イケメン・高学歴・高収入…「ハイスペ男子」との結婚を望む女性はワガママなのか?

4/19 17:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 近代以降、イエ同士ではなく個人間で結婚できるようになった。しかし、現代では男女共に相手に求める理想が上がり、結婚のハードルは高くなっている。特に女性は日本社会の構造的な理由からハイスペ男性を求めてしまうのだという。※本稿は、『パラサイト難婚社会』(朝日新書、朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

● 結婚は男性にとってはイベント 女性にとっては生まれ変わり

 かつての「結婚」はイエのためのものだった。近代以降、「結婚」は個人のものとなり、個人が選べるものになりました。それは一見、良いことのように見えて、新たな疑問を差し出します。「何を決め手に、結婚をすればいいのか」という問いです。これぞ、「個人化の時代」の最大の問題点なのです。

 多様な選択肢から人生を選べる時代、むしろ選ばなくてはならない時代に、何を決め手に「結婚を決めればいいのか」という問題です。しかも「結婚」は、ひとめぼれしたバッグを購入するのとはわけが違います。

 基本的に「この選択」が、「自分の人生を決めてしまう」かもしれない大切な決断に、「好きに選んでいいよ」と言われた人間は、喜びや自由よりも、不安を感じるのではないでしょうか。「本当にこの人と結婚して、正解なのだろうか」と。

 熱烈な大恋愛の末、「もう、この人と結婚できなかったら死ぬ!」と思える相手ならいいでしょう。「相手が好きだから」と確信できれば、「結婚は何のためか」の答えは至ってシンプルになります。

 しかしながら、世の中の人々全員が、そんな大恋愛をできるわけではありません。恋愛に淡泊な人、平穏が好きな人、皆様々です。そもそもハリウッド映画のように、一瞬で恋に落ちるほど「ビジュアルも完璧で情熱的で、高収入で、精神が安定していて、優しくて常識のある」男性はそう多くはいません。

 あるいは男性から見た場合は、「可愛くて、清楚で、両親受けもよく、家庭的で、料理がうまく、自分にも子どもにも優しそうで、かつ自分と趣味や話も合うレベル感」の女性と、どこででも出会えるわけではないのと同様に。なぜならそれが、現実だからです。

 かつて私は、「結婚とは、男性にとってはイベント、女性にとっては生まれ変わり」と指摘しました(『結婚の社会学』丸善ライブラリー)。すでに30年近く前になりますが、幸か不幸か、その指摘は現在も決して的外れではないと思っています。

 極論すれば、男性にとって結婚は人生の一通過点でしかありません。男性は、結婚で人生のコースが変わるとは思っていません。実際に「結婚」した結果、男性が人生のコースを大きく外れることはほとんどないのです(よほどの『悪妻』などでもない限り)。

● 多くの日本人女性にとって 結婚と経済的安定性はセット

 男性は「寿退社」することはめったにありませんし、「出産」で産休に入ることも、「育児」で出世コースを外れることもないのです。少なくともほとんどの男性がそう思っています。

 だからこそ誤解を恐れずに言えば、男性にとって「結婚」はあくまで人生の一イベントであり、いわばゲームをクリアするような感覚の人も多いはずです。

 しかし、女性は誰と結婚するかによって、自分の人生が大きく変わります(少なくとも現代日本社会では)。相手の職業、収入によって暮らしぶりは大きく変わり、どこに住むか、相手の親と同居するか、仕事を続けるか、子どもを産むかによって、その後の人生が大きく変わってしまうのです。

 「結婚」「同居」「出産」「育児」を経て、女性は「生まれ変わり」ます。これまでとは全く異なる人生を歩むこともできるし、歩まざるを得ない人も多いのです。

 だからこそ日本人(特に女性)は、「結婚」に、「愛情」と「経済的安定性」の二つを求めざるを得ないのです。「好き」で結婚した結果、相手が仕事をしないいわゆるヒモ男だったら別ですが、反対に経済力はあっても、フキハラ夫やモラハラ夫、DV夫であったとしても、その「結婚」を容易に解消することはできません。

 なぜなら多くの日本女性にとって、「結婚」は「経済的安定性」とセットになっているからです。「この結婚を解消したら、この生活レベルを維持できなくなる」「路頭に迷うかもしれない」、そして何より「子どもに十分なお金をかけられない」と、離婚を躊躇する家庭は多いのです。

 おとぎ話でも、主人公は常に「好きな人(王子様)」と結ばれて、めでたし、めでたしになりますが、それは王子様が「愛情」+「経済的安定性」を提供してくれる保証があったからです。あくせく働かずに済む特権階級の相手だからこそ、シンデレラも白雪姫も、「愛情」だけをクローズアップして「結婚」を望むことができました。

 反対にいくら好きでも、稼がない男と「愛情」で結婚して、めでたし、めでたしとなるおとぎ話を、私は寡聞にして知りません。

● 「イケメン・高学歴・高収入」を 女性が求めてしまう背景

 バブル崩壊後の日本社会が、経済的に成長せず、非正規雇用者を大量に生み、社会格差を生み出してきた実態を私たちは見てきました。特に女性の非正規雇用率は高く、男女の収入の格差は欧米先進諸国に比べて段違いです。2020年時点で、日本女性の非正規雇用率は54.4%と半分以上を占めています。

 しかも結婚前の世代における25~34歳までは34.3%ですが、出産、育児を経た35~44歳までは49.6%、45~54歳までは56.6%、55~64歳までは66.7%、65歳以上は82%と上昇していくのです(男性の25~34歳は14.4%、35~44歳は9%、45~54歳は8.2%)。

 日本がジェンダーギャップ指数が高いのは周知の事実ですが、一部の高学歴キャリア層の女性を除けば、一般女性の多くは、低い時給のサービス業や事務員、派遣社員として働くことを余儀なくされています。

 要するに多くの女性にとって「結婚」は、令和になった今でも生活を安定させるための主要素の一つです。「好き・嫌い」だけで「結婚生活」を解消できない事情が、日本社会にはいまだに潜んでいるということです。

 しかし、ここからが問題です。「結婚」に「経済的安定性」を求めるのは、現代日本社会で致し方ないことだとしても、多くの場合、「経済的安定性だけを求めて結婚する」のは、多くの女性にとっては自ら受け入れがたい事実であることです。

 戦後日本ではようやく「親の決めた結婚」から脱却して、「自由意志で結婚できる」社会を手に入れました。戦前は「親が決めたから、泣く泣く好きでもない相手と結婚した」と言い訳が立ったものも、現代日本では「金のために好きでもない相手と結婚した」とはなかなか言いにくいもの。言いにくいだけでなく、本人もそんな結婚は望まないからです。

 近代日本における「結婚」は、他の多くの候補の中から特別に自分が選ばれたという「特別性」と、他者から人生の伴侶として選ばれたという「承認性」を意味しています。

 単に自分が選んだだけではなく、相手からも「特別な相手」として選ばれたという実感が欲しい。要するに「結婚」=「経済的安定性」だけでなく「愛情」、正確に言えば「自分が相手にとって特別な存在であることの実感」の要素もしっかり入っていないと、自分自身の存在意義が揺らぐのです。

 かくして婚活市場では「イケメン・高学歴・高収入」という、なかなか並立しがたい異なるベクトルをクリアしたごく少数の男性ばかりを求める女性が多くなります。

 これは現代日本女性がワガママなのではなく、「結婚」に、「愛情」と「経済」の両方が求められるようになってしまった背景が大きいのです。

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最終更新:4/19(金) 17:02

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