【為替本日の注目点】ECB5会合連続で政策金利据え置く

4/12 10:50 配信

サーチナ

 ドル円は東京時間では上値は重かったが、欧州からNYにかけてはドル買い優勢となり153円32銭まで上昇。3月のPPI発表を受け売られる場面もあったが勢いはなく、米金利高に支えられドルは底堅く推移。ドル高の流れはユーロドルにも波及。ユーロはおよそ2カ月ぶりに1.0699まで下落。株式市場はまちまち。ダウは小幅安に終わったが、ナスダックはハイテク株の上昇がけん引し、271ポイント高。債券は続落。長期金利は4.58%台に上昇。金は反発し最高値を更新。原油は反落。

新規失業保険申請件数 → 21.1万件
3月生産者物価指数 → 0.3%(前月比)

ドル/円 152.80 ~ 153.32
ユーロ/ドル 1.0699 ~ 1.0756
ユーロ/円 163.94 ~ 164.52
NYダウ -2.43 → 38,459.08ドル
GOLD +24.30 → 2,372.70ドル
WTI -1.19 → 85.02ドル
米10年国債 +0.043 → 4.587%

【本日の注目イベント】
日 2月鉱工業生産(確定値)
中 中国 3月貿易収支
独 独3月消費者物価指数(改定値)
英 英2月鉱工業生産
英 英2月貿易収支
米 3月輸入物価指数
米 3月輸出物価指数
米 4月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会に参加
米 コリンズ・ボストン連銀総裁、インタビュー
米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
米 企業決算 → ウェルズファーゴ、JPモルガン、ブラックロック、シティグループ

 前日のNYで153円24銭まで上昇し34年ぶりのドル高水準を更新し、ほぼその日の高値圏で帰ってきたドル円でしたが、やはり東京時間の動きは、極度の介入警戒感と実需のドル売りがそれ以上のドルの上昇を抑えていました。神田財務官は昨日の午前「足元の動きは急だ」と述べ、「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」と、これまでの「定型文」を繰り返しました。153円台まで円安が進んだことについて、「必ずしも特定の水準を念頭に置いて判断しているわけではない」とする一方で、「過度な変動は国民経済に悪影響を与える」と述べました。

 「152円が介入ライン」との噂もあった中、153円台でも介入の姿は見られないことに、筆者の方にも「介入はないのか」といった問い合わせもありました。財務官の口調もきつめの物でしたが、円が151円台後半まで売られた際に発した言葉と、ほとんど変わってなく、言葉の調子からは「介入が近い」とは感じられない印象でした。もっとも、それが「作戦」であって、事前に介入を察知されてはその効果も低減することは「百も承知している」はずです。一方で、さらに円安が進んでも行動を起こさないと「オオカミ少年」のレッテルを貼られることにもなり、金融当局の信頼にもかかわって来ることにもなります。昨日の海外市場でもドル円は小幅ですが上値を切り上げ、153円32銭まで買われましたが介入はありませんでした。米金利の上昇がドル高を支える動きとなっており、ユーロドルは2月15日以来となる1.07前後まで売られ、こうなると当局がたびたび発してきた「ファンダメンタルズに沿った動きではない」とは言えない状況です。米長期金利は昨日4.58%台まで上昇し、昨年11月以来5カ月ぶりの高水準となり、再び金利差が意識される展開になっています。ただこのまま円安が放置されることはなく、当局は介入のタイミングを綿密に探っており、あとはタイミングだけの問題かと、筆者は予想しています。

 ADP雇用者数、雇用統計、CPIと、先週から次々と米経済の力強さを裏付けるデータが発表され、これらがドル高を演出してきましたが、昨日の3月の生産者物価指数(PPI)は予想を下回り、当局者はやや「ほっと」したところでしょうが、昨日発言した全てのFOMCメンバーはこれまでの認識を「利下げ開始を遅らせる方向に」バイアスがかかってきた印象です。NY連銀のウィリアムズ総裁は「金融当局はインフレと雇用の目標におけるバランス改善に向け、極めて大きな進展を遂げた」としながらも、「ごく近い将来に政策を調整する明確な必要性はない」と述べ、ボストン連銀のコリンズ総裁も、「全体として、最近のデータは私の見通しを大きく変えるものではないが、時期に関する不確実性と忍耐の必要性を浮き彫りにしている。正当化され得る今年の政策緩和が従来考えられていたよりも少ないことを示唆している」と語っています。またリッチモンド連銀のバーキン総裁は、「われわれはまだ、望んでいる状況に達していない。より長期的な道筋は、われわれが正しい方向に向かっていることを示唆しているが、時間をかけることが賢明だろう」と話しています。さらに、現時点で最も「タカ派」と見られるミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の発言にも触れておく必要があります。カシュカリ総裁は、「インフレ率が横ばいで推移し、実際に低下しない時期が長いほど、われわれはインフレに打ち勝つ確信を得るまで無期限で一時停止する必要があると言わざるを得ないだろう」と語り、「インフレ率が目標の2%へ順調に低下しているとの確認が持てれば、当局者は利下げに踏み切るが、最近のデータからその確信は得られない」と続けています。(ブルームバーグ)さすがにタカ派の代表ですね、「無制限で一時停止する」(We should pause indefinitely)という言葉を使っていました。

 ECBは11日の政策委員会会合で、5会合連続の政策金利据え置きを決めました。声明文では、「インフレ見通し、基調的なインフレの動向、金融政策伝達の強さに関する政策委員会の最新の評価で、インフレが持続的に目標に向けて収束しているとの確信がさらに強まった場合、政策委による景気抑制の度合いを現在の水準から引き下げることが適切だろう」とあり、これまでよりさらに利下げのタイミングを明確にしたものでした。ラガルド総裁は声明文発表後の記者会見で、「4月には幾つかの情報とデータが得られる。何人かの政策委員会メンバーはインフレ低下について既に十分な自信を持っている」と述べ、「しかし、6月には(新たな経済見通しなど)さらに多くのデータと情報が得られるだろう」と、6月会合で行動する可能性を重ねて示唆していました。

 利下げのタイミングが後ずれする米国。6月に利下げを開始する可能性が極めて高い欧州。そして、緩和的金融環境を維持し金利の上がらない日本・・・・・。「ドル独歩高もむべなるかな」といった状況です。

 本日のドル円は152円~153円80銭程度を予想します。上でも述べたように、当局の介入警戒感が極めて高い中でも、実施されていません。今日は金曜日です。思い起こせば、2022年10月の「実弾介入」も「金曜日」でした。最大限の警戒網を解くべきではないと考えます。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)

サーチナ

最終更新:4/12(金) 10:50

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