政府が映画・ドラマ制作現場を支援へ、海外展開後押し-是枝氏も意見

4/18 9:34 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 政府は「新しい資本主義」の一環として、映画やドラマなど日本のコンテンツ産業の制作現場を官民連携で支援し、海外展開をさらに後押しする戦略に取り組む。

17日に首相官邸で開かれた新しい資本主義実現会議で政府が論点案を示した。「コンテンツ競争力の源泉はクリエーターにある」として次世代を担う人材育成、エンタメ分野のスタートアップの海外進出、海外向けコンテンツ制作支援、職場環境や取引慣行の改善に取り組む方針を盛り込んだ。

同会議の資料によると、コンテンツ産業の2022年の輸出額は4.7兆円で鉄鋼に匹敵する規模だ。中韓両国と比較すると、「アニメ」や「家庭用ゲーム」で日本が勝るが、映画・ドラマの「実写映像」は韓国に後れを取るなどの課題もある。論点案はクリエイターや制作会社、俳優など制作現場に特に配慮し、てこ入れを図る内容となっている。

17日の同会議には、18年に映画「万引き家族」でカンヌ国際映画祭のパルム・ドール(最高賞)に輝いた是枝裕和監督と、3月の米アカデミー賞で「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」が視覚効果賞を受賞した山崎貴監督が出席。是枝氏は「日本の映画業界が魅力的で若い人に職業として選んでもらえるよう」政府と業界が力を合わせてサポートできる仕組みを要望したと会議後、記者団に明かした。

是枝氏が会議に提出した資料では、日本が直面している課題として労働環境、流通、教育、制作の4分野を指摘。内閣府に映画文化・産業の施策を一本化して統括する部署、その傘下に半官半民の支援組織「国立映画映像センター」を設置し、問題解決に取り組む必要性を訴えた。

公取の調査も

政府の論点案は公正取引委員会の協力を得て職場環境や取引慣行の改善に取り組む方針も盛り込んでいる。新しい資本主義実現本部事務局によると、政府として同産業の商取引習慣の是正に踏み込むのは初めて。

俳優など実演家が働きやすい環境を作るため、所属事務所などによる優越的地位の乱用を防止し、個人を守ることに力点を置いた取引慣行の「実態調査を行うべきではないか」と明記した。年内にも音楽や放送番組の分野から調査を開始して、契約適正化の観点に反する場合には独占禁止法に抵触するおそれがあることを示す指針の作成を図るべきだとしている。

クリエイターや制作会社の置かれた現状についても「多数は多重下請け構造の中にあり、制作現場には十分収益が還元されていない」と指摘。国内外で事業展開する際の契約作成に対する専門家による個別支援や弁護士による相談窓口を整備する必要性も示した。

岸田文雄首相は17日の会議で、日本のコンテンツ産業ではクリエイターが安心して持続的に働くことができる環境が未整備であり、「個人の創造性が最大限発揮される環境を整備する必要がある」と語った。労働環境改善や制作サイドに収益を還元するビジネスモデルの構築に取り組み、6月にも予定している新しい資本主義の実行計画改訂に向け、官民連携による同産業の活性化戦略を策定すると語った。

論点案で示された他の支援策

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最終更新:4/18(木) 9:34

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