ベネチア観光に入場料1日840円、オーバーツーリズム対策で徴収開始

4/26 15:22 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 観光客が押し寄せ地域住民の生活が脅かされる「オーバーツーリズム」に長年悩まされてきたイタリア北部ベネチアで25日、日帰り客に5ユーロ(約840円)の入場料を徴収する制度が導入された。これは世界初の試みで、都市が観光客と住民の要望とニーズのバランスをどう取っていくべきかを巡り注目を集める社会実験となりそうだ。

徴収対象となるのはベネチアに在住、在勤、在学していない日帰り客で、午前8時半から午後4時までに訪れる場合に適用される。期間は25日から7月半ばまで週末を中心に計29日間。ブルニャーロ市長によると、ホテル宿泊者などは支払い不要。

入場料を支払わない者には50ユーロから300ユーロ(約5万円)の罰金が科されるが、当局はそれ以上の罰則や懲役刑は想定していないとしている。観光客は事前に支払うか、ベネチアのサンタルチア駅などの主要なアクセスポイントに到着してから支払うことになる。

ブルニャーロ市長は「ベネチアは入場料を実験的に導入した最初の都市になる。この料金で、ベネチアの生活の質を向上させ、より安全で清潔にし、より多くのサービスを提供することで、市民と観光客を幸せにしたい」と述べた。

入場料導入に抗議する人々らは25日に旧市街への入り口で、「ベネチアは守るべきものであり、売りに出すべきものではない」と書いたプラカードを振りかざしてデモを実施。オーバーツーリズムの規制には観光客に入場料を課すのではなく、すでに住んでいる人々へのサービスや住宅供給を増やすことが必要だと主張した。「恥を知れ」と叫ぶ一部のデモ参加者と警察との小競り合いの映像もテレビで伝えられた。

今回の試験的スキームは一定期間実施された上で当局がその後、1日当たり観光客数の上限設定の可能性も含めてスキームの継続の是非やどう継続していくかを評価する。ベネチアでは、海面上昇の脅威に常にさらされているラグーン(潟)に浮かぶ島々に築かれた旧市街地からの住民流出が絶えない。オーバーツーリズムのため歴史的地区では手頃な賃貸物件が減り、医療などの重要サービスさえも失われている。

ベネチア旧市街への観光客流入を規制するシステムを導入する是非や、その方法についての議論は、新型コロナウイルス禍の前から始まっていたが、この街を世界遺産に登録する国連教育科学文化機関(ユネスコ)が昨年、「危機にさらされている世界遺産(危機遺産)リスト」への追加を勧告したため、対策が前倒しされた。ユネスコは結局、危機遺産登録を見送った。

また、改札口や堅固な障壁が設置されるとの臆測もあったが、市当局は代わりに、より柔軟なモデルを採用。監視員が訪問者の入場料支払いをサポートし、QRコード表示で支払い状況を確認する方式をとった。ブルニャーロ市長はベネチアが「閉ざされた都市」になることはないと明言した。

原題:Venice Introduces Daily Fee for Visitors to Combat Overtourism(抜粋)

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最終更新:4/26(金) 15:22

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