香川ではキャンパス移転、愛媛では駅舎リニューアル…再開発が相次ぐ四国《楽待新聞》

3/23 19:00 配信

不動産投資の楽待

2024年、四国地方で再開発の動きが相次いでいる。コロナ禍の影響が薄れ、活気が戻りつつあり、主要駅の周辺を中心とした街づくりなどが活発になっている。

中でも香川県では、四国一の乗降者数を誇る高松駅周辺で、駅ビルをはじめとした大型事業が進められている。愛媛県でも、JR松山駅周辺、伊予鉄道の松山市駅周辺で整備が行われているところだ。

今回は、四国地方の再開発・街づくりなどに関する動きを総観していこう。

■高松駅周辺で複数の開発事業がすすむ

四国の中でも、特に香川県の高松駅周辺は建設ラッシュだ。現在、4つの大型プロジェクトが進んでいる。

その目玉とも言えるのが、駅北側に本日(3月22日)開業した商業ビル「TAKAMATSU ORNE(タカマツ オルネ)」だ。商業棟と駐車場棟の2つで構成されている。

商業棟の1~3階のテナント部分には、四国初出店となる「無印良品」をはじめ、「ツタヤ」や「ニトリデコホーム」など約50事業者が出店する。1階には80席あるフードコートや、地元企業が試験販売できるシェアキッチンが併設されている。

4階には、アンパンマンの生みの親であるやなせたかし氏が四国に縁があることもあってか「高松アンパンマン列車ひろば」という子ども向けのフリースペースが設けられる。ファミリー層の集客にも力が入っているようだ。

また、駅に隣接した敷地には、徳島文理大学の新キャンパス「高松駅キャンパス」がオープンする。

「郊外型キャンパスから都市型キャンパスへ」を標榜し、現在の香川キャンパス(さぬき市)から2025年春に全面移転する。地上18階・地下1階建ての学部棟と、地上8階建てのホール棟を建設中だ。

香川キャンパスの在学者数を参考にすると、おおむね1300~1500人の学生が高松駅キャンパスに通うようになると思われる。

同年3月には、駅から徒歩7分ほどの場所に県立体育館「あなぶきアリーナ香川」もオープン予定だ。

メインアリーナの最大収容人数は中四国最大級の1万人。サブアリーナや武道施設も備えており、プロスポーツの試合やコンサート、国際会議といった幅広く利用されることを想定している。

2027年夏には、外資系の高級ホテル「マンダリンオリエンタル瀬戸内」の開業が控える。高松駅付近と、現代アートの聖地として知られる直島の2カ所でオープンし、四国・瀬戸内エリアを巡る観光を促す狙いがある。

高松駅周辺にできるのは、地上13階建て地下1階の建物。客室92室、レストラン、スパ、ジムのほか、会議室を備える。一方直島には、焼杉を外壁とした伝統的なまち並みに溶け込むような、地上2階建ての古民家風ホテルが建設されるという。

香港に拠点を置く「マンダリンオリエンタルホテルグループ」の日本への進出は、東京に続いて2軒目。インバウンドも視野に入れた観光需要を取り込めるのか注目だ。

■愛媛県の主要駅はリニューアルが相次ぐ

愛媛県でも、観光需要の高まりが期待されている。松山市の観光名所である「道後温泉本館」が、2024年7月、保存修理工事を経て5年半ぶりに全館の営業を再開するのだ。

道後温泉本館は『千と千尋の神隠し』に登場する「油屋」のモデルの1つという話もある。2024年には改築130周年を迎えることからも、国内外から観光客が集まりそうだ。

そんな松山市への玄関口として機能しているJR松山駅の周辺では、現在線路の高架化工事が行われている。都市計画の決定から16年、ついに工事が大詰めを迎える。2024年秋に完成予定だ。

高架化に伴い、駅舎もリニューアルされる。これまでは駅の東西が線路によって分断されていたが、東口・西口間の行き来がしやすくなる。

松山市は、駅東口と西口にそれぞれ広場を整備する予定で、特に東口には大型バスターミナル「バスタ」の整備を目指しているという。

高架化した駅舎の下層階部分はテナントとして活用することも検討されており、「平面駅」だった松山駅が大きな変貌を遂げようとしている。事業全体の完了は2026年度の予定だ。

