【来週の注目材料】米大統領選の行方と相場展開は?
5日は米国の選挙の日、大統領選、上下両院選、複数の知事選や州議会選挙などが実施されます。
来週の注目材料というよりも2,024年最大の注目材料といえます。
最も注目度が高いのが4年に一度の大統領選挙。複数の候補が立候補していますが、事実上は、
共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領、民主党大統領候補のカマラ・ハリス副大統領の一騎打ちです。
元々はトランプ氏とバイデン大統領の一騎打ちでしたが、バイデン氏が体調面などの不安から7月21日に選挙戦からの撤退を表明。後継者としてバイデン氏から指名を受けたハリス氏が民主党議員の了承を経て候補者となりました。バイデン氏撤退直前には健康問題への警戒感もありトランプ氏が全米の支持率(各種調査平均値、この後も)で3%以上リードしていましたが、ハリス氏に代わって差を急速に縮め、後継候補としての民主党内での指名をほぼ確実とした8月2日のすぐ後、8月5日時点で支持率が逆転。その後はハリス氏がリードを広げ、選挙1カ月前の10月5日時点でハリス氏が2%以上トランプ氏をリードする状況でした。
ただ、米国の大統領選は全米規模での得票率が高くても当選できるというわけではありません。各州(及びワシントンDC)でそれぞれ選挙を行い、各州に振り分けられた選挙人を選びます。選挙人の数は基本的に各州の上下両院議員の議席数となります。上院議員は各州2名ですが、下院議員は基本的に人口に比例しますので、人口が最も多く52名の下院議員を有するカリフォルニア州で選挙人は54名、次いで多いテキサス州で40名などとなり、人口の少ないデラウェア、ワイオミング州など6州は下院議員が各州1名しかいませんので選挙人は3名となります。連邦議会議員のいないワシントンDCも3名です。メーン州とネブラスカ州を除く48の州とワシントンDCは州内の選挙で1票でも多く獲得した勝者がその州の選挙人を総取りするウイナーテイクスオールという方式を採用しています。例えばカリフォルニア州の有権者数は約2200万人ですが、2200万人対1人でも、1100万1人と1100万人でも勝ったほうが54名をすべて獲得するということです。そのため、圧勝で勝ち、接戦を多く落とすと、米国全体での得票数が相手を上回っても敗北することがあります。直近では2016年のヒラリー・クリントン民主党候補は、共和党候補のトランプ氏を全体の得票数で2%以上も上回りましたが、選挙人の数はトランプ氏がヒラリー氏を大きく上回りました。なお、多くの州で支持層の偏りがあり、選挙前に情勢がほぼ決まっています。例えばリベラル色が強いカリフォルニア州やNY州などはハリス氏の勝利が確定的です。そうした中、選挙ごとに勝者が違うスウィングステート(バトルグラウンドステート/激戦州)といわれる州があります。ある程度変動しますが、ここ数回の選挙結果や支持者の状況などから、今回特に注目されているのが以下の7州です。
アリゾナ州(選挙人11人)、ジョージア州(同16人)、ミシガン州(同15人)、ネバダ州(同6人)、ノースカロライナ州(同16人)、ペンシルベニア州(同19人)、ウィスコンシン州(同10人)です。前回の選挙ではこのうちノースカロライナ州を除く6州でバイデン氏が勝利しました(そのうちアリゾナ州は0.3%、ジョージア州は0.23%の僅差です)。
今回は7州のうち5州でトランプ氏が支持率でハリス氏をリードしています。一時はトランプ氏が7州すべてでリードする状況となりましたが、し烈な選挙戦を両者ともに繰り広げる中、ミシガン州とウィスコンシン州でハリス氏がトランプ氏を上回りました。ただ、リードは0.5%と0.2%とかなり僅差。一方トランプ氏もリードしているとはいえ、激戦州の中で最大のペンシルベニア州でのリードは0.6%に留まっており、ネバダ州も0.9%。統計誤差2%を超えてのリードはジョージア州の2.6%、アリゾナ州の2.4%だけです。これら7州以外ではミネソタ州とニューハンプシャー州がハリス氏リードも支持率の差が5%以内とやや接戦となっているほか、勝者総取りではないネブラスカ州で5人中4人はトランプ氏でほぼ確定的も、1人のみハリス氏がリードしています。
激戦州7州を除くとトランプ氏219人、ハリス氏226人とハリス氏が小幅リードも、激戦州の動向から、このまま決まるとトランプ氏287人、ハリス氏251人とトランプ氏が過半数の270人を超えて勝利します。トランプ氏のリードが1%以下のペンシルベニア州とネバダ州を共にハリス氏が逆転勝利してもまだ届かず、ノースカロライナ州(トランプ氏1.4%リード)をひっくり返して、初めてハリス氏の勝利となります。
こうした状況からトランプ氏の勝利を見込む動きが広がっています。米賭けサイトでは当初ハリス氏がリードしていましたが、10月6日にトランプ氏が逆転。その後28.9%差まで広がりましたが、ハリス氏がミシガン州、ウィスコンシン州で再逆転したことを受けて23.5%差に縮まっています。
トランプ氏は公約として減税や規制緩和などの経済政策、普遍的関税を含む積極的な関税強化、不法移民の国外強制退去などを示しています。その結果、米国の物価が上昇する可能性が高いとみられ、市場の反応としてはドル買いが意識されています。FRBに対して利下げを求めるともしていますが、こちらに関しては大統領に強制権限がなく、どこまでの影響があるのかは微妙です。
大統領選と同時に行われる上下両院選挙もドル高に働く可能性があります。34議席が改選となる上院は、現職の民主党議員引退に伴う新人二人の選挙となったモンタナ州で共和党が大きくリードしており、50議席をほぼ確実としています。また、支持率の差が5%以内で確実とは言えないものテキサス州は4%台後半の差で共和党がリードしており、51議席と過半数確保が見込まれています。下院は激戦となっていますが、共和党がやや優勢という状況で、大統領、上下両院を共和党が抑える展開が見込まれています。共和党が大統領、上下両院多数派を獲得することで、トランプ氏の施策が現実味を帯びやすくなっており、ドル買いに拍車がかかる状況です。
もっとも、ここ数回の大統領選は事前の読みとの乖離がある程度見られました、トランプ氏勝利を完全に織り込むのは難しい状況です。また、トランプ氏優勢が報じられた9月終盤からすでにドル高がかなり進んでおり、ここからのドル買いがどこまで出るのかは微妙です。
ただ、完全には織り込み切れていないことから、トランプ氏勝利で、いったんはかなりのドル高材料になると考えられます。ドル円は155円台を意識する展開が見込まれます。なお、ハリス氏の公約でも財政赤字拡大が見込まれるなどの本来はドル高材料ですが、トランプ氏ほどの極端さがない分、ドル売りと見られます。ハリス氏勝利の場合、ドル円はサプライズ感もあって動きが大きくなり、150円トライも十分にありそうです。
MINKABUPRESS 山岡
みんかぶ(FX)
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最終更新:11/2(土) 17:10