土地が安くて幸福度が高いコスパ良好の地方都市 大都市圏の地価上昇が進む中での穴場はどこ?

4/5 11:02 配信

東洋経済オンライン

 令和6年の地価公示価格が発表された。全国平均は3年連続上昇で、全国的にコロナ禍以前に戻った。都道府県庁所在地の住宅地の平均価格の最高は東京都23区で、1平方メートル当たり70万4600円となった。

 以下、大阪市26万5000円、横浜市24万5800円、さいたま市22万9500円など大都市圏の都市が上位を独占。奈良市までの15区市が平均価格10万円台超えとなっている。一方、1平方メートル当たり5万円未満の都市が12もあった。以下がその12都市だ。

 ①青森市 ②秋田市 ③山口市 ④鳥取市 ⑤水戸市 ⑥津市 ⑦甲府市 ⑧佐賀市 ⑨富山市 ⑩宮崎市 ⑪福島市 ⑫松江市(地価公示価格が低い順)

 人口20万~30万人の中規模都市が大半だ。これらの12都市がある都道府県と日本総合研究所の「全47都道府県幸福度ランキング」を照らし合わせてみると、

 富山県(富山市)4位、鳥取県(鳥取市)9位、島根県(松江市)10位、三重県(津市)11位、山梨県(甲府市)12位、茨城県(水戸市)14位、秋田県(秋田市)17位、佐賀県(佐賀市)18位。12都市のうち8都市がランキング20位以内だった。

■公示平均価格4万6200円の富山市の居住環境は? 

 「全47都道府県幸福度ランキング」で4位に入った富山県の地価は、バブル崩壊以降低迷が続いていた。しかし、今年の地価公示で、住宅地や商業地、工業地を合わせた全用途の平均は1992年以来、32年ぶりに下落が止まった。住宅地もマイナスから横ばいになった。

 富山県内における住宅地の価格上位地点は①富山市舟橋南町12万9000円、②富山市神通町2丁目/富山市芝園町1丁目11万2000円、④富山市奥田寿町桶川10万2000円、⑤富山市下新町9万6000円となっている。平均は4万6200円なので30坪(約100平方メートル)の家を建てるとして、土地代は460万円程度で済むのである。

 富山市の暮らしのデータをピックアップしてみよう(令和5年の家計調査=2人以上の世帯)。

 消費支出:32万7503円(全国4位)

 住居費:1万9413円(全国18位)

 教育費:6256円(全国40位) 

 エンゲル係数:26.5(全国34位)

■コンパクトな街づくりで周遊性が高まる

 令和5年の2人以上世帯の消費支出は32万7503円で、全国4位と大きい。もっとも、教育や教養娯楽、保健医療、エンゲル係数などが全国水準よりも低い。

 可処分所得は53万4798円で全国9位。可処分所得に対する貯蓄純増の割合である平均貯蓄率は36.9%で、全国16位だ。このほか、持ち家率77%(2018年)は全国2位、1住宅当たり延べ面積143.57平方メートルは全国1位だ。

 都市環境はどうか。富山市の人口は40万5853人(2月末)。公共交通を軸としたコンパクトシティを標榜してきた。富山駅高架下で富山駅南側の市内電車と北側の富山港線を接続し、LRT(ライトレール)ネットワークの強化を図ったことで街の周遊性が高まり、観光客だけでなく地元住民にも好評だ。

 「6系統ある路面電車をうまく活用すれば、地方なのにマイカーがなくても十分暮らしていけます。2020年に南北接続事業が完了して、ますます便利になりました。富山駅から25分ほど乗れば岩瀬浜というかつて北前船で栄えた港町にも行けます。その港町から標高3000メートルの立山連峰を眺める。自然あふれる地方都市の魅力です」(富山在住の60代男性)

 幸福度ランキングで全国4位と判定されただけのことはある。そんな幸福度の高い県庁所在地の地価が全国の県庁所在地で9番目に安いのである。

 公示平均価格が3万9700円の水戸市(茨城県)の居住環境はどうだろうか。茨城県は、イメージ調査の印象が強い魅力度ランキングでは常に下位に低迷しているが、「全47都道府県幸福度ランキング」では14位と好位置につけている。

 水戸市は東京からのアクセスの良さ、港湾への近さもあり工場立地件数が全国2位とずば抜けて高く、雇用創出の源となっている。人財育成面では、子どもの運動能力の高さが全国トップ水準。1位の福井県208.38点に迫る203.78点となっている。教員のICT指導力81.6%も高評価だ。

 注目すべきは若者就職者増加率の118%で、これは全国トップ10に入っている。本社機能の流入超過15社もトップ10入り。人口の転入超過率0.02%もプラス材料だ。

 ニューヨーク・タイムズ紙が今年訪れたいと市として紹介した山口市は、平均価格が3万7000円。山口県内の住宅地は3年連続で上昇、商業地は31年ぶりの上昇となった。

 日本三名塔の1つに数えられる瑠璃光寺の五重塔(国宝)をはじめ、西の京と呼ばれるにふさわしい数多くの寺社仏閣を配置した街のたたずまいは、歴史と趣があり日々の人々の暮らしに溶け込んでいる。京都のような混雑、オーバーツーリズムとは無縁の居心地のいい街並みである。

 新幹線の駅は新山口駅で、かつては小郡駅だった。新幹線を利用すれば西日本最大の都市・福岡市(博多)まで35分ほどの近さ。フグ、ヒラメ、アマダイをはじめとする豊かな海産物に加え、県内には特産の瓦そば、岩国寿司(押し寿司)などおいしいグルメが目白押しだ。

■2000万円台で新築一軒家が買える

 1世帯当たりの教育関係費支出額約3万8000円は全国平均2万5000円を大きく上回る。かつての長州藩は、いまでも教育熱心なのだ。新築住宅物件を見ると、山口市内(大歳駅から徒歩7分)の3LDK(土地180平方メートル、建物96平方メートル)が2288万円となっている。2500万円台で4LDK(土地230平方メートル、建物107平方メートル)の物件もある。住宅のコスパは最高だ。

 公示価格の発表となると、上昇物件にばかり関心が集まりがちだ。しかし、居住地としての魅力を備えていながら、適正な地価を維持している地方都市の実態に目を向けてみると、新たな発見がありそうだ。

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最終更新:4/5(金) 11:02

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