忙しくても神社に行く人が成功者になれる理由 近所に寺院・神社があるだけで人生に好影響

5/27 15:02 配信

東洋経済オンライン

年始や期初に限らず、日頃から社寺(神社・お寺)を参拝する習慣のある人は、誠実性や勤勉性が高く、優秀で健康的なビジネスパーソンが多い。なぜそう言えるのか、神社を探求する社会心理学者の八木龍平氏に納得の理由を聞いた。
※本記事は八木龍平著『成功するビジネスパーソンは、なぜ忙しくても神社に行くのか?』の内容を一部抜粋したものです。

■神仏は孤立を防ぎ、人と「つながる力」の基盤になる

 社寺の存在には、人間一般への信頼を高め、人と協力的な関係を築く効果があります、と言うと驚かれるでしょうか? 

 「こんな人たちのために努力したくない」と思うと、人はやり抜く気になれません。せいぜい自分のために「クビにならない程度に」「最低限やる」くらいのやる気でしょうか。

 ですから、会社に神社があろうと何があろうと、そもそも会社に人をやる気にさせる、協力的な風土をつくるのは大事なことです。

 ただ、会社だけの問題ではなく、ある個人が人間不信だと、どんな組織にいようと「こんな人たちのために努力したくない」となります。

 子供の頃から社寺で神仏になじむことは、人間信頼を育み、孤立を防ぎ、人と協力的につながる力の基盤になります。人間不信にならない仕組みが神仏にあるのです。

 その根拠となるデータは、大阪大学社会経済研究所で、全国1万8235人を対象に、ソーシャルキャピタルと所得・幸福度・健康との関係を統計分析した論文です。ソーシャルキャピタルとは、人間関係を財産の一種と捉える考え方です。

 この論文の結論を言うと、小学生の頃、近所や通学路に寺院・地蔵・神社があると人への一般的信頼や互恵性・利他性が向上します。

 互恵性とは、与え合いの精神。自分のメリットだけを追わず、お互いのメリットになる行動を取れる人間性です。利他性は他者のメリットや幸福のために行動できる人間性をあらわします。

 人への一般的信頼や互恵性・利他性は、所得の向上には関係しませんが、幸福度と健康の向上にはプラスの影響を与えます。要するに子供の頃、身近にお寺・お地蔵さん・神社があった人たちは、なかった人たちよりも、ちょっと幸福で、ちょっと健康なのです。なぜなら、人と信頼関係や与え合いの関係を築ける可能性が高いからです。

■身近に社寺があると、人のいい部分を知ることができる

 「ただ存在するだけで、そんな影響があるのか?」と不思議に思う方もいるでしょう。

 実は、「社寺がある地域は住民の地域愛が増す」という論文もあります。それとの共通点を申し上げると、「人間をより良く(善く)思うこと」です。

 地域愛が増す要因は、その地域住民がいい人だと知ることです。「うちの近所はいい人が多い」(だから近所はいい環境)と思える状況です。会社でも、「うちの職場はいい人が多い」(だからいい職場)と思っている方も多いでしょう。

 人を一般的に信頼するのも、信頼に足るいい人だと思えるからです。つまり、社寺があると、どういうわけか、その社寺の参拝者や社寺の近所の人達は「参拝者はいい人が多い」「周りの人間はいい人が多い」と、人々のいい部分を「知る」のです。

 世界中の人々がいい人、とまで思えるかは不明ですが、自分が住む社会の人達については、いい人な部分を知るようです。

 もちろん、神社やお寺に参拝しても、他の参拝者の人柄を知る機会はほとんどありません。にもかかわらず、人のいい部分をより知ります。この謎について、ひとつ私なりの解釈があります。

・社寺に参拝すると、知らぬ間に、ちょっといい人になる。
・社寺に参拝すると、知らぬ間に、ちょっといい人になったことで、ちょっといい影響を人に及ぼすようになり、近所の子供や住民にも、ちょっといい影響を与える。
 この根拠は、拙著『成功している人は、どこの神社に行くのか?』(サンマーク出版)でおこなった1200人の調査データです。神社参拝とお墓参りの両方をする人たちには、性格に特徴があったのです。

