ケンタッキーなのに「天丼」? 天ぷらから生まれた人気メニュー「カーネルクリスピー」に潜む情熱

4/1 11:02 配信

東洋経済オンライン

「このメニュー、そこまで有名ではないけど自分は好きだなあ」「定番や看板ではないかもしれないけど、好きな人は結構多いと思うんだよな……」――外食チェーンに足を運ぶと、そう思ってしまうメニューが少なからずあります。店側はどんな思いで開発し、提供しているのでしょうか。
人気外食チェーン店のすごさを「いぶし銀メニュー」から見る連載。今回はケンタッキーフライドチキンの「カーネルクリスピー」を取り上げます。
 飲食チェーンには「代名詞」「定番」というべきメニュー以外にも、知られざる企業努力・工夫を凝らされたものが数多く存在します。本連載では、そうした各チェーンで定番に隠れがちながら、根強い人気のある“いぶし銀”のようなメニューを紹介していきます。

■「オリジナルチキン」以外のいぶし銀メニューが豊富

 今回のテーマは、ケンタッキーフライドチキン(以下、ケンタッキー)の「カーネルクリスピー」です。

 ケンタッキーの代名詞といえば、さまざまな部位を楽しめる「オリジナルチキン」でしょう。創業者であるカーネル・サンダースが1940年に完成させた、11種類のハーブ&スパイスを使って若鶏を揚げる調理法は、今もなお受け継がれています。

 日本ケンタッキー・フライド・チキンの関口弦司さん(品質保証部研究開発課 課長)は、やはり『ケンタッキーといえば、オリジナルチキン』というお客さまが多いですね」と話します。とはいえ、オリジナルチキン以外にも強力なメニューがいくつもそろっているのがケンタッキーの強みといえるでしょう。

 例えば、日本のケンタッキーで生まれて世界中で人気を博している「チキンフィレバーガー」、オリジナルチキンと同様の調理法を用いている「骨なしケンタッキー」、さらに「コールスロー」や「ビスケット」と、いぶし銀なメニューには事欠きません。

 もちろん、忘れてはいけないのが今回のメインテーマであるカーネルクリスピーです。オリジナルチキンも大好きですが、生来のズボラな性格から、骨がなく気軽に食べられるカーネルクリスピーがさらに好物である筆者が、あらためて食べてみました。

■カリッとした衣、しっかりとした味

 今回筆者が訪問したのは、幹線道路沿いの店舗です。

 あいにくの雨、お昼前ということもあって、注文待ちはほとんどありません。セルフオーダーの機械を使って、注文していきます。1つ商品を注文するとおすすめの商品が表示されるので、ついつい悩んでしまい思いのほか、時間がかかってしまいました。

 いつもであれば、本連載は店内で食事しますが、今回は特別にテイクアウトで食べることにしました。ちなみに、現在ケンタッキーのテイクアウト比率は7割ほどだそう。もともとテイクアウトに強いチェーンではありましたが、コロナ禍によってさらに比率が高まったそうです。

 できるだけ提供したての商品を食べたい、そんなはやる気持ちを抑えながら帰宅して、開封していきます。

 まずは代名詞であるオリジナルチキンから。オリジナルチキンには「サイ(腰)」「ウイング(手羽)」「キール(胸)」「リブ(あばら)」「ドラム(脚)」の5部位があり、2ピースを注文した今回はサイとウイングが入っていました。

 サイは商品ページで「脂身が多く食べ応えバッチリ」とあるように、サイズ感もかんだときのジューシーさも抜群です。本来は真ん中の太い骨を抜くと食べやすいのですが、ズボラな筆者は気にせず食べ進めてしまいました。

 ウイングは、肉質がしっかりした部分と柔らかい部分を味わえるので、1ピースでお得な気分に浸れます。こちらも「公式」の食べ方では、手羽中の2本の骨をひねって抜くと、食べやすいそうです。

■「かむ楽しさ」を感じる商品

 さて、いよいよメインのカーネルクリスピーを食べましょう。

 カーネルクリスピーの特徴は、何といっても衣です。そのクリスピー感は見た目だけでも十分伝わりますが、一口食べるとなお一層の驚きを覚えます。軽やかな口当たりですが、かみ応え十分の衣で「かむ楽しさ」を感じる商品といえるでしょう。

