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「絶望感が漂う」「カーネルおじさんも泣いている」 大改悪のケンタアプリ、同じく改悪で話題の「ローチケアプリ」との共通点と相違点は?

4/18 16:32 配信

東洋経済オンライン

 ケンタッキーフライドチキン(KFC)のスマートフォンアプリが、アップデートによって改悪したと「炎上」している。ユーザーインターフェースが大幅変更され、商品メニューを開くのですら一苦労。SNSでもアプリストアでも、不評が相次いで投稿されている。

 新たな「顧客接点」として存在感を示すスマホアプリだが、仕様変更によって、マイナス印象を残すことも少なくない。先日はローソンチケットのアプリも、リニューアルによって、使い勝手が悪くなったと話題になった。

 アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう。

■「まれに見る大改悪」と評判に

 KFCのスマートフォン用アプリは、2024年4月初旬にリニューアルされた。旧アプリと別に用意されているわけではなく、アプリストアで更新をかければ、すぐ反映されるようになっている。つまり「半強制移行」と言えるだろう。

 そんな新アプリが、これまで以上に使い勝手がいいのなら、何の問題もない。しかしリリース直後から、SNS上では「ログインできない」「なかなかメニュー画面にたどり着けない」「クーポンも見にくい」といった指摘が相次ぎ、「まれに見る大改悪」と評判になってしまっている。

 AppleのAppStoreを見てみると、このアプリは4月18日正午時点で、星4.5とそれなりに評価が高い。しかし、そのほとんどは旧アプリに対する評価で、4月に入ってからは「星1」だらけに。コメントも「絶望感が漂う」「削除することにした」「カーネルおじさんも泣いている」などと辛辣な内容が書き込まれている。

 突然ネットサービスの仕様が変わり、ユーザーの困惑を招くケースは珍しくない。直近では「ローチケ」の愛称で知られるローソンチケットのアプリも、改悪だと話題になった。こちらも4月上旬に変更が行われたのだが、その内容が「チケットが消えるのでは」との心配を招いたこともあり、炎上状態となった。

 新しいローチケアプリでは、不正・転売の防止を理由に、電子チケットの表示(ダウンロード)後に機種変更や、アプリの再インストールを行うと、チケットを再表示できなくなった。もし再表示できなくなっても、カスタマーセンターでの状況確認を経れば、再表示できるのだが、その説明が十分でなかったために、ユーザーを混乱させる事態となった。この点は、KFCアプリにも通ずるところだ。

■商品ページすら、なかなかたどり着かず…

 話題のKFCアプリを実際に触ってみた。開くとまず、画面上部に「まずは受取方法と店舗を選択」の説明文とともに、「注文する」のボタンが表示される。それを押すと、「お持ち帰り」か「デリバリー」を選択する画面が現れ、いずれか選択すると、店舗選択画面が現れる……と、階層は何段階も深くなるものの、なかなか商品にはたどり着かない。

 改めて、トップ画面に戻って、下部へスクロールすると「メニュー」のタイル画像があった。そうそう、これが知りたかったんだよ、とタップするも、また「お持ち帰り」「デリバリー」の壁が立ちはだかる。

 軽減税率や商圏の関係で、価格が一律でないのは理解できるが、ただ単に「どんな商品が出ているか」が知りたいだけでも、これだけの手間を求められてしまう。

 また、あらゆる画面で会員ログインを求められるが、これまでのデータは消えているため、手こずるユーザーも少なくないだろう。「パスワードは覚えておいてよ」とKFC側は思うかもしれないが、リアルなユーザーはこんなものではないだろうか。

 ネットメディア編集者である筆者の感覚からすれば、「改悪」だの「劣化」だのといった表現は、冗談まじりのネットスラングとして、一般的なイメージよりフランクに使われている。とはいえ、実際にアプリを使ってみると、今回の「改悪」は誇張ではなく、まさに……という感想だ。

 筆者は数カ月前まで「KFC店舗から徒歩5分」に住んでいたので、旧アプリの使い勝手は、それなりに理解しているつもりだ。まだ新アプリを店頭で使ったことはないが、ちょっと触っただけでも、大きく利便性が損なわれていることはわかる。