■「業績が上がり、健康な人」が実践する秘訣

 人の性格の中で、「この性格の人は、採用するといい人材の可能性が高い」と分かっている性格がひとつだけあります。その性格は、「誠実性」や「勤勉性」という言葉であらわされます。

 性格の基本を5つに分類するビッグファイブ・モデルというものがあります。性格をあらわす言葉を辞書からすべて拾って、統計分析をくりかえす調査研究が長年おこなわれたのですが、現在はこの5つの分類に落ち着いています。

①外向性(にぎやか、元気、おしゃべり、活発、人付き合いに積極的)

②協調性(親切、やっかいでも人を助ける、人情がある、思いやりがある、世話好き)
③誠実性・勤勉性(徹底的、計画的、注意深い、根気がある、仕事に精力的)
④情緒安定性・神経症傾向(穏やか、落ち着いた、おおらか、心配しない)
⑤知性・開放性(本質を見抜く、分析的、好奇心がある、広い知識、豊かな発想)
 5つの性格の中から誠実性・勤勉性に注目したのは、職業上の成績評価と最も関連するからです。誠実性・勤勉性の高い人は、会社での評価も高い傾向にあるのです。

 また、誠実性は長生きと関連します。『長生きの統計学』(川田浩志著/文響社)に紹介されている、米国の国際的な疫学専門誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー』に掲載されたヘルシンキ大学の研究者らによる調査では、ビッグファイブ・モデルの5つの性格の中で、誠実性(勤勉性)のみが死亡リスクと関係。誠実性(勤勉性)が高いと判定された人たちは、低いと判定された人たちよりも、死亡リスクが30%以上低いと報告されています。

 誠実で勤勉な人は、優秀なビジネスパーソンで、健康的な人が多いのです。

 「無事之(これ)名馬」というように、健康はビジネスパーソンにも重要ですよね。誠実性(勤勉性)とは、自己コントロール能力です。自己コントロール能力の高い人たちは、健康的な生活習慣を守る確率が高いのでしょう。

 また、誠実性(勤勉性)を判定する項目は、「GRIT」(やり抜く力)との共通点が多く、中身はほぼ同じです。やり抜く力にも、また自己コントロール能力の高さは必須と言えます。

■神社によく参拝する人は、誠実性が高い傾向にある

 この誠実性・勤勉性、社寺参拝と関係します。それを示すのが、先ほど触れた『成功している人は、どこの神社に行くのか?』でおこなった調査です。1200人を対象に、次の4つのグループをつくり、各グループと性格との関係を分析しました。

①神社によく参拝し、お墓参りにはあまり行かない(神社◯ お墓×)
②神社によく参拝し、お墓参りにもよく行く(神社◯ お墓◯)
③神社に参拝せず、お墓参りにも行かない(神社× お墓×)

④神社にあまり参拝せず、お墓参りにはよく行く(神社× お墓◯)
 そのうえで、神社とお墓参りの参拝タイプ別に、どれくらい誠実性(勤勉性)があるのか評価しました(誠実性の評価は、『主要5因子性格検査ハンドブック 三訂版』〈村上宣寛・村上千恵子著/筑摩書房〉に紹介されている勤勉性12項目を用いて、次の5段階で自己評価してもらいました。「1:まったく当てはまらない 2:あまり当てはまらない 3:どちらとも言えない 4:やや当てはまる 5:よく当てはまる」)。

 その結果を見ると、神社参拝もお墓参りもよくする人は、誠実性(勤勉性)が高い傾向にあります。神社にもお墓参りにも行く人は、業績をあげる人材で、かつ健康な可能性が高いのですから、会社としても採用したい人材の可能性が高いと言えます。

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最終更新:5/27(月) 15:02

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