株式週間展望:為替・金融政策に材料目白押し、円高一服で株復調も
日経平均予想レンジ:3万8200-3万9600円
今週の日本株相場はトランプ米大統領の関税政策や、為替の円高進行によって日経平均株価の上値が重くなる展開を余儀なくされた。東証プライム市場に上場する企業の決算発表も峠を越え、マーケットの関心は再び日米中銀の動きに重点が置かれている。来週は金融政策と為替が最大のテーマになりそうだが、ドル・円の下落にはいったん歯止めが掛かる可能性もある。
<日銀追加利上げ観測>
今週はメキシコ、カナダに対するトランプ関税に対するショック安で幕を開け、日経平均が当欄予想レンジの下限をやや下回る3万8401円まで下落した。これに関しては導入が延期されたものの、中国への10%の追加関税は予定通り発動され、中国サイドも米国産エネルギーなどへの報復関税で応じた。
もっとも、米中両国は互いに妥協点を模索しているように見え、トランプ政権第1期目の2018-19年に起きたような大規模な貿易戦争に発展するリスクは今のところ限られる。また、前週にテック株に衝撃を与えた中国発の生成AI(人工知能)「ディープシーク」をめぐる懸念も、いったん収束した格好だ。
しかし、今週は日銀の早期の追加利上げ観測が浮上したことで、円売り・ドル買いのポジションの巻き戻しが加速した。7日の日中には一時1ドル=151円割れまで円高が進み、輸出株を中心に日本株の重荷となった。日経平均は週初の急落(1052円)の下げを取り返せずに週末の取引を終えた。
日銀は1月の金融政策決定会合で半年ぶりの利上げに踏み切った。さらに、今月6日に講演した田村審議委員は、現在0.5%の政策金利を25年度後半に「少なくとも1%程度まで」引き上げる必要性を述べた。また、その前日に出た24年12月の毎月勤労統計で、実質賃金が2カ月ぶりに前年比でプラスに転じた。追加利上げに対する期待値が上がり、円高を招いている。
ドル・円の方向性をめぐっては、ここから重要なイベントが目白押しだ。まずは日本時間7日夜に発表される米1月雇用統計だ。市場では非農業部門雇用者数が17.5万人増(前月は25.6万人増)に鈍化し、失業率が前月並みの4.1%と予想されている。
<日米首脳が初顔合わせ、パウエル議長証言も>
今回の雇用統計では、同時に実施される年次改定にも注目が集まっている。前回の昨年8月の改定では、同3月までの1年間の雇用者数の伸びが82万人近くも下方修正された。今回もこれに匹敵するマイナス改定となれば、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測が強まり一段と円高圧力が増しそうだ。
もっとも、円高余地は限られるかもしれない。1月ISM(米供給管理協会)製造業景況指数を踏まえると、米国の景況感はトランプ大統領の就任により高まっている様子がうかがえ、パウエルFRB議長も利下げを急ぐ必要はない考えを示している。11-12日に予定されている議会証言でも同様の見解を述べれば、米金利の上昇に伴いドル買いの勢いが再加速する可能性がある。
また、足元の円高は、訪米した石破首相が日本時間8日未明に臨むトランプ大統領との首脳会談を思惑視している面もあるようだ。トランプ大統領はドル安誘導論者として知られ、日米首脳会談での円安けん制を想定する向きもある。
ただ、トランプ政権のベッセント財務長官は直近のメディアのインタビューで、トランプ大統領が伝統的な「強いドル政策」を維持していると述べている。このため日米首脳会談では為替が話題にならず、円高材料は1つ消滅するかもしれない。
来週の日経平均は為替次第の展開となりそうだが、円高一服を想定して予想レンジを3万8200-3万9600円と上方を広めに取る。また、13日に発表される日本の1月国内企業物価指数も日銀が重視するだけに見逃せない。このほか、米国で12日に1月CPI(消費者物価指数)、13日に同PPI(生産者物価指数)、14日には同小売売上高と重要な指標が相次ぐ。
提供:ウエルスアドバイザー社
ウエルスアドバイザー
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最終更新:2/7(金) 17:31