ITベンチャーが集まる「五反田バレー」、国際ビジネス交流の拠点へ《楽待新聞》

4/15 11:00 配信

不動産投資の楽待

東京都心、五反田駅の周辺で再開発が進んでいる。その目玉の1つが、日本郵政グループが進める「五反田JPビルディング」だ。

五反田というと歓楽街もあり、あまり良いイメージを持たない人もいるかもしれない。

しかし、近年ではITベンチャーやスタートアップ企業が集まるなど、従来のイメージから変わりつつあるのが実情だ。アメリカのシリコンバレーを模して「五反田バレー」とも称されている。

今、五反田ではどんな変化が起こっているのか、都市開発の視点で紐解いていこう。

■ITベンチャーの集まる「五反田バレー」

「五反田駅」は東京都品川区に位置している。渋谷、新宿、東京といった主要駅からのアクセスも良好で、JR山手線を利用した時の所要時間は、渋谷から約10分、新宿から約15分、東京から約20分だ。

また、五反田は東急池上線のターミナル駅であり、都営地下鉄浅草線も乗り入れている。

駅から少し離れると閑静な住宅街が点在している。駅南側の大崎広小路や戸越銀座周辺などが代表的だ。

さらに、駅東側には島津山、北側には池田山があり、これらのエリアは「城南五山」と呼ばれる高級住宅街となっている。

東五反田の目黒川沿いは桜の名所としても有名だ。

一方、やはり五反田と言えば駅周辺の活気あるオフィス街の印象が強い。近年では特にITベンチャーやスタートアップ企業の集積が顕著だ。

これらの企業が集まり始めたのは、クラウドサービスを開発・運営する「freee株式会社」が本社を移転した2014年以降と言われている。

アメリカのカリフォルニア州にある、IT企業の一大拠点「シリコンバレー」に倣って「五反田バレー」とも称されるようになった。

五反田バレーが形成されるに至った理由は主に3つある。

1つ目は、渋谷や恵比寿といった街よりもオフィス賃料が安いこと。2つ目は東京の各ターミナル駅から近く、交通の便が良い点。3つ目は飲食店が多く、オフィスワーカーにとって働きやすい環境が整っているというものだ。

ITベンチャーやスタートアップ企業が集まった結果、横のつながりも生まれていき、2018年には6社が集まって「一般社団法人五反田バレー」が設立された。

主な活動は各社間で開催される勉強会だ。その他、協定を結んだ品川区と共に地元商店街のイベントを開催したり、商店街を構成する各店舗に対してWEBマーケティングの支援を行ったりしている。

■五反田に集まる外国人のためにも

そんな五反田駅の周辺では現在、複数の再開発計画が持ち上がっている。その背景には何があるのか。

品川区は、2023年4月に「品川区まちづくりマスタープラン」を改定・公表している。その中で、五反田駅周辺における課題として「駅周辺における新たな産業集積を踏まえた都市機能の充実」を挙げている。

ITベンチャーやスタートアップ企業が集まってきたことを受け、行政としても「各企業に選ばれるまちづくり」を進めたいと考えているようだ。

つまり、老朽化したオフィスビルの更新、企業にとって魅力的な建物とすることを促進する。

また、今後のまちづくりにおいては職住機能の充実、国際ビジネス交流を支える外国人向けの居住環境と生活支援機能の充実なども挙げている。

ITベンチャーやスタートアップ企業をはじめ、研究開発に力を入れる企業が集積するエリアには外国人が集まりやすい傾向がある。それに備えて、外国人向けの職住環境が整えられるケースも多い。

品川区のまちづくりの方針も、そのような流れを受けたものだろう。

これは五反田に限らずさまざまなエリアで言えることだが、街の中に大小雑多な建築物が入り混じっていると、防災機能や歩行者空間の確保が課題となることが多い。

再開発にはこうした課題を解決したいという意図もあるようだ。

■日本郵政の高層ビルも完成

複数ある再開発計画の中でも目玉の1つが、日本郵政グループが進める「五反田JPビルディング」だ。対象地は、五反田駅の南側で東急池上線の大崎広小路駅前である。

この場所にはもともと、日本郵政が運営する「ゆうぽうと」が建っていた。ゆうぽうとは1982年に開業し、ホテル、結婚式場、コンサートホール、フィットネスクラブなどが入る複合施設だった。

しかし、建物の老朽化を理由として2015年9月末に閉館。日本郵政グループが同建物の敷地について活用方法を模索した結果、新複合施設の再開発を進めるに至ったのだ。

再開発建物の規模は地上20階・地下3階建てで、延床面積は約6万9000平米だ。用途はオフィス、ホテル、多目的ホール、フードホールなど。ホテルは星野リゾートが、多目的ホールは品川区が運営を担う。

フロア構成は、1階がフードホール、2階がシェアオフィス、3階が多目的ホール、5~12階がオフィス、14~20階がホテルとなっている。

ちなみに、星野リゾートは立地や主な宿泊目的などによってブランドを分けており、五反田JPビルディングに入るホテルは「OMO(おも)」に分類されるという。

OMOは「テンションあがる『街ナカ』ホテル」というコンセプトで、その立地は都心が中心だ。ホテルや多目的ホールなどについては2024年4月以降に開業する予定となっている。

なお、五反田JPビルディングの近隣では「TOCビル(東京卸売センタービル)」の2024年度中の閉館、建て替えも決まっており、こちらの動向も気になるところだ。

創業から間もない企業も比較的多く、再開発によって新しい建物も増えていくと予想される五反田エリア。今後も「新しい風」は吹き続けるのか、まちの変化に注目したい。

朝霧瑛太/楽待新聞編集部

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最終更新:4/15(月) 11:00

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