、同町に限らず、北摂地域の中山間部の自治体ではこうした人口減少と高齢化に加え、コロナ禍による移動制限などの要因で交通需要が減少。乗務員不足も相まって、従来の路線バスの事業継続が難しい状況になっているそうです。

 このため、同町と同社は公共交通の維持に向けた協議を進めた結果、AIオンデマンドバスの社会実験を行うことを決めました。このバスは、予約が入ったときにだけ乗合運行することや、路線は定めず特定エリア内を運行するといった特徴があります。既存の路線バスより効率的に運行できるのではないかとして、全国各地で導入に向けた取り組みが行われています。

豊能町と民間会社2社による協議会で実験を実施

 今回の実験を進めるのは、同町に加え、AIオンデマンドバスを実際に運行する阪急バスおよび京都タクシーの3者で構成する「豊能町AIオンデマンド交通実証実験協議会」です。この実験に際して、同協議会は大阪府に対してAIオンデマンド交通の実験を支援する補助金の交付を申請し、採択されています。

 AIオンデマンドバスのサービス名称は「HANI+(ハニタス)」。阪急(HANKYU)バスの交通サービスとAIを組み合わせて新たな価値を生み出す、との思いが込められています。

車両は乗車定員8人のワンボックス車3台

 実証実験が行われるエリアは、町の人口の4分の3強が住む同町の西地区内に設定されています。今回の実験で、同協議会はエリア内に115か所の乗降場所を設定。配車予約の方法は、スマホアプリ(終日受付)もしくは電話(平日の午前8時45分~午後0時・午後1時~午後4時受付)の2種類を用意しています。

 使う車両は、乗車定員8人のワンボックス車3台。運賃は、住民に乗り慣れてもらうために今回は無料にしていますが、本格運行時には有料化する予定です。実験期間は2月1日~28日までの1か月間で、運行時間は午前9時から午後5時まで。

阪急バス社長「実験を通じて実際にどうなのかを検証」

 1日午前の出発式で、阪急バスの井波洋社長は、「実験エリアの面積や人口を踏まえて、稼働台数を3台にすれば(予約してから)10分ほどの待ち時間でご乗車いただける、というシミュレーションを行っています。実験を通じて実際にどうなのかを検証します」と話しました。

町長「町外の人々から選ばれる町にしていきたい」

 同町の塩川恒敏町長は「町外の人々から選ばれる町にしていきたい。そのためにこのHANI+が走り回って活躍することが一番の願い」として、このバスによる交通利便性の向上と町の活性化の実現に期待しました。
(取材・文:具志堅浩二)

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最終更新:2/16(木) 22:36

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