中国造船大手、カタールから「大型LNG船」18隻受注 総額8600億円超、韓国勢の寡占分野で市場シェア拡大

5/22 14:02 配信

東洋経済オンライン

 中国の国有造船最大手の中国船舶集団(CSSC)は4月29日、カタールの国営エネルギー企業のカタールエナジーから、タンク総容量27万1000立方メートルの大型LNG(液化天然ガス)タンカー18隻の建造を受注した。

 財新の取材によれば、これらのLNGタンカーの受注価格は1隻当たり約3億800万ドル(約482億5343万円)。18隻の総額は約55億ドル(約8617億円)に上り、一度の受注額としては世界の造船業界で過去最大だ。

■タンク容量を6割拡大

 今回受注した大型LNGタンカーの設計と建造は、CSSC傘下の滬東中華造船が担当する。その船体は長さ344メートル、幅53.6メートルと世界最大級で、輸送能力は現在の大型LNGタンカーの主流(タンク総容量17万4000立方メートル)を6割近くも上回る。

 滬東中華造船は、韓国造船大手STXグループの子会社のSTXヨーロッパ(旧アーカーヤーズ)から技術支援を受け、中国で初めてLNGタンカー建造に参入した造船会社だ。これまでに34隻の大型LNGタンカーを顧客に引き渡した実績を持ち、現在建造中および建造待ちの大型LNGタンカーは今回受注した18隻を含めて合計58隻となった。

近年、二酸化炭素(CO2
)の排出削減に向けた世界的なエネルギー・シフトが続く中、(2022年2月に始まった)ロシアのウクライナ侵攻に伴う世界のエネルギー貿易の再編が重なり、LNGの需要が拡大。造船業界はLNGタンカーの建造ブームに沸いている。

 イギリスの海事情報会社クラークソンズ・リサーチのデータによれば、世界の造船会社が2023年に受注したLNGタンカーは合計66隻。2024年は1月から4月までに47隻を受注しており、過去10年の平均受注数である年間41隻を早くも上回った。

 大型LNGタンカーの建造は、これまでは韓国の造船会社の独壇場だった。サムスン重工業、HD現代重工業、ハンファオーシャン(旧大宇造船海洋)の3社で、世界の受注数の7割超を占める時代が長年続いていた。

 だが、今回の建造ブームでは中国の造船会社が続々と参入。現時点で建造中または受注済みのLNGタンカーは合計89隻と、世界市場の4分の1を占めるまでになった。

■LNG長期調達契約が追い風

 カタールは天然ガスの埋蔵量が世界第3位、LNGの生産・輸出量でも世界有数の規模を持ち、さらなる輸出拡大を目指している。

 CSSCがカタールエナジーから過去最大の受注を獲得した背景には、中国とカタールが結んだLNGの長期調達契約があると見られている。中国の国有エネルギー大手の中国石油化工(シノペック)は2021年以降、カタールエナジーと3本の長期調達契約を締結しており、年間合計900万トンのLNGを中国に輸入することになっている。

 さらに両社は2023年5月、カタールエナジーが開発中のノースフィールド・ガス田の東部拡張(NFE)プロジェクトに、シノペックが資本参加することにも合意した。

 (財新記者:李蓉茜)
※原文の配信は4月30日

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最終更新:5/22(水) 14:02

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