54歳契約社員。末期がんの父と認知症の母の介護にお金がかかり、自分の貯金がなくなりそうです
◆このまま両親に自分の老後資金も食い潰される不安でいっぱい
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。
今回の相談者は、有料老人ホームに入居している末期がんの父親と認知症の母親の医療費にお金がかかり、両親の年金だけでは払えず、自分の貯金を切り崩している54歳の女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
▼相談者
介護疲れさん(仮名)
女性/会社員/54歳
借家
▼家族構成
一人暮らし
▼相談内容
契約社員で働いていますが、自分の老後資金について心配です。現在、両親の介護費用が年金だけでは足りず、有料老人ホームに入居している末期がんの父のオムツ代や生活日用品などは私が負担しています。
母は軽度認知障害(MCI)ですが、自宅で独居中。半年前までは同居していましたが、暴力などで私の勤務に支障をきたすまで精神的に追い詰められてしまい、近くの賃貸マンションに転居しました。
母の年金支給はほぼないため、母名義の貯金を切り崩して生活していますが、認知症状なのか浪費が激しくなり、数カ月後には底をつく見込みです。
頑張って倹約しているつもりですが、毎月の貯蓄もこれが限界で、骨粗鬆症の母の度重なる入院費用や介護費用などで3カ月に1回くらいは7万~8万円の赤字になります。
私の収入も副業禁止のため増やせそうになく、このまま両親に自分の少ない老後資金も食い潰される不安でいっぱいです。少しでも今後に確保できるような方法などがあれば教えていただければと思います。どうか、よろしくお願いいたします。
▼家計収支データ補足
(1)家族について
父は89歳、母は88歳。親族は母の兄弟が遠方におりますが、サポートは得られません。私には兄弟はおらず、他に頼れる人が誰もおりません。
父が入居している有料老人ホームは、父名義の年金で支払っていますが、毎月5万円程度不足しており、父名義の貯金を切り崩しています。費用を抑えるために転院先を探しましたが、特養は末期がんのため入居を断られ、療養型病院では症状が軽度と言われ、入院を断られています。
母については、現状では施設への入居は考えていません。母本人が実家の所有権を訴えて入居を拒否しており、動かすことは困難です。
(2)収支について
父のオムツ代や施設の日用品などは、家族の小遣いとして計上しています。雑費は母関連のタクシー代や実家のご近所へのお詫びの菓子代などと、自分の日用品など。
両親の貯蓄については、父名義で600万円程度、母名義で200万円を切った程度かと思います。母名義の通帳を確認しようとして、以前、母が暴れて骨折したことがあり、以後、確認ができません。
後見人や社会福祉協議会に管理を依頼しようとケアマネさんを通して説得しましたが、後見人利用は認知症の診断が出ず断念。社会福祉協議会もやはり頑として本人が委託を受け入れず、何も手が打てない状況です。母の入院費や介護費用で赤字が出た分については、私が補填しています。
(3)実家について
実家は、将来的に私が相続することになると思います。実家の築年数はおよそ40年程度。固定資産税は年間28万円程度だったかと思います。リフォームなどは庭も含めて、400万円くらいは必要になるのではないかと思います。相続の可能性があるのは、実家の土地と建物以外はありません。
(4)ボーナスの主な使い道について
家電(父の洗濯を施設で頼まず自分で行う目的で除湿乾燥機を購入)2万円、残りは全て貯金したいのですが、赤字分の補填になってしまうかと思います。
(5)勤め先について
当面契約がありそうですが、その後は未定で最悪は失職する可能性があります。当然60歳以降の話などは期待できず、退職金もありません。
(6)年金について
非正規雇用の期間が長かったため、60歳から受給でも月6万円程度しかないはずです。個人年金保険で月2万5000円ぐらいが入る予定。
(7)貯蓄の内訳について
・普通預金1300万円
・定期預金600万円
▼FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:自分のことを最優先でいい。ご両親の貯蓄を使い切っていい
アドバイス2:非正規雇用、パートでも年100万円あれば、大丈夫
アドバイス3:実家の活用も検討を。住むだけがベストな選択ではない
◆アドバイス1:自分のことを最優先でいい。ご両親の貯蓄を使い切っていい
ご相談内容を拝見し、胸が締め付けられる思いです。ここまで、おひとりで、よくやってこられたと思います。お母さまとの同居をやめ、賃貸マンションに転居されたのは、正解です。これ以上、介護疲れさんが頑張らなくていいです。ご自身の健康を第一に考えてください。
現在、お父さまの有料老人ホーム入居費用以外の負担をされているとのことですが、介護疲れさんの資産から取り崩すのは、もう少し後でもいいでしょう。ご両親の貯金は合わせて、800万円あります。まず、ここから、ご両親の介護費用、生活費を出すようにしてください。
今も年金の不足分をお父さまの貯金から切り崩しているということで、800万円がいつまで持つのかを明確にはいえませんが、ご両親の貯金がなくなった段階で、介護疲れさんが負担することにすれば、少なくとも現状の赤字はなくなり、精神的にもラクになるのではありませんか?
