新型「フリード」発売1年でライバル「シエンタ」に打ち勝つことはできたのか?

6/7 9:02 配信

東洋経済オンライン

 ホンダ屈指の人気モデルのひとつ、コンパクトミニバンの「フリード」。その現行モデルの発売は2024年6月28日で、早くも1年を迎える。

 では、この新型フリード、販売状況はどうなのだろうか?  売れ行き具合をチェックしてみよう。

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■「最高にちょうどいい」でヒットした初代から

 コンパクトな車体の中に3列シートを詰め込んだ、ホンダ・フリード。「This is サイコーに ちょうどいい Honda!」をキャッチフレーズに、2008年に初代モデルが誕生した。

 ショーン・レノン氏(元ビートルズ、ジョン・レノン氏の息子)を起用したCMが話題になり、初代フリードの販売は好調にスタートする。

 2011年にハイブリッドを追加すると、翌2012年には初代モデルで最高となる年間販売台数10万6316台を記録。軽自動車を含まない登録車年間販売ランキングでは、この年に初代として最高の4位も得ている。

 文句なしのヒット車となったフリードは、発売8年後の2016年に第2世代へとバトンタッチ。それから、やはり8年後となる2024年に、第3世代となる現行モデルにフルモデルチェンジした。

 この第3世代の特徴は、「ほとんどキープコンセプト」であることだ。

 「日々の暮らしに笑顔をもたらすクルマ」をコンセプトとするが、基本となる「コンパクトミニバンとしての基本価値」は従来モデルを踏襲している。

 その価値とは「扱いやすいこと」「リアシートアレンジが簡単にできること」「3列どの席でも快適に座れること」「らくらくウォークスルーできること」。だが、このどれもが、初代から大切にしてきたことばかりだ。

 ホンダの最新ハイブリッドシステム「e:HEV」を採用するなど、パワートレインや運転支援システムは新しくなっているが、プラットフォームは従来モデルの改良版となる。

 心臓部や装いはリフレッシュされているが、骨格や基本の部分は継承する――。

 つまり、歴代フリードの魅力を大切に受け継ぎつつも、最新技術を採用して全方位的に進化したのが現行モデルなのだ。

 どんなモデルでも世代交代に際して「常に新しい価値」を生み出そうとするのがホンダの流儀である。そのため先代を否定するようなフルモデルチェンジも多い。

 ある意味、フリードのようにキープコンセプトの正常進化は、ホンダ車にとっては珍しいパターンなのだ。

 結果として現行フリードは、業界でも高く評価されている。ホンダとしては、2010-2011年の「CR-Z」以来、14年ぶりに「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」のグランプリを獲得しているのだ。

 筆者も試乗しているが、先代の良さを上手に継承しつつ、しっかりと走りを磨き上げているところが好印象であった。

■トップ10に入る唯一の「トヨタ車以外」

 そんな新型フリードは、どれだけ売れたのか。モデルチェンジ直前となる2024年1〜6月の登録車販売ランキングは7位。前年比で88.3%であった。

 そして新型が登場し、6月下旬から発売された後、7月から11月にかけての販売は前年比およそ135〜160%で推移する。

 その結果、2024年を通しての販売ランキングは5位に。旧型での2024年前半戦が7位だったところ、新型をあわせた通年では順位を上げた。

 そして、2025年に入ってからは1月こそ7位だったものの、2月には4位に上がり、3月、4月と4位をキープ。前年比は約116〜170%と好調さを維持している。もちろん、ホンダ車としてはトップの順位だ。

 ちなみに2025年4月の登録車販売ランキングのトップ10は、4位のフリード以外、すべてトヨタ車で占められている。圧倒的強者であるトヨタにただ一人割って入ったのが、フリードであったのだ。

 のべ販売台数はどうかといえば、2024年7〜12月で4万6939台、2025年1〜4月で3万5335台。11カ月で8万2274台であり、年間9万台弱というペースで売れているのだ。

