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習近平の「次の一手」がキナ臭い…!好調ロシア経済と中国の「戦時経済化」で緊張が走る「東アジア」悪夢のシナリオ

4/11 11:46 配信

マネー現代

経済が沈みゆく中国の「軍事強国化」への懸念

(文 藤 和彦) アメリカのイエレン財務長官が4月5日に訪中し、EVや太陽光パネルを筆頭に、政府の補助金による過剰な生産性の改善を求めた。

 前編「習近平がもくろむ中国「戦時経済化」の悪夢…! まさかの好況「ロシア・プーチン」の悪魔のささやき」でお伝えしたとおり、イエレン長官は、広州市でのスピーチでこう語ったという。

 中国は「外国企業へのアクセスに障壁を課し、米企業に対して強圧的な行動をとるなど不公正な経済慣行」に関与してきたと指摘し、「私は今週の会合でこれらの問題を提起するつもりだ」(「イエレン米財務長官、米企業への中国の「強圧的」動き非難-改革促す」ブルームバーグ4月5日)

 アメリカは、外資しめ出しなど中国の不公正な対応や、非効率な産業を無理やり守ろうと世界に安価すぎる商品を輸出して、デフレを振りまいていると怒っているのだ。

 しかし、中国経済は過剰生産性に陥っており、それを吸収する内需が不動産バブルの崩壊などで過度に低迷しているために、苦境に陥っている。頼みの綱だった外需だったが、欧米の怒りを前に中国経済はますます苦境に立たされることになる。

 こうした状況を見て筆者の頭によぎったのが、中国・習近平国家主席が、「軍事ケインズ主義」に傾注するのではないかという不安である。

 まずは、惨憺たる中国の国内景気について見ていこう。

上海のオフィスの空室率は30%を超えた…

 中国政府が3月31日に発表した3月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.8となり、6ヵ月ぶりに好不調の境目である50を上回った。2月中旬の春節(旧正月)明けで工場の稼働率が高まったからだとされている。

 市場では「世界第2位の規模を誇る中国経済が安定化しつつある」との楽観論が出ているが、回答企業の半数超が「需要が弱い」と認識しており、景況感が持続的に改善していくかどうかは見通せない。

 内需不足を引き起こしている不動産市場の低迷は相変わらずだ。

 中国の民間調査企業によれば、不動産大手100社の3月の新築住宅販売額は前年に比べて46%減だった(2月は60%減)。経営危機に陥っている碧柱園にいたっては前年に比べて83%も減少した。「新築住宅価格は前年に比べて20%以上も下落している」とも言われている。

 商業用不動産市場の状況もひどい。上海のオフィスビルの空室率は30%を超え、記録的な高さとなっている。

 長引く不動産不況が中国の大手国有銀行に悪影響を及ぼすようになっている。

中国の「デフレ地獄」

 不良債権が膨れ上がるなど銀行のバランスシートが悪化し始めているが、中国政府は多額の負債を抱えた不動産企業を積極的に支援するよう求めている。

 国有銀行は地方政府への貸し出しの焦げ付きにも悩まされており、中国で大規模な金融危機が勃発するのは時間の問題なのかもしれない。

 1990年代後半の金融危機後に日本経済がデフレ入りした経緯にかんがみれば、中国の「デフレ地獄」はこれからが本番だろう。

 需要不足にもかかわらず、中国政府は生産力のさらなる強化を目指しており、中国の過剰生産問題はますます深刻になっている。

 「日本のように中国も長期に不況が続く」との懸念が高まる中、「中国は日本のように経済問題を長期にわたって先延ばしする余裕はない」と危機感を露わにする専門家も出てきている(3月29日付RecordChina)。

 「1人当たりのGDPが当時の日本に比べて3分の1に過ぎない」というのがその理由だが、起死回生の秘策ははたしてあるのだろうか。

 そこで筆者が懸念するのが、好調なロシア経済に習近平国家主席がヒントを見いだしてしまうことだ。

 ロシア経済は、3月のPMIが約18年ぶりの高水準を付けるなど好調だ。ウクライナ侵攻から2年を超えたが、前線に兵器を送りつづける兵器工場フル稼働し、23年の国内総生産は前年比3.6%も増えたという。

 戦時経済がもたらす好況のおかげで市民の不満は、ほとんどなく、これが5選を果たしたプーチン大統領の支持率の高さにつながっている。

 このロシアの戦時経済を、筆者は「軍事ケインズ主義」と瓜二つと考えており、まさに、追い込まれた習氏が、欲している経済政策に映るのだ。

中国で、加速する「軍事ケインズ主義」

 軍事ケインズ主義とは「直接的な戦争を含め、経済を回復させるために多額の軍事費を投入する政策」のことだ。ケインズは、1940年に発表した「アメリカとケインズプラン」の中で「戦争準備によりアメリカは大恐慌から復活を遂げる」と主張したが、その「予言」は見事に的中した。

 経済の不振が色濃い状況下でも中国の今年の国防費(中央政府分)は前年比7.2%増の1兆6655億元(約34兆8000億円)と増えているが、注目すべきは中国が2017年から「軍民融合(ハイテク分野を始めとする民間技術の軍事転用で軍事力の強化を加速する戦略)」を進めていることだ。中国政府はすでに軍事ケインズ政策に着手していると言っても過言ではないだろう。

兵営国家と化す中国

 軍事ケインズ主義はカンフル剤としての効果は抜群だが、中長期的に見ればマイナスの面の方がはるかに大きい。1980年代の旧ソ連が米国との軍拡競争に引きずり込まれたせいで自滅してしまったことはあまりにも有名だ。

 中国政府も旧ソ連の失敗を十分承知しているだろうが、経済の早期回復のために打つ手は限られている。軍事ケインズ政策に傾倒せざるを得ない状況に追い込まれ、「兵営国家」化が一気に進んでしまうのではないかとの不安が頭をよぎる。

 中国の不況は、経済面にとどまらず、東アジア地域の地政学環境にまで悪影響を及ぼすことになってしまうのではないだろうか。

 さらに連載記事「「EV」がアメリカだけでなく中国でも絶不調に…トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで「中国EV大ピンチ」の深刻すぎる実態」でも、中国経済の深刻な状況をお伝えしているので参考としてほしい。

マネー現代

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最終更新:4/11(木) 11:46

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