 もちろんカーネルクリスピーの特徴は、衣だけではありません。やわらかい鶏むね肉をにんにく・しょうゆベースで整えた味付けで、しっかりとパンチが利いています。

 衣だけでなく、鶏むね肉であることから肉をかむことで口の中に風味が広がり、ハッキリいって1本では物足りなく感じてしまうくらい、ある種の“中毒性”を持っているといえるでしょう。

 にんにくと、かみ応えのある食べ物が好きな筆者にとっては、やはりオリジナルチキンもさることながら、創業者の名を冠したこのカーネルクリスピーこそが代名詞である。あらためてそう感じました。

 ここであらためて、ケンタッキーの紹介です。

 創業者はカーネル・サンダースとして知られていますが、実は本名ではありません。本名は「ハーランド・デーヴィッド・サンダース」で、「カーネル」はのちにアメリカ・ケンタッキー州から与えられた称号です。

 カーネル・サンダースはもともとガソリンスタンドのオーナーを務めており、1930年に倉庫を改造してカフェを開くと、たちまち繁盛してレストランに。日々レシピの研究を続け、試行錯誤を重ね、1940年に現在の調理法を編み出しました。

 日本に初上陸したのは、1970年のこと。大阪万博でテスト出店すると大反響を呼び、同年に1号店をオープンします。2月13日に発表した2024年3月期第3四半期決算短信によれば、現在1229店舗を展開しています。

 「当社は『おいしさ、しあわせ創造』を企業理念に掲げ、安心安全な素材を、手づくり調理にこだわることで、出来たてのおいしさと、最高のホスピタリティを提供し続けてきました。老若男女問わずファンがいるため、商品開発では基本的に誰もがおいしいと思っていただけるような味付けを心掛けています」(関口さん)

■「天ぷら」から着想 専用の調理器具も

 カーネルクリスピーが登場したのは、1998年のことでした。

 もともと、1996年に前身となる“骨あり”の商品「爆〈バオ〉」を期間限定商品として展開していましたが、和風の味付けが好評を呼び、より食べやすい骨のない現在の形へと改良して、発売したそうです。

 現在は夕方やディナータイムの「単品買い」や「ついで買い」が多く、メニュー全体のうち、1割程度のシェアを占めているとのこと。

 「衣が特徴的で、見た目を評価いただくことが多くあります」と関口さん。衣がとがったような独特の見た目は、天ぷらから着想しているそうです。

 店舗では、天ぷらさながらにカーネルクリスピー専用の粉に水を混ぜた「バッター液」を肉に付け、1本ずつフライヤーに入れて調理しています。衣の形は、カーネルクリスピー専用の調理器具を使って揚げることで、成形しているそうです。

 衣には並々ならぬ情熱を注ぎこんでおり、1998年の登場以来7回もの改良を重ねているそう。直近では2022年に、より軽い食感を目指してリニューアルしました。

 「衣をかんだときのザクザクした食感、しっかりとした硬さがありつつも口の中で崩れていくような崩壊感のある軽い食感を追求しました。また、従来以上に見た目のゴツゴツ感を高めたいと思い、原材料の配合は50回以上の試作を行いました」(関口さん)

■海外ケンタには「ストリップ」なる商品が

 実は海外のケンタッキーには、カーネルクリスピーと似た「ストリップ」というメニューがあります。

 海外にも、日本の天ぷらをベースにしたカーネルクリスピーを展開すればヒットするのでは?  と思うところですが、調理方法が独特であることから、なかなか海外では提供が難しく、広がっていないそうです。

 また、意外なところではカーネルクリスピーを使った「天丼」を2011年頃から一部店舗で販売しているそうです。その名も「ケンタ丼」。現在、通常のケンタッキー店舗では販売していませんが、スタジアムなどの特殊な店舗では提供しているところもあるとのこと。

 ケンタッキーでは、昨今「エブリデイブランド」としてさまざまな商品を展開し、顧客接点を増やす取り組みをしています。例えば、バーガー関連商品もその一つです。

 今後、「ケンタ丼」のようなご飯メニューが復活したり、登場したりすれば、もっと生活に根差したブランドへと進化を遂げていくかもしれません。

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最終更新:4/1(月) 11:02

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