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34歳の女性「10年間の恋」を叩き落とした、既婚上司の思いがけない「飴とムチ」…上司は起業して会社を去り、ひとり取り残された

5/15 12:02 配信

マネー現代

既婚上司に片思いしていた女性

(文 高須 美谷子) 言うまでもないが、理想の結婚生活、理想のお相手というのは人によって違う。

 しかし結婚相談所でのお相手探しとなると、女性は高学歴、高身長、高収入を求め、男性は見た目と若さを求める。そのほかにも人気の職業、気遣いなど、優しい笑顔など、いわば“条件面”で秀でている人が人気の婚活者という画一的なものが多い。

 日常生活での出会いならば、まずはフィーリングが合うかどうかが、第一条件となりやすいのだが、ここが時間の限られた条件婚活の不条理なところである。今回は、その画一的な条件から外れた婚活を自ら望んできた奈津美さん(34歳、仮名)の話をしたい。

 奈津美さんは初対面の時から礼儀正しく、落ち着いた話し方をする人だった。結婚相談所の入会に至る経緯はこうだ。

 「職場にずっとずっと好きな人がいたんです。でもその人が会社を辞めることになって。すっぱりと諦めるためにも結婚しようと思ったんです」

 新卒で入社した時からずっと一緒に仕事をしてきたという一回り年上の上司で既婚者だという。

 20代の頃に社内不倫をし、30代になって焦って関係を解消して結婚相手を探し始めるという例をよく聞く。

 ある調査によると、社内不倫を経験した割合は3割にも達するという。家族よりも長い時間を過ごす職場で、目的を共有する関係として、職場内で恋愛感情が芽生えやすいというのは理解できる。事実、近年は減りつつあるものの、結婚相手と出会った場所の第1位は「職場・取引先」となっている。

 しかし、よくよく聞き進めてみると、奈津美さんはその既婚上司が好きな人というだけで、社内不倫をしていたわけではなさそうだ。

 それどころか、奈津美さんから告白をしたり、相手から関係を持ちかけられたり、あるいは一緒に食事や飲みにいったりしたことも一切なく、完全なる奈津美さんの片思いだった。

 奈津美さんの心に秘められた「好き」は誰にも知られることなく、その純粋に貫かれた想いは尊いとも言えよう。しかしそれによって、婚活にもストッパーがかかってしまって、愛するパートナーと出会い、家庭を築き上げる幸せに辿り着けないといった問題を抱えていたのだ。

 奈津美さんのこれまでの恋愛経験を尋ねてみると、大学時代に同じ学校の一つ年上の男性と3年間交際していたそうだ。先に社会人になった彼から何度か結婚をほのめかされたものの、当時まだ学生だった奈津美さんには、結婚そのものが遠い遠い未来の話でピンとこなかったという。

 その後、彼から社内で出会った年上の女性と結婚することになったと告げられ、あっさりと振られてしまったそうだ。結婚願望の強かった彼の気持ちにすぐには応えられなかったという奈津美さんなりの負い目があり、彼だけを責める気持ちにはなれなかった。

「彼も同じ気持ちだったと思うんです」

 それから社会に出て10年の間。誰とも交際することなく、純粋を貫いていた。周りの友人が取っ替え引っ替え彼氏を乗り換えていても、イケメンの集まる合コンに誘われても頑なに守り続けていたのには本人なりの理由があった。

 「自分の気持ちに誠実にいたい」

 恋愛の形は人それぞれだが、その恋愛観が親からの影響の場合もある。尋ねてみると、やはりドンピシャの純愛サラブレッドだった。奈津美さんの母親の初恋は社内で出会った父親で、その志向が受け継がれており、これには、なるほどと仲人的観点から納得がいく。

 改めて奈津美さんに、どんなお相手を希望しているのか聞くと、「ちやほやしてくる人が苦手なんです」と言う。お世辞を「優しい人」と捉える女性が多い中でも珍しい、意外な答えだった。

 奈津美さんは両親からとても厳しく育てられたという。テストで良い点を取っても、徒競走で1位になっても、学級委員に選ばれても、一度も褒められたことはなかったそうだ。褒めることで、褒められることが目的になってしまう、褒められなければやらない子になってしまう、だから褒めないというのが両親の持論だった。

 奈津美さん自身は、そうした教育の中で、自分の勉強、やりたいことを淡々と進めていったそうだ。些細なことでも大げさに褒めてもらえる友達の家庭環境をうらやましいと思うことはあるが、嘘やお世辞でコントロールされるのはもっと嫌だという気持ちから褒められなくても強く生きるメンタルが鍛えられていったという。

 それゆえに「褒める人」には拒絶反応を示すようになっていったという。「褒めることで私に取り入っている」「大げさに褒めて何かを得ようとしている」「下心が明け透けだ」とマイナスイメージで捉えるようになったのだ。

 大概の人は、初対面や付き合いが浅い人に厳しい意見を言ったりはしないものだ。特に恋愛関係を求める場合には「褒める」のが普通であろう。上司に心を奪われている10年もの間に、奈津美さんに好意を持って接してきた人もいただろうが、奈津美さんの心には全く届いていないだろうと想像できた。

 奈津美さんが心を奪われていた上司は、人を無駄に褒めなかったという。仕事に対して高い要求を求める上司に対し、奈津美さんは誠実に、そして課内の誰よりも成果を出してきたという自負があった。

 しかしその上司は奈津美さんを一度も褒めることなく、ただ「助かったよ」という言葉だけを投げかけた。奈津美さんは上司からその言葉を聞くたびに、二人の心が通じ合っているように感じ、胸をときめかせていたという。

 「彼も同じ気持ちだったと思うんです」という奈津美さんの言葉を真に受けて良いのか、彼女の妄想と考えるのか、難しいところではあった。

 そんな上司がある日突然、会社を辞めると言い出した。独立して起業するというのだ。奈津美さんは最初、自分も起業先に連れて行ってくれるのでは、と期待を抱いたが、それは一瞬で打ち砕かれた。

 挨拶もそこそこに職場を去っていく上司に奈津美さんは大いに失望したという。上司が独身であれば母親と同じ道を歩んでハッピーエンドに進む可能性もあったかもしれないが、このままでは報われない。それを奈津美さん自身も分かっていた。

 それでも彼の顔が見えているうちは、気持ちのなすがままに流されていたかったのだ。そして、悲しみを消化するためにも、婚活を始める決意をしたのだ。

 *

 手始めにリアル婚活パーティーに参加したが、「褒められたくない性格」が災いし、モテるのに全くマッチングできなかった奈津美さん。しかし、ある方法で結婚への兆しが見える。

 その詳細は<後編10年間、既婚上司に片思いし続けた、34歳「純情な美人」を虜にした「ムダに褒めない男」の意外な魅力>でお伝えする。

マネー現代

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最終更新:5/15(水) 12:02

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