 軽自動車を含めれば「N-BOX」に敵わないが、この成績は立派だろう。

 では、過去のモデルと比較すると、新型フリードの売れ行きはどうか。

 初代モデルの発売翌年となる2009年は年間7万9525台で、販売ランキング7位。

 この初代モデルは、翌2010年に9万5123台で5位、2011年に67736台で6位、2012年に10万6316台で4位となり、その後、年間6万台、5万台……と、徐々に販売数と順位を落としてゆく。

 2代目モデルは、登場翌年の2017年に10万4405台で5位を獲得。その後も年間7〜8万台を最後までキープした。

 初代も2代目も年間10万台レベルが最高点であったと考えると、発売初年に年間9万台ペースで売れている現行モデルは、過去とほぼ同等といえる。

 ホンダの他のモデル、具体的にいえば「フィット」や「ヴェゼル」「ステップワゴン」が、いまひとつであることを考えると、相当に良い成績だろう。

■永遠のライバル「シエンタ」との比較

 最後に、フリードの最大のライバルとなるトヨタ「シエンタ」との販売成績を比較してみよう。

 歴史を振り返ると、先にデビューしたのはシエンタのほうだ。2003年に生まれた初代モデルは、2010年に一旦生産を終了するものの、翌年に再開。誕生から12年後の2015年まで作り続けられた。

 フリードは、その間となる2008年に初代が誕生。満を持しての「シエンタのライバル登場」とあって、シエンタの2倍以上を売るほどの圧勝であった。

 しかし、2015年に2代目シエンタがデビューすると、状況は一変。フリードがモデル末期であったこともあり、2016年は逆にシエンタが、フリードの2倍以上を販売する。

 2016年秋にフリードが世代交代して“2代目対決”となると販売台数は拮抗し、フリードが勝つ年もあればシエンタが勝る年もある、といった具合に。

 そして、2022年にシエンタが3代目になると、モデルライフ末期の2代目フリードは分が悪く、2023〜2024年はシエンタが上回る。

 特にフルモデルチェンジ翌年の2023年は、フリードが7万7562台だったのに対して、シエンタは13万2332台と2倍に近い大きな差となった。

 2024年にフリードが現行モデルになり、いまは“3代目対決”が繰り広げられている。ただし、残念ながら逆転することはできていない。

 2024年後半から2025年にかけて、月販で一度もフリードはシエンタを上回ることができていないのだ。

 ちなみに、シエンタの2024年通年の販売ランキングは3位。2025年になっても、シエンタは常にフリードよりも上にいる状態だ。

■出来はよくてもライバルは強かった

 振り返ってみれば、3代目となった現行フリードは、これまでの伝統であった魅力をしっかりと受け継ぎ、それを磨き上げて作られた実力の高いモデルだ。

 高評価の通りに、歴代モデルと遜色ない販売成績を収めている。近年不調が続く、他のホンダ車のことを考えれば、大健闘である。

 しかし、最大にして唯一ライバルであるシエンタを見ると、フリードの成功も少し色あせてしまうかもしれない。

 現行フリードは、シエンタを見て開発されているはずだ。実際に比較試乗しても、決してフリードがシエンタに劣るわけではない。それどころか、乗り心地や安定性といった部分では、フリードが勝っていると思えた。

 それでも販売に関していえば、シエンタにフリードは敵わなかったことになる。クルマとしての魅力にくわえ、ベース価格を抑えた価格設定も功を奏しているのだろう。

 販売ランキングのベスト10中、9モデルをトヨタ車にしたトヨタの販売力の強さに驚くべきだろうか。

 フリードの出来のよさを感じるほどに、シエンタとトヨタの強さを感じるばかりである。

【写真】現行「フリード」AIR&クロスターのデザインとディテール(50枚以上)

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最終更新:6/7(土) 9:02

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