また、伊予鉄道の松山市駅でも駅前広場の整備が本格的に始まった。

「歩いて暮らせるまち」をコンセプトに、路面電車乗り場の移設やロータリーの整備を行い、イベント空間やベンチなどを設ける。

2024年秋には路面電車乗り場の移設工事が始まり、翌2025年秋には広場の整備が行われるという。全体の完成は2026年秋ごろの予定だ。

松山市駅は、郊外電車と道後温泉などに通じる市内電車の乗り換え拠点で、1日約3万人が利用する。駅としての機能向上とともに、中心市街地の活性化につながるのか、期待が高まっている。

■徳島駅周辺の街づくりに注目

徳島県では、徳島駅周辺の街づくりを巡って議論が巻き起こっている最中だ。駅周辺エリアは、県の中心地でありながら、平面駐車場をはじめとした低未利用地も多いなどの課題があった。

そんな中、駅周辺において新たなにぎわいを創出し、都市の活力を高めようと、県立ホールを含む施設の建設が検討されてきた。

この計画について、2023年秋に後藤田正純知事より、見直しが発表された。規模を縮小して費用を抑えるほか、立地場所そのものを変更する案を固めたのだ。

また、ホールの一部建設は徳島市が行うべきだとの見解も示された。県と市は現在協議を進めている段階だといい、2024年4月に行われる徳島市長選での候補者の方針に注目が集まりそうだ。

■高知市の「住宅地」地価、23年ぶりの上昇

高知県では、大きな再開発の動きは見られない。だが、県が引き続き観光業に力を入れていくことで、不動産市況にも影響があるかもしれない。

2023年の基準地価の結果によれば、高知県全体の平均(全用途)は26年連続の下落。高知県だけでなく、四国全体が下落傾向にある。

しかしその中で、高知市の住宅地の地価変動率は23年ぶりにプラスに転じた。低金利や住宅ローン減税などに支えられ、住宅需要の回復傾向が続いたことで、地価に持ち直しの動きがみられたようだ。

高知県では、2024年4月から新たな観光キャンペーンが始まる。持続可能な観光振興につなげるため、その取り組み案について検討が進められているところだ。

インバウンド需要も回復傾向にある現在、より観光客が訪れやすくなるキャンペーンを開催することで、地元経済の活性化、ひいては不動産市況にも影響が及ぶ可能性もあるかもしれない。

■速いスピードで進む人口減少

直近の四国の経済状況はどうなっているのか。

四国財務局が発表した経済情勢報告(2024年1月分)によると、四国の経済は「持ち直している」という。先行きについても、「持ち直しが続くことが期待される」としている。

一方で、長期的な目線で見たときに気になるのは、やはり人口減少だ。

2023年末に発表された「日本の地域別将来推計人口」によると、四国は2050年までの30年足らずの間に約100万人減少すると予測されている。

四国4県の総人口は、2050年時点で約260万人との予測。2020年時点と比べて30%(109万6000人)の減少だ。全国平均が17%減であることを考えると、はるかに速いペースで人口減少が進む予測となっていることがわかる。

人口減少などの問題は、その地域の地価や賃貸需要に大きく関わってくる。人口減少に抗うことは難しくても、持続可能な社会への対応として、駅前などの交通の便の良い場所に生活機能を集約する「コンパクトシティー化」などの検討が進められている。

このような中、長い間にわたり、議論・検討が進められてきたのは「四国新幹線」だ。大阪市から徳島市、高松市、松山市を経て大分市に至る計画路線で、具体的なルートや途中駅などは一切未定となっている。

もし、今後この四国新幹線が建設に向けて動き出すことがあれば、四国の経済状況に大きな影響を与えるだろう。四国の今後を占う上で重要な事柄として、動向には着目していたい。



四国には、自然風景、独自の歴史・文化など、豊かな観光資源がある。四万十川、鳴門の渦潮、金刀比羅宮、道後温泉、お遍路文化や阿波踊りなどここでは挙げきれないほどだ。

コロナ禍の影響が薄れたことで、国内だけでなく海外からの観光客も増えるかもしれない。

人口減少が進む一方で、再開発や観光産業の復興など、地域経済にとってポジティブなニュースもある。今後の動きに注目したい。

福本真紀/楽待新聞編集部

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最終更新:3/23(土) 19:00

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