区営住宅の落選者に年30万の家賃補助、杉並区の「都内初」住宅政策《楽待新聞》
東京都杉並区が、都内初となる住宅支援施策を始める。区営住宅の入居抽選に落ちた人を対象に、年間30万円の家賃補助を行うというものだ。
区は新制度の対象となる36世帯分の1080万円を、来年度の予算に盛り込んだ。議会で予算の承認を得て、4月以降に始動する見込みだ。
対象者は限定的だが、区が入居者に対して家賃補助を行うという今回の制度は、大家にとっても気になるものだろう。いったい、どのような運用がされるのだろうか? 杉並区の住宅課に詳しい話を聞いてみた。
■公営住宅の代わりに、民間の住宅ストックを活用
杉並区はこれまで、「住まいは生活の基盤」との考え方を積極的に示してきた。一方、居住が不安定な人への支援には課題を感じていたという。
低額所得者向けの住宅としては公営住宅があり、世帯の月収が15万8000円以下(障がい者・高齢者・未就学児がいる世帯は21万4000円以下)の場合に入居可能だ。
しかし、希望者が多く、入居が叶わないケースもある。国土交通省の資料によると、2021年度の公営住宅の公募倍率は、全国平均で3.6倍、東京都が16.9倍、大阪府が4.9倍となっている。
そうした状況の中で、区は民間の賃貸住宅の空室に着目。住宅ストックを有効に活用した施策として、この新しい制度を設けた。
民間の賃貸住宅は、公営住宅よりも家賃が高い傾向にある。低額所得者にとっては大きな負担になりうることを踏まえ、区は年間で30万円(1カ月あたり2万5000円)を助成する。ひとり親世帯と子どもが3人以上の世帯が対象だ。
2024年度は、条件を満たす世帯が36あった。これらの世帯に助成する金額として1080万円(30万円×36世帯)が2025年度の予算に盛り込まれた。議会の予算承認を経て、4月以降に本格的に始動する見込みだ。
「区営住宅の抽選に落選したこと」を条件に補助金を「前払いする」制度を設けたのは、都内では初めて。ちなみに全国では、神戸市が「公営住宅に落選したこと」などを条件とした補助金を交付した例があった。
■対象世帯に30万円を一括前払い
区営住宅の落選者に対象を限定した、全国的に見ても珍しい今回の制度。気になるのは、実際どのように運用されるかという点だろう。
杉並区の住宅課長によると、補助金の支払いは一括の前払い。対象の世帯には手続きが完了次第、まとめて30万円が振り込まれるという。
毎月の家賃の支払い負担を減らす目的である補助金だが、対象者が家賃以外の用途に使ってしまう可能性もあるだろう。
こうした懸念に対しては「毎月、家賃の支払い状況を何らかの形で報告してもらうようなことを検討している」とのこと。本制度において区から物件オーナーに直接支払う形態は、現時点では検討されていない。
なお、助成の上限は1世帯当たり2回(60万円)まで。1回目の補助金を受け取り、その後の1年間でも区営住宅の入居抽選に落選してしまった場合に2回目の助成の対象となる。
また、現状、対象者が住む賃貸物件に条件は設けていない。ただ、細かい要項や、区の審査を挟むのかという点も含めて、今後検討が進められる予定だ。
杉並区のような動きが今後広がっていくのか、各自治体の動向に注目したい。
不動産投資の楽待
関連ニュース
- 「毎年1棟」購入で総投資額1億円、拡大急ぐ大家が「二度と買わない」と誓う物件とは
- 「お宝物件」は探さず「作り上げる」、サラリーマン投資家が投資手法を築くまで
- 手取り20万円の会社員、「分散投資」で純資産1億円築くまでの道のり
- 不動産の含み益は4500億、アクティビストに狙われた「東京ガス」のいま
- 最近、日本の銀行も言い始めた「ウェルスマネジメント」って何なんだ?
最終更新:2/9(日) 19:00