お母さまの通帳を確認できないようですが、お母さまの貯金が底をついたら、お父さまの貯金を使うようにすればいいのです。ご両親の貯金は、ご両親が使いきればいいのです。
また、あえて申し上げれば、お父さまがお亡くなりになったあと、遺族厚生年金がお母さまに支払われることになります。
お父さまの年金が厚生年金であればですが、それなりの遺族年金額になると思われます。これについては、年金事務所で確認してみてください。介護疲れさんが、すべてを背負う必要はありません。
今は、できるだけ長く働き、ご自身の資産の取り崩しを少しでも遅らせることです。
◆アドバイス2:非正規雇用、パートでも年100万円あれば、大丈夫
介護疲れさんの雇用契約自体も不安定で、ご心労があることでしょう。仮に来年以降、契約更新がなくても、年100万円をパートやバイトで確保するようにしてください。年100万円であれば、それほどハードルは高くないでしょう。
現在の支出から、お父さまの費用負担をなしにすると、毎月の支出は10万円。年間で120万円です。年100万円の収入があれば、年間で20万円の赤字。これは資産から取り崩すことになりますが、来年から60歳までの5年間で100万円です。
現在の資産は1900万円ですから、60歳時点で1800万円残ることになります。
60歳から個人年金保険の2万5000円が入りますが、65歳の公的年金の受給までどうするかです。
働くペースを落として、年50万円でもいいので、収入を得ることで、資産の目減りを少なくすることができます。現時点では、そこまで考えられないかもしれませんが、それほど老後を悲観する必要はありませんよ。
◆アドバイス3:実家の活用も検討を。住むだけがベストな選択ではない
将来的に、ご実家を相続することになるとのこと。そうなれば、現在かかっている住居費が浮きますので、生活はだいぶラクになるでしょう。
ただ、ご実家の固定資産税もやや高く、リフォーム代も400万円を想定しているとなると、別の選択もあるのではないでしょうか。
リフォーム代の400万円は、今の家賃で考えると7年強で元が取れる計算です。加えて固定資産税の支払いもとなると、果たして実家に住み続けるのがベストなのか、ということです。
相続後に、売却することも視野に入れていいでしょうし、今は難しいようですが、万が一、お母さまが今後、老人ホームなどに入居するようなことがあれば、ご実家を売却し、その資金に充てることもできるでしょう。
ご実家に思い出や思い入れがあるかもしれませんが、どうかご実家に縛られず、ご自身の老後がゆとりあるものにしていただきたいと思います。
最後に、地域の社会福祉協議会やケアマネージャーさんと連携が取れているのは、素晴らしいです。一人で問題を抱え込まずに、地域の支援を活用してください。特にケアマネージャーさんとは、ご両親の状況の変化などの情報を共有するようにしてください。
頑張らなくていいので、ゆっくり時間をかけて事態が好転することを、心から応援しています。
◆相談者「介護疲れ」さんから寄せられた感想
早速先生のお返事をいただき、ありがたく拝見しました。今まで不安に感じていたところも、具体的に道筋を立てていただき、少し前向きに過ごせそうです。また改めて残り少ない両親の日々に穏やかに接することができるようになりそうです。ありがとうございました。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
あるじゃん(All About マネー)
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最終更新:11/12(火) 22:20