■突然の仕様変更で、愛着すら消えてしまう危険性

 そして、そのうえで感じるのは、これは「単なるアプリの改悪」にとどまらないのではないかという懸念だ。今まで築いてきた、企業と消費者のコミュニケーションや信頼関係が、今回の件をもって崩れ去ってしまったのではないかと感じるのだ。

 実店舗やデリバリーでの商品提供のみならず、その注文過程も「購買体験」の一環となる。KFCアプリには、以前より購入頻度に応じたマイレージプログラムが用意されているが、これもまたユーザーの愛着を増す施策と言えるだろう。

 ゆえに、突然の仕様変更によって、愛着すら消えてしまう危険性がある。これはKFCのみならず、実店舗とECなどを両面展開し、その結節点にスマートフォンを位置づけている企業であれば、さほど珍しい話ではない。

 そして、ここが筆者の考える、KFCアプリとローチケアプリの相違点だ。やや辛辣な表現になってしまうかもしれないが、数あるチケットアプリのなかで、ローチケに思い入れを抱いている人は多くないだろう。アーティストや贔屓のスポーツチームのチケットがお目当てなわけで、アプリは目的ではないからだ。今回のような騒動があっても、「じゃあ他のアプリを使おう」と、サラッと鞍替えする可能性が高い。

 しかし、KFCアプリは違う。ケンタのチキンやカーネルクリスピーをお得に食べたいから消費者は、KFCアプリをダウンロードしている。そのコミュニケーションが、改悪によって遮断されてしまったのだ。

 ところで、筆者はドラッグストア「ココカラファイン」を愛用しているのだが、マツモトキヨシとの経営統合から数年たち、ついに先日、「マツキヨココカラ」の新アプリへと切り替えてくれとアナウンスされた。こちらはKFCと違って、旧アプリと新アプリが別に用意されているが、それはそれで別途インストール&アンインストールの手間がかかる。新居の最寄りは「サンドラッグ」だから、この機会に、そちらへ浮気しようかなと考え中だ。

 KFCもローチケも、はたまたマツキヨココカラも、経営戦略の一環として、アプリを仕様変更しているはずだ。その過程には、社内のマニュアルづくりで変えられる接客と違って、アプリは小売業者が内製化しにくく、開発業者の能力に大きく左右されるところもあり、結果的に使用感をコントロールしづらい事情もあるだろう。

 しかしながら、消費者に企業の事情は関係なく、「利便性が高いか、否か」が評価軸となる。店舗そのものでの顧客体験は変わらなくても、接点であるアプリの変化によって、消費者は評価するということを、企業側は忘れてはならない。

 ――などといった話を書くと、「いずれ慣れるから気にするな」との意見が出がちだ。確かにごもっともだが、結果として慣れるのであれば、過渡期には消費者を振り回していいのかとなると、ちょっと疑問符が浮かぶ。

 たとえばセルフレジは、ここ数年でかなり浸透した。キャッシュレス化の波に加えて、コロナ禍による衛生意識の高まりもあり、スムーズに操作できるようになった人も多いだろう。とはいえ、私ですら完全には慣れていない。

 先日とあるスーパーで、完全ノンアルコールの「割り材」をセルフレジに通したら、店員確認が必要だと出てきた。駆け寄る店員さんに申し訳なさを覚えつつ、「次からは通常レジに持っていこうかな」と反省。これもまた、慣れるための通過儀礼なのだろう。

 あくまでレアケースだ、と言われればそれまでだ。ただKFCの新アプリは、その前段階である通常使用の場面でも、大きな困惑を生んでいる。今回のみならず、「リリースする前に、なぜGOサインを出したのか」に疑問が投げかけられることは多々ある。

■「今日、ケンタッキーにしない?」といかなくなる? 

 先ほど「アプリの改悪にとどまらないのでは」と指摘したのは、まさにここから、ガバナンスやコンプライアンスといった、企業としての姿勢が透けてみえてしまうからだ。

 KFCのテレビCMは「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーで知られるが、それはあくまで「選択肢」として位置づけられている前提のもとで機能する。顧客第一でないと思われてしまえば、選択肢にすら上がらなくなってしまう。そういう意味でも、新アプリによる代償は大きいと感じるのだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/18(木) 16:32

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