白目にシミ?黒目が欠ける?「目の日焼け」の問題点 侮ってはいけない「紫外線のダメージ」を専門家に取材

5/25 9:21 配信

東洋経済オンライン

日に日に日差しが強くなるこの時期。実は紫外線の量は5月ぐらいから増え始め、対策が必要になってくる。
そして、目も紫外線の影響をかなり受けやすいことをご存じだろうか。強い紫外線を浴びることで目も“日焼け”を起こし、繰り返せば、白内障や老眼の発症を早める。ときには視力が低下するおそれもあるという。
金沢医科大学眼科学講座教授で「特定非営利活動法人 紫外線から眼を守るEyes Arc」理事長の佐々木洋さんに、“目の日焼け”で生じる目の病気にはどんなものがあるかを聞いた。

 日焼けをすると皮膚の皮がむけたり、シミやシワができたりするように、目にもさまざまな影響を及ぼす。

■「目の日焼け」の起こり方

 具体的にいうと、まず、目に入った紫外線の多くは目の表面にある角膜(黒目)で吸収される。ところが、一部は目の内側に入り込んで、水晶体や網膜など、目の奥に到達する。紫外線を浴び続けることで、これらの組織が傷つき、病気をもたらす。

 目への紫外線の害には、大きく急性のものと、慢性のものとにわけられる。

 急性のものは短期間で生じる。佐々木さんによると、一時的にでも目に強い紫外線を浴びると、いわゆる“目の日焼け”といわれる急性障害を引き起こすことがあるそうだ。代表的なものとしては、スキーのときの「雪目」がそれにあたる。

 「スキーに限らず、テニスやゴルフなど、天気のよい日に屋外で2~3時間ほどスポーツをしたあと、目が真っ赤になっている人がいますよね。そのほとんどは目の日焼けが原因です」(佐々木さん)

 これは強い紫外線によるダメージで角膜が傷つき、炎症を起こすことで生じるもので、「紫外線角膜炎(雪目はその重症型)」と呼ばれる。炎症がひどい場合は、角膜の表面がはがれ、強い痛みや異物感、充血、涙が出る、まぶしさを感じるといった症状が表れる。一時的な視力低下を引き起こすこともある。

 紫外線を浴びたあと、先に挙げたような症状が表れたら、まずは目を休ませることが大切だ。

 「まばたきをすると傷ついた角膜にまぶたがあたって痛むこともあるので、軽く目を閉じて安静にしていることが大事です。症状が軽ければ、そのままでも1~2日程度で治ることが多いです。痛みが強く、症状に改善が見られないときは、早めに眼科を受診しましょう」(佐々木さん)

 この場合、消炎効果や痛み止め効果のある点眼薬や、抗菌薬入りの点眼薬などで治療をしていくそうだ。

■紫外線で目に「シミ」ができる? 

 紫外線による急性障害を繰り返していると、目へのダメージは徐々に蓄積していく。その結果、慢性的な目の病気を発症しやすくなるという。その代表的な病気が、「瞼裂斑(けんれつはん)」や「翼状片(よくじょうへん)」、「白内障」「老眼」だ。

 最初に表れるのが、瞼裂斑だ。

 紫外線によって目の表面の細胞がダメージを受けることで、黒目のわきの白目の一部がシミのように黄色くにごって盛り上がった状態をいう。鏡を使えば自分でも確認が可能だ。

 病気の一種ではあるものの、目の保護反応ともいえ、一般的には痛みや視力の低下といった症状は伴わない。ただ、まれに充血したり、シミ部分にドライアイのような症状が出たりすることがある。

 「症状こそなく、あるいは軽いものの、この白目のシミは一度できると消えることはありません。見た目にもあまりよくないので、それを気にして治療を受ける人はいます。治療する場合はシミ部分を外科手術で除去します」(佐々木さん)

■黒目に白目が入り込む病「翼状片」

 翼状片は、黒目の部分に増殖した白目が入り込む病気だ。鏡で見てみると、黒目が一部、欠けたような状態になっているのがわかる。

 瞼裂斑から進行した形で発症することが多く、特に黒目の鼻側(内側)に生じやすい。日本(本州)では、50歳以上の約7%に見られる。

 リスクが高いのは、紫外線が強い地域の居住者や、屋外での活動時間が長い男性で、農業や漁業などの屋外労働者や職業ドライバー、野球やサッカーなどの屋外スポーツや登山、釣りなどの屋外レジャーの活動時間が長い人に発症しやすい。

 瞼裂斑と異なり、翼状片になると目の充血や異物感が表れるほか、角膜に白目が侵入することで乱視や視力低下などの症状が伴う。点眼薬などでの治療はできず、黒目への白目の侵入がより進行した場合は、手術で増殖した白目を除去する治療が必要になる。

 「手術といっても設備の整っているクリニックでも対応可能で、最近は日帰りが主流です。ただ、若い人ほど再発しやすいうえ、再手術では難易度が高くなるので、大きな病院での治療が必要になります」(佐々木さん)

 翼状片は予防が大切で、瞼裂斑から進行させないことがカギとなる。

 「瞼裂斑は自覚症状がなく気づきにくいのですが、鏡で定期的に観察して、白目が黄ばんで瞼裂斑がでてきたら、翼状片にならないよう紫外線対策を徹底してほしい」と、佐々木さんはアドバイスする。

 白内障や老眼と、紫外線の関係についても軽く触れておきたい。

 老眼は水晶体の柔軟性の低下によって、近くのものにピントが合いにくくなり、近くが見にくくなる病気。白内障は水晶体のタンパク質が白濁し、目がかすんで見えにくくなる病気だ。

 通常、老眼は40歳以上、白内障は50歳以上で発症率が高まるが、紫外線によって水晶体がダメージを受け続けると、その発症年齢が早まるという。

■紫外線の強い地域は子どもも要注意

 季節だけでなく、地理的な位置によって紫外線の強さは異なる。そのため、地域(緯度)と、目の病気の発症には明確な相関関係が見られる。

 特に紫外線の強い赤道に近い地域や高地では、目の病気の発症率も高い傾向にある。

 日本では、沖縄、とくに西表島、石垣島などの離島で、瞼裂斑や翼状片、白内障の発症率が高いことが報告されている。本州、四国、九州地方は沖縄に比べると紫外線の量は低いが、まったく問題がない、というわけではない。やはり夏には十分な予防策が必要だ。とくに職業や趣味などで屋外の活動時間が長い人は気をつけたい。

 瞼裂斑は紫外線の強い地域では10歳未満の子どもでも生じる。

 金沢医科大学が内灘(石川県)、西表島、タンザニア在住の小学生を対象に行った眼疫学調査によれば、西表島や石垣島に住む小学生の瞼裂斑の有病率は高く、学年が上がるにつれその割合は高くなっている。西表島では小学6年生の約70%に初期の瞼裂斑が見られ、赤道に近いタンザニアに近いレベルだ。

 ちなみに、本州の内灘(石川県)の小学生は高学年でも3.4%で、佐々木さんによると、東京の小学生もこれと同程度の発症率と予想されるそうだ。

■子どもにも紫外線対策をしっかり

 子どもと大人で目が浴びる紫外線量には差はないのか。

 大人に比べて身長が低いため地表からの紫外線の反射光を浴びやすいこと、子どもは大人よりも瞳が大きいため、水晶体が紫外線を透過しやすいことなどの特徴が挙げられる。

 子どもによっては、18歳になるまでに一生分の50%を浴びているそうだ。

 そうした状況にもかかわらず、紫外線から目を守るサングラスを使っている子どもや若者が少ない現状を、佐々木さんは危惧する。

 「特に、野球やサッカーなど屋外の部活に参加している子どもは、最長で大人の3倍の時間を外で過ごしています。子どものうちに紫外線を大量に浴びてしまうと、成人後に翼状片や老眼、白内障などの目の病気の早期発症リスクが高まります。子どもの紫外線対策こそ重要です」(佐々木さん)

 外出するときは、子どものうちから、できるだけUVカット機能付きの眼鏡や帽子などで紫外線対策をしておいたほうがいいそうだ。

 (取材・文/石川美香子)

金沢医科大学眼科学講座主任教授
佐々木 洋医師

1987年金沢大学医学部卒業後、自治医科大学眼科入局。アメリカ・オークランド大学眼研究所研究員等を経て、2005年より金沢医科大学眼科学講座主任教授。「特定非営利活動法人 紫外線から眼を守るEyes Arc」理事長も務める。国内外で紫外線関連眼疾患の疫学調査を実施している。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:5/25(土) 9:21

東洋経済オンライン

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング