エクセルの見積書を「やめるべき」10もの問題点とは? 「今まで使ってきたから」ではマズいことに

5/27 9:02 配信

東洋経済オンライン

DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる昨今ですが、まだまだ進まぬ領域も。例えば営業では、仕事の進め方やノウハウがなにかと属人化しがちです。
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■見積書の作成はエクセルから卒業すべき! 

 電子帳簿保存法が施行され、デジタル意識がますます進んでいる昨今。見積書・請求書を一元管理する必要性が増していますが、見積書の作成や管理をエクセルで行っている会社がまだまだ多いのが実情です。

 商談を進めていくと、当然、見積書の作成が必要になります。この見積書の作成も営業DXの重要な部分であり、経理業務にデータをつなげる役割も担っています。

 営業担当者が個別に作成するエクセル見積もりではなく、クラウド上で共有して、いつでもどこでも作成、承認、発行できる見積書作成システムを利用することが不可欠です。

 SFAでは概算で扱われていた案件金額や商品価格を、見積書作成システムと連携させることで1円単位まで確定させることができるようになります。

 この確定したデータを販売管理システムの受注登録・会計システムに流して、請求書発行まで連携させることで、再入力や転記の手間をなくし、処理スピードを上げるわけです。

 データ連携上の必要性だけでなく、見積書は、2023年12月末で宥恕措置が終了し、電子保存が義務化された電子帳簿保存法(電帳法)の対象の1つです。

 見積書は、経理部門が把握していないことが多いので、電帳法への対応で後回しになっているケースが少なくないのですが、現状、多くの会社で、メールで送受信(すなわち電子取引)される回数が最も多いのではないでしょうか。

 一度で決まらないことも多く、1件の商談で複数の見積書を提出することもあります。領収書や請求書の数よりも多くなることがあるでしょう。経理部門でまとめて処理するのではなく、各営業担当者が勝手にやり取りすることが多いのでその管理が大変なのです。

 営業担当者が紙に出力して顧客に持参するのであれば、そのコピーを保管しておけばいいのですが、メールでやり取りした場合には電帳法に基づき、経理部門はすべてを電子データで保存しなければなりません。

 そのため、営業担当者は見積書を顧客に送るたびに、同じデータを経理部門にも提出する必要が出てきます。

 このような運用がうまくいくとは思えません。見積書の作成はエクセル見積もりによる属人管理から卒業し、見積書作成システムで一元管理して、電帳法にも対応すべきです。

 そもそも、電帳法が施行されなくても、見積書は一元管理すべきであると考えていますが、現在でも、見積書の作成や管理をエクセルで行っている会社がまだまだ多いようです。

 「特に問題なく今まで使ってきたから問題ない」と考えている経営者や経理担当者もいますが、少なくとも10の問題点があることを指摘しておきます。

■会社として責任を持った顧客対応を

①属人管理の罠
 担当者が勝手に作成し、自分のPCで保存していると、本人以外には見積書の存在すら分かりません。不在時はもちろん、退職した場合にもきちんと引き継がれなければ行方不明となってしまい、会社として責任を持った顧客対応ができなくなります。

②手間ひま(労力・時間)のダブりによる無駄
 同じ会社で同じ商品を扱っているので、それぞれの営業担当者が作る見積書も似たものになるはずです。個人のケアレスミスをなくし、また、時間や手間を短縮するためにも「使い回し」「再利用」したいところですが、個人管理していると情報が共有されず、他の人が作った見積書を参考にしたり再利用したりすることができません。

③担当者の独断やケアレスミスが見過ごされる
 担当者が勝手に書式を変えたり、間違ったまま提出したりしてトラブルになるリスクがあります。会社として定型のフォーマットがあっても、エクセルで作成したものは簡単に書式変更ができます。

 便利ではありますが、定型を崩し、我流の見積書が横行することになりかねません。

 上司のチェックや承認もなく見積書が提出されれば、間違いも発見できず、トラブルの種になる恐れもあります。

④情報漏洩のリスク
 エクセルでの作成管理は、担当者のPCに保存されるものなので、もしもそのPCを移動中に紛失したりすると重大な情報漏洩につながります。あってはならないことですが、つい魔が差して競合企業に見積もりデータを見せたとしても、誰にも分かりません。本来、徹底した管理が必要な情報ですが、それが個人に任されているというリスクがあります。

⑤顧客対応が迅速にできない
 作成も管理も担当者に属人化しているので、担当者の不在時にバックオフィスのスタッフに依頼して修正したり再発行、再送付してもらったりすることができません。

 結局は担当者本人がすべての対応を引き受けざるを得ず、そのため対応が遅れたり、送付漏れが起こったりすると業務に支障をきたします。

⑥ミスが生じやすい
 同じ商品であっても、顧客ごとに値入率や掛け率が違うことはよくあります。エクセルで見積書を個人管理させると、その数字や条件が徹底できずミスが生じやすくなります。また、同じ顧客の別拠点や別部署にバラバラの条件の見積書を提出するようなことも起こり、顧客クレームを引き起こすことも少なくありません。

⑦管理が煩雑となり手間がかかる
 バラバラに管理されると、見積管理番号を付与できなくなるので、後々の管理が煩雑となり余計な手間がかかります。見積書は、作成して客先に提出して終わりではありません。受注時のチェックや条件確認などに必要となるため、営業部だけでなく経理部門など他部署にも影響を与えます。

 そのため、本来は見積書が発行された時点で管理番号などのコードが割り振られ、組織的に管理しやすいように整理されるべきですが、個人がエクセルで作成した場合には通し番号がつけられません。

■「働き方改革」も進まない

⑧上司の承認印や会社の角印がないと発行できない
 移動時間を有効活用するために、外出中でも見積書の作成や発行、客先送付が必要なことがあります。エクセルでの作成管理では上司の承認印など押印ができず、一度、会社に戻って見積書を発行する必要があります。これではリモートワークや直行直帰も難しく、「働き方改革」も進まないでしょう。

⑨データ連携ができない
 見積書のデータは、受注処理、発注処理などにも必要です。処理時にデータ転送で連携できると入力の手間が減り、ミスが生じることもありません。エクセルでの作成管理だと、データの連携が不可能です。二度手間、三度手間が発生するか、あるいは、別途高額な連携のためのツールを導入する必要が生じてしまいます。

⑩営業見込みへのフィードバックができない
 見積書の作成や客先への提出は、営業プロセス管理、商談進捗管理の重要なトピックスです。見積書の内容は、営業見込み管理にも転用し、SFAなどのツールにもデータ連携すべきですが、エクセルで作っている場合は再度入力したり、コピー&ペーストしたりする手間が発生してしまいます。ITを使いながらも作業はアナログのままというおかしな事態になりかねません。

 これでもまだ、エクセルのままで見積書を発行するべきと考える人はおそくいないでしょう。

 見積書のDXは一刻も早く着手すべき優先事項です。

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最終更新:5/27(月) 